今年の8月、ヘルシンキで訪れた建築を紹介していきます。
まず、ユハ・レイヴィスカのミュール・マキ教会。ヘルシンキの中央駅から電車で数十分の郊外住宅地の駅前にあります。
上の写真に見られるように光に満ち溢れた清澄な雰囲気(essence of clarity)がこの建築家の作品に共通する特徴です。
ユハ・レイヴィスカは普遍主義に則るモダニズムと風土性を重視する地域主義-その背後には北欧独特のナショナルロマンティシズムがある-をつないでいるという点で、アールトの確立したフィンランドモダニズムの正当な後継者として位置づけられるようです。
人のスケールを超越した大空間であり、神を象徴する荘厳さを持ちながらも一方では、木の質感が感じられること、小さな部分(これも木ですが)のリズミカルな繰り返しによる、ヒューマンタッチの存在などによる親しみやすい人間くささが感じられる空間です。
上の左写真のような天井の扱い、また開口部周りの処理(上右写真)など建築家の癖の現れるディテールにおいてもアールトを髣髴させます。
内装の木は乾燥のためクラックが入っています(上の写真)がそれほど気になるものではありません。
内部空間の豊かさに比べると外観はシンプルです。高架鉄道の騒音をよけるように、壁でブロックしているようです(上の写真)。反対側(下の写真)は細かく分節され、雁行する壁で構成されています。
ちなみに私が訪れたのは8月末の夏休みでしたが、毎日日本人が来ると教会の方が言っていました。
高谷時彦記 Tokihiko Takatani