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点滴しても、なかなか一般状態が収まらない。髄膜刺激症状(頭を前に曲げると痛がる)も、疑わしい(ウイルス性髄膜炎の場合は、細菌性髄膜炎ほど、典型的に髄膜刺激症状が出にくい)。しかし、(髄膜炎の時によく経験するが)点滴して頭痛が強くなった感じだ。今までにアセトン血症嘔吐症の既往はない。
で、一応、外来と入院で、それぞれ1回、漢方薬(葛根湯+五苓散)の注腸をする。少し改善するも、きつそうにしているし、熱も下がらない。明日、状況が改善していなければ、CT検査して髄液検査もしますと説明する。
21:00に、様子を見に行き、髄膜炎の可能性大だと説明した。手足の先が熱く、眼球充血して顔面紅潮し、脈は洪脈で、熱証の典型的な状態。で、21:15に、葛根湯+黄連解毒湯を注腸する。
翌日の3:00にも、同じ注腸予定が、37度以下になった為に、注腸中止とし、朝から内服の錠剤に変更する。昼食もよく摂り、嘘の様に軽快している。で、めでたく、全く頭痛なく食事も摂れるので、2泊3日で退院となった。
兄(当時7歳)が同じ様に、昨年の9月に、高熱と嘔吐と頭痛があり、髄膜刺激症状がある為に、(ウイルス性)髄膜炎を疑われ(この時にも、下痢と腹痛なし)、髄膜炎で入院して、私は同じ様に漢方薬で注腸して、2泊3日で退院させている。
どうしてこんなに漢方薬が効くのだろうか。
黄連解毒湯の注腸を、アデノウイルス感染症や熱が高くて興奮気味な子どもによく使用して、多くの例で著効している(2年前に、川崎病にも、使用して著効した)が、インフルエンザ脳症にも、恐らく効果があると私自身は、思っている。
西洋医学では、熱冷ましの薬として、アセトアミノフェンしか日本では使われていない。理論的には、38.5度以上なると、ウイルスも次第に増殖が抑えられてくるのだが。又、アセトアミノフェンは、痛み止めとしても小児では頻用されている。原則5日間、座薬は1日1回、内服は1日2回と書かれている。小児に対する安全性は確立していないとまで添付文書に書かれている。
漢方薬には、熱冷ましとして10種類以上もある。熱冷ましとして保険が効くエキス剤以外にも、ギンキョウサンやソウギクインや安宮牛黄丸など、保険が効かないが、中国では頻用されているものもある(中医学では、清熱剤の代表的なものに、白虎湯や黄連解毒湯があり、突発性発疹症では、しばしば白虎加人参湯を与えて、3日間の熱の期間が短縮できているが)。 実の証の人の熱には、強い熱冷ましでも対照療法的に対処できるが、虚の証の人が微熱でも熱く感じる場合には、西洋医学では、適切な薬はないと思われる。
トリインフルエンザでは、ウイルスによる出血傾向があり、ウイルス性肺炎で小児が早期に死亡する例が多いと思われる。又、多量のサイトカインにより、インフルエンザ脳症も早期に起きると思われる(その多くは、発症して72時間以内に)。
黄連解毒湯は、高熱だけでなく、興奮性も取り、出血傾向も抑えるし、葛根湯+黄連解毒湯で、かなりの効果が上げられるのではないかと思っている。(黄連解毒湯は、虚証では、原則使えない。高熱で興奮していても、手足が冷たい初期の時には、黄連解毒湯のみで使うことはしていない。初期にどうしても使用したい場合は、葛根湯と一緒に使用している。)