小学生攻略法

このブログも10年目。久しぶりに担任復帰です。

教育相談の場に,なぜか関係ないものを持ち込んで

2014-02-19 07:04:41 | 「教師-子ども」関係の攻略法

クラスのはなこさんが相談に来ました。

「先生,さちこさんとのことで悩んでいるんですけど…」

仲良しだったはずの二人が,最近はちょっと距離を置いていることは,私の目にも明らかでした。

何かあるのだろうと,様子を見守ってはいましたが,ついに耐えきれずにはなこさんが訴えに来たというところです。

二人を別室に呼び出して,話をすることにしました。

さちこさんに声をかけたとき,さちこさんもすぐに事情は分かったはずです。

さちこさんと,はなこさんと,先生の三人で今話すること。

辛く,重々しい話になることは,三人ともが予想していました。

そして別室へ。

「えーっと,ここに座ろうか」

そう言う私の手には,なぜか一冊の本が。

それに気付いたはなこさんが,すぐに

「先生,なんで本なんか持ってるんですか」

私は,はっとした感じで

「あっ 本当だ。持ってくるつもりじゃなかったのに。さっきまで手にしてたもんだから,そのまま持ってきちゃったよ」

「何の本ですか?」

と,聞いてきたのはさちこさん。

「これはね,『街のいのち』だよ。」

「あ~」

と声をそろえた二人。

「『海のいのち』の別のやつ!」

と,二人して興味がある様子。

「そうそう。先生が前話したでしょ。よく覚えてたね。」

「はい。『山のいのち』とか,なんたらのいのちとか,すごいいっぱいあるんですよね。へ~ これなんだ。」

「どんな話なんですか?」

共通の話題で,すっかり目線はそちらのほうに。

私は,にこにこしながらサラッとページをめくりながら二人に教えてあげました。

「これはね,女の子のお母さんが病気で亡くなってしまう話なんだけどね,すごく…」

この本の話が終わると,二人は

「なんか『海のいのち』と違いますね」

「ちょっと絵が強烈」

「ははは,だよね~」

なんて。

(・・・・よかった)

と思ったのは私です。

そう,こんな関係のない本を持ち込んだのは,もちろん偶然ではなく,意図的でした。

凍りついた二人の関係のまま,本題に入る自信がなかったのです。

そんな暗く重たい話を,明るいものに変えていく話術を私はもっていません。

だから,ちょっと別の物の力を借りたくなりました。

この本じゃないといけないわけではなかったのですが,なぜか思いついたのがこの本でした。

二人の共通の興味を引くものだったし,とりあえず,効果があったようです。

本題に入る前に,打ち解けた雰囲気ができて,しばらく見られていなかった二人の笑顔が見ることができました。

「あぁ,この本の話をしにきたんじゃなかったよ。・・・最近,どうかな。」

と,本題に入るときには,二人の心もほぐれていました。

そこから,しばらく話し合いを続けた結果,どうやらまた仲を取り戻すことができたようです。

年頃の女の子たちのことだから,そう簡単にはいかないのかもしれませんが,明るい兆しは見えましたので,とりあえず今回のところはOKでしょう。

立松和平さんの『街のいのち』に感謝です。