何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

夢のまた夢、で良いのか

2015-05-18 19:00:30 | ひとりごと
大阪都構想が17日の住民投票により否決された。

大阪という地の息遣いが感じられる小説で印象に残るのは、「細雪」(谷崎潤一郎)「泥の河」「道頓堀川」(宮本輝)という、余りといえばあんまりな両極端さ。
大阪人といって真っ先に浮かぶのが「白い巨塔」(山崎豊子)の財前五郎、いやその舅の又一か。こう書くと
大阪人は嫌な顔をするかもしれない。

生身の関係性はともかく、あくまで小説の世界でいうと大阪には馴染みが薄いし、大阪都構想の政策への理解も薄いので、住民投票の賛否の結果については意見はないが、投票行動からみる世代間の問題には、大きな危機感を感じた。

<20・30代は6割賛成 都構想 朝日・ABC出口調査>2015年5月17日22時59分朝日デジタルより一部引用

今回の住民投票で、朝日新聞社と朝日放送(ABC)は17日、投票を済ませた有権者を対象に出口調査を実施した。賛成は20~30代にとりわけ多く、反対は70歳以上に多かった。全体では男性の59%が賛成だった。賛否の理由として最も多かったのは、賛成が「行政の無駄減らし」、反対が「住民サービス」だった。
年代別にみると、とくに賛成した人が多かったのは20代(61%)と30代(65%)。40代(59%)、50代(54%)、60代(52%)も賛成が過半数を占めた。一方、70歳以上は反対が61%で賛成を上回った。
賛成に投票した人が挙げた理由で最も多かったのは「行政の無駄減らしの面」で41%を占めた。次に多かったのが「大阪の経済成長の面」で31%だった。
一方、反対に投票した人が挙げた理由で最多は「住民サービスの面」で36%。次に「橋下市長の政策だから」が26%と続いた。


賛成の人が理由とする「行政の無駄減らし」がまさに、反対の人が重視する「住民サービス」とリンクするので双方心情的に反発が生じるのかもしれないが、これでは一票の格差ならぬ、世代間の格差であり、世代別でみれば(まだ)若い部類に所属する自分としては、笑いごと他人事ではない衝撃の結果だ。
人口体系が極端に歪になっていく我が国では、この問題は、これ以後あらゆる方面で生じてきて、新たな社会不安と社会不満の最大因子となってくるかもしれない。

この問題の萌芽が最初に顕在化したのは、皇太子様の「時代に即した公務」(平成16年ご会見)というお言葉かもしれない。

若い世代からすれば当然の皇太子様の「時代に即した公務」のお言葉は、「それまでの為さり方を否定するのか」という怒りと不満とともに批判され、以後、このお言葉のご説明に皇太子様は苦慮され具体案を明示されないままでおられるが、お言葉のあった当時、若い世代の起業が増える一方で、それが旧来のシステムに受け入れられずに右往左往としていた世相と相俟って、「世代間の抗争」と解釈する評論家がいた記憶がある。
旧来のシステムを構築した人や維持してきた人には譲ることの出来ない「守るべきもの」であっても、時代が変われば、それに応じて変化し役割を終えなければ、新しい時代はいつになっても始まらない。

旧来のシステムは「当時のその時代に」即したからこそ機能したのだろうから、それをそのまま未曾有の超高齢化人口減少時代にあてはめ続けるのを望むのは土台無理な話で、これからは「皇族方の公務」も「住民サービス」も、これまで通りとはいくはずがない。
「かぐや姫の大義」で紹介した経営者の言葉に、
「時代に即した正しい判断を下せる資質を持たない経営者が君臨する企業は必ずや滅びる。」がある。
時代に即した正しい判断を下せる資質を持たない人間で構成される組織も国家も必ずや滅びる、となる前に、
何か早急に手を打たなければならない。


ところで、浪速の風雲児は引退するらしい。
「細雪」から「泥の河」、財前又一から千利休まで、何が誰がとは言わないが、清濁あわせもちパワーに溢れているのがナニワの良いところであり、あの秀吉ですら浪速を掌握しきれなかった。

露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速のことは 夢のまた夢

むしろ何者にも掌握されないことを望む浪速の気風はともかくも、このままでは露と落ち儚く消えかねない諸々を思い知らされた17日住民投票の巻であった。

神の教えを継ぐ皇太子様

2015-05-18 00:47:32 | ひとりごと
このところのつづき、最終稿

『古事記に記される事象を火山活動によるものだと解釈すれば、古事記の表現は科学的に的確であり、その確かさから考えれば、「古事記」は天孫族の先祖が子孫に当てた噴火災害警告の書だ』という説を、「死都日本」で著者石黒氏は述べている。

