小学生攻略法

このブログも10年目。久しぶりに担任復帰です。

「嫌いなもの1位」だけど,それを継続してさせたいなら,それなりの工夫を

2011-12-06 06:28:00 | 学級生活の攻略法

学校のどこかの委員会が新聞を作成して廊下に掲示していました。

アンケートで「先生にのぞむこと」を調査していて,その結果がランキングになっていました。

1位「宿題をなくしてほしい」

でした。(笑)

どの学年も,どのクラスも,共通してそうなんですね。

気持ち分かります。

宿題って,もうすでにその言葉の響きからして,子どもにつきまとう悪役のような印象になっていますよね。

でも,それでこそ宿題なのかもしれません。

宿題を課す先生,学校側としてはもちろん目的があるわけです。

・自学の力がつくように

・家でも学習する習慣をつけるために

・今日の授業の復習のために

・明日の授業の予習のために

・学習していることを家庭に示すために    などなど。

それで,子どもたちが宿題にうんざりしてきた頃に,担任の先生は必死にこれらの話をします。

「いいかい,宿題っていうのはね…」

感心な子は,ここでの先生の話で「よし,がんばろう」と思って,今日も帰ってから机に向かえるのでしょうが,実際,そうはできない子も少なくないでしょう。

大人側の理想論では動けない子もいるものです。

自分なりの「宿題の必要感」が感じられず,さぼってしまったり雑にしてしまったり。

こんな子たちのためにも,一工夫してあげたいですね。

やはり,何かをさせるからには,それに向かわせる十分な目的をもたせることが第一だと思います。

そして,子どもに示すこの目的は上の「自学の力がつくように」ということではなく,(もちろんそれが本来の目的なのですが)もっと子どもの側に立って,本当に子どもが「宿題はしなきゃ!」って感じられるような目的です。

宿題をしなきゃいけなくなる目的を与える!

例えば

・毎週金曜日に漢字テストがあるから,テスト範囲の漢字を宿題で練習しましょう

・宿題で書く漢字の丁寧さで,通知表の「文字の~」の欄の成績をつけます

・心に響くすてきな日記はコピーして「4年2組日記アルバム」に入れていきます

・続けることは大事です。○日宿題を続けられたら,お休み券を一枚あげます。

といった目的です。

目に見えて表れる目的です。

子どもが「嫌いなもの一位」としている宿題にだって,自分から向かって,しかも形だけでなく気持ちを入れてしっかりとできるようにするためには,それなりのエネルギーが必要です。

そのエネルギーは,先生が与える目的から生まれてきます。

そして,子どもからすればそういった目的で宿題を続けていくことになり,それが前に挙げた本来の目的にも自然とつながっていくはずです。


脳科学に基づいて漢字指導のやり方を変えた結果~その1~

2011-12-04 06:21:50 | 授業中の攻略法

前回の記事からの続きです。

初日

受け持つ5年生の子たち約30人に漢字を教えました。

漢字は,6年生の漢字を合計12個教えました。

そのとき選んだ漢字は,私がこれまでに6年生を担任してきた経験から,子どもたちが間違えやすい漢字を選んでみました。

そして,12個の漢字を4個ずつの3グループに分けて,教え方を変えてみました。

ここが今回の研究のポイントです。

教え方の違いによって,脳の学習に違いが生じ,定着率にも違いが本当に出てくるのでしょうか。

~指導1~

その漢字の読み方と書き方を示したのち,子どもたちにはその字を2回書かせるのみの単純な指導

~指導2~

指導1に加えて,その字の由来や形,工夫した覚え方などを示し,できるだけ子どもの感情面にはたらきかける指導

~指導3~

指導1に加えて,その漢字を使った短文を3種類書かせ,子どもの左脳にはたらきかけ論理的な思考を生じさせる指導

12個の漢字を教える間,子どもたちは最後まで集中力を切らさずについてきてくれました。

「6年生でも間違えやすい漢字なんだよ」

ということで,やる気になっている子たちも多く見られました。

2日目

さっそく,定着率を見る1回目のテストをしました。

ぬきうちだったので「テストします」の声に

「え~!」「覚えてないよ~!」

子どもたちのリアクションは大きかったですね。

「昨日習ったばかりの漢字,しかも間違えやすい複雑な形をした漢字ばかりなので,今日書けなくても不思議ではありません。気軽にやってみましょう。」

そんな中,結果がでました。

定着率をパーセントで表します。

◆指導1(2回書かせるのみの単純な指導)・・・・・13.97%

◆指導2(感情面にはたらきかける指導)・・・・・・・61.035%

◆指導3(左脳にはたらきかける指導)・・・・・・・・・19.705%

はっきりと結果に違いが出ました。

感情面にはたらきかける指導は確かに記憶を強くする!

