前回の記事からの続きです。
初日
受け持つ5年生の子たち約30人に漢字を教えました。
漢字は,6年生の漢字を合計12個教えました。
そのとき選んだ漢字は,私がこれまでに6年生を担任してきた経験から,子どもたちが間違えやすい漢字を選んでみました。
そして,12個の漢字を4個ずつの3グループに分けて,教え方を変えてみました。
ここが今回の研究のポイントです。
教え方の違いによって,脳の学習に違いが生じ,定着率にも違いが本当に出てくるのでしょうか。
~指導1~
その漢字の読み方と書き方を示したのち,子どもたちにはその字を2回書かせるのみの単純な指導
~指導2~
指導1に加えて,その字の由来や形,工夫した覚え方などを示し,できるだけ子どもの感情面にはたらきかける指導
~指導3~
指導1に加えて,その漢字を使った短文を3種類書かせ,子どもの左脳にはたらきかけ論理的な思考を生じさせる指導
12個の漢字を教える間,子どもたちは最後まで集中力を切らさずについてきてくれました。
「6年生でも間違えやすい漢字なんだよ」
ということで,やる気になっている子たちも多く見られました。
2日目
さっそく,定着率を見る1回目のテストをしました。
ぬきうちだったので「テストします」の声に
「え~!」「覚えてないよ~!」
子どもたちのリアクションは大きかったですね。
「昨日習ったばかりの漢字,しかも間違えやすい複雑な形をした漢字ばかりなので,今日書けなくても不思議ではありません。気軽にやってみましょう。」
そんな中,結果がでました。
定着率をパーセントで表します。
◆指導1(2回書かせるのみの単純な指導)・・・・・13.97%
◆指導2(感情面にはたらきかける指導)・・・・・・・61.035%
◆指導3(左脳にはたらきかける指導)・・・・・・・・・19.705%
はっきりと結果に違いが出ました。
感情面にはたらきかける指導は確かに記憶を強くする!
これが言えます。
指導2では,できるだけその字が子どもの印象に残るように面白いエピソードを考えました。
例えば「操」という字を教えるときは
→「手 + 品 + 木」 だから,「手品を木の上で操る」
「善」という字は
→なんとなく,ひげを生やしたおじさんが笑顔でいる字に見えます。善人です。
などと,勝手なこじつけですが,考えて指導しました。
教えているとき,他の2つの指導に比べて確かに子どもたちの反応がよかったです。
目の輝きが違うというか。
「へぇ~」「なんだよそれ~」
なんて反応も多々あり,クラス全体が盛り上がっていました。
理論のとおり,感情は記憶に影響し,さらに翌日までもそれは継続していることが分かります。
このことは,もちろん漢字指導のみならず,すべての学習に言えることでしょう。
「子どもの感情」改めて大事にしたいです。
さて,
ちなみに残り2つの指導を見てみると,やはり文章で書かせる指導3の方が若干定着がよかったです。
が,期待したほどの結果は得られませんでした。
でもすぐにこのやり方をあきらめるわけではなく,どうにか定着率を上げられないかさらに工夫を考えてみたいところです。
今回のテストで分かったこともう一つ。
一回の指導だけでは,翌日の記憶というのは恐ろしく薄れてしまっているんだということです。
指導1での定着率がわずか13%。
これでは教えたうちに入りません。
こちらも改めて身にしみて勉強になります。
この研究はさらに続けてみようと思います。
今度は,12個の漢字をさらに「復習する」「復習しない」の2グループにわけて,記憶を見ていきたいと思います。
もちろん「復習する」方が記憶がよくなるという結果はある程度見えてみますが,それが具体的にどれくらい率が違うのか。
また,3つの指導によってもさらに違いが出てくるのか。
一か月ほどのスパンをとって見ていきたいと思います。
そのとき,また結果をお示ししたいと思います。