これが言えます。

指導2では,できるだけその字が子どもの印象に残るように面白いエピソードを考えました。

例えば「操」という字を教えるときは

→「手 + 品 + 木」 だから,「手品を木の上で操る」

「善」という字は

→なんとなく,ひげを生やしたおじさんが笑顔でいる字に見えます。善人です。

などと,勝手なこじつけですが,考えて指導しました。

教えているとき,他の2つの指導に比べて確かに子どもたちの反応がよかったです。

目の輝きが違うというか。

「へぇ~」「なんだよそれ~」

なんて反応も多々あり,クラス全体が盛り上がっていました。

理論のとおり,感情は記憶に影響し,さらに翌日までもそれは継続していることが分かります。

このことは,もちろん漢字指導のみならず,すべての学習に言えることでしょう。

「子どもの感情」改めて大事にしたいです。

さて,

ちなみに残り2つの指導を見てみると,やはり文章で書かせる指導3の方が若干定着がよかったです。

が,期待したほどの結果は得られませんでした。

でもすぐにこのやり方をあきらめるわけではなく,どうにか定着率を上げられないかさらに工夫を考えてみたいところです。

今回のテストで分かったこともう一つ。

一回の指導だけでは,翌日の記憶というのは恐ろしく薄れてしまっているんだということです。

指導1での定着率がわずか13%。

これでは教えたうちに入りません。

こちらも改めて身にしみて勉強になります。

この研究はさらに続けてみようと思います。

今度は,12個の漢字をさらに「復習する」「復習しない」の2グループにわけて,記憶を見ていきたいと思います。

もちろん「復習する」方が記憶がよくなるという結果はある程度見えてみますが,それが具体的にどれくらい率が違うのか。

また,3つの指導によってもさらに違いが出てくるのか。

一か月ほどのスパンをとって見ていきたいと思います。

そのとき,また結果をお示ししたいと思います。


脳科学に基づいて,漢字の教え方を変えてみたところ…

2011-12-01 06:36:35 | 授業中の攻略法

個人的に小さな研究を一つ進めています。

「脳科学」に関する学習指導です。

言うまでもなく,人間の命の営みは脳のはたらきに大きく左右されており,学習に関してもその通りです。

子どもが学ぶとき,子どもの脳が学んでいるわけです。

この脳はとても高度な能力をもちながら,複雑にはたらいていて,それ次第で学習はうまく進んだり,進まなかったりします。

誰しも経験があることですが,例えば試験勉強で必死に勉強したのち…

→「よっしゃ!勉強したところバッチリできた!」

→「あれ?あんなにやったはずなのにできない…」

と結果が分かれることがあります。

あれは偶然ではなく,「脳の学習の仕方に違いがあった」という言い方をすることができるでしょう。

これって重要ですね。

しかし,一般の教員で,子どもの脳のはたらきを理解し,それをイメージしながら学習指導を進めているという人は,きっと少ないでしょう。

教員になるまでの過程,もしくはなったあとの研修等で,脳のことを学ぶ機会はほとんどないはずです。

この脳科学に関して,医学や生理学の面では研究が進んでおり,今までは不明であったことが明らかになってきたりもしています。

また,こういった研究を教育に生かそうとする動きも進んでいます。

私は今回,ある本を参考に研究を進めています。

「子どもの脳を育てる教育~家庭と学校の脳科学~」(永江誠司著,河出書房新社)

という本です。

名著です。

全部読んでみて,教育における脳科学の大切さが分かりました。

分かっただけでは物足りず,今回クラスの子たちを使って(というと言い方が悪いですが)実際に脳のはたらきを捉えてみようと思った次第です。

この本では多くの理論が述べられていますが,注目した三つの理論があります。

【理論1】

どのようにしたら,これは重要な情報だと海馬に思わせることができるでしょう。一番よいのは,同じ情報を何度も繰り返し海馬に送る方法です。そうして,これは重要な情報なのだと海馬に思わせるのです。そのために,学習した翌日に1回目,その一週間とに2回目,二週間後に3回目,一ヶ月後に4回目の復習をするのがのぞましいと思われます。

【理論2】

記憶と感情は相互に影響し合う形で働いていると考えられます。感情の働きに関係している組織である扁桃体が刺激されると,記憶に関わる海馬の神経細胞に働き始めるのです。

【理論3】

言語と論理的思考を司る左脳の使用には,本来的に時間をかけることが必要です。紙に文字を手書きする作業では,明らかに左脳が刺激されるのです。文章を考え,それを書くことで,左脳が刺激され,注意力と集中力を強めることができるのです,結果として,記憶をより確かなものにしています。

という3つの理論です。(番号は任意につけさせてもらいました)

これらに基づいて,漢字の指導の仕方を変えてみて,子どもたちが漢字を身につけていくのにどれくらい違いがあるのかを,検証してみることにしました。

具体的には

理論1から,復習するとしないとでは具体的にどれくらい定着に差が出るのか

理論2から,感情にはたらきかける指導でどれくらい定着がよくなるのか

理論3から,漢字を文章で書かせることでどれくらい定着がよくなるのか

これらを具体的なデータで示してみたいと思いました。

受け持つクラスは5年生です。

この子たちに6年生の漢字のいくつかを覚えさせてみます。

そのときの指導の仕方に3通りの違いをつけました。

漢字の勉強,しかも6年生の漢字ということで,子どもたちは少し大変そうにしていましたが,指導の仕方に違いをつけるので,それが興味を引いているようでもありました。

記憶の違いや時間による変容を見ていく検証活動なので,一か月ほどのスパンが必要になります。

そのうち,「指導の翌日」ということで,昨日教えた漢字を,さっそく次の日にテストしてみました。

すると,結果に早くも大きな違いが見られました。

どんな結果だったかというと… それは次回に示すとして,とりあえず

脳科学って,本当に学習では重要!

ということだけうたっておきたいと思います。

リアルに実感できました。