「破局に終わらせない知恵を」で紹介したが、破局噴火がもたらす暗黒化現象と小氷河期現象の凄まじさを改めて記しておく。

1815年4月11日インドネシアのタンボラ火山の破局噴火
『噴火のためにジャワ一帯は3日間闇に包まれ、更に拡散した浮遊火山灰が地球規模で太陽光を遮り、世界を小氷河期に陥れてしまった。夏になっても気温は上がらず、アメリカのコネチィカット州では7月5日から連日雪が降り、外に干していた洗濯物が凍ってしまったそうである。ヨーロッパも同様で、夏にパリ市内に積もった雪が翌年まで溶けなかったと記録されている』

この暗黒現象こそが古事記でいう「常夜往さき」だと認定すると、アマテラスが「常夜往さき」状態を「万の妖悉に発りき(万の災いが世に満ちた)」と如何に恐れたかは、天皇家の三種の神器のうち二つ(勾玉と鏡)が暗闇から太陽神アマテラスを誘い出すために使用されたものであり、残る神器も出雲から送られた火伏せの宝剣・草薙であることからも分かる、と「死都日本」では書いている。


「死都日本」は、「古事記」は神話と言うよりは祖先が子孫に贈る日本最初の噴火災害心得だったのではないかと語りかけ、祖先の知恵を活かすべく希望を示している。

少し長くなるが引用する。

『国民が災害の悲しみに沈んでいては明日への希望が見えてこない。災難を豊かな新生の祭りに変えてこそ視野も浮かばれるし、出雲をはじめとする諸外国も信頼してつきあってくれる、という社会危機対応マニュアルだったのではないでしょうか?
私達の祖先は何千年も前から幾度も火山災害に遭い、何度もやり直してきました。この火山国の住民である限り、火山との付き合いが終わることはありません。これから来る災害は確かに恐ろしいものです。何百万人の国民が死ぬか、それさえ見当がつきません。
しかしこの試練を乗り越えれば、国土は実り豊かな大地に生まれ変わり、確実に明日が開けるのです。
日本国民の皆さん、哀しみを振り払い、顔を上げ、もう一度、美しい日本と、美しい日本人の姿を取り戻してみませんか?
古事記には、イザナミが「毎日千人殺す」と脅かすと、イザナギが「それでは千五百人子を産む」と答える場面があります。先祖から受け継いだ勇気と知恵があれば、我々はきっと失った以上のものを生み出すことが出来ます』

地球規模で地殻変動が生じていることを考えると、これから日本を襲う災害の規模も凄まじいものかもしれない。
しかし我が国は、長い歴史と、それを伝える文化が育まれてきた国であるゆえ大丈夫だと信じたい。
なぜなら、先人が困難を乗り越えてきたことは、次なる困難に打ち勝つ知恵と勇気となるからだ。

「死都日本」には次のような一文もある。
『鏡と勾玉には暗黒化現象に伴う社会不安を解決するヒントが隠されており、それを実行する者こそが天皇にふさわしい』


私はこの文章に出会った時、近年の皇太子様のご研究に想いが及んだ。

皇太子様は「水」の研究者として数々のご講演をされており、初期はご研究の契機となった水運を柱とした内容であったが、気候変動が世界的問題となって以降は、徐々に環境問題にご関心を広げられ、東日本大震災以降は明確に「水と災害」、とくに災害を伝える歴史的資料についてご研究と発表をされている。

皇太子様のご講演を拝読すると、時代的には、紀元前後の弥生時代に洪水制御のために発展した環濠遺跡や、「日本書紀」に記される仁徳天皇の時代の河川の氾濫対策についてまで遡って言及されている。
過去の地震については幾つも紹介されているが、東日本大震災と震源域が重なる869年の貞観地震については、現在の被害の画像にあわせて「日本三大実録」における被害の描写を示され、1498年の明応地震については徴税史料「船々聚銭帳」から復興の様子を例にひいて講演されている。

国語の授業で馴染み深い「方丈記」(鴨長明)や「太平記」も、災害を伝える資料という点から講演されている。
無常観漂う冒頭を暗記させられた「方丈記」には大火に竜巻に飢饉に地震が描かれていることや、軍記物として知られる「太平記」には康安元年(1361年)の地震津波が描かれていることも紹介されているが、これは何も闇雲に災害の数とそれを記録している資料を羅列されているだけではない。
皇太子様があげておられる様々な分野の資料は、我が国が幾多の災害や飢饉に見舞われながらも一歩一歩前進してきた証しであり勇気の源となるのだ。

第6回世界水フォーラムにおける皇太子様の御講演より

何よりも学ぶべきことは,私たちの祖先が災害によって私たちと同じような困難に直面し,立ち向かい,克服してきた事実そのもののように,私には思えます。先人たちが幾多の災害にかかわらず,たゆまない努力によってこの社会と街を作り上げてきたことが,私たちに多大な損害と困難,大きな悲しみを乗り越え,前へ進む勇気を与えてくれるのではないでしょうか。


古事記が神武東征を余儀なくなれるほどの破局噴火を伝えるものだとして、祖先はそれを乗り越えより発展した国を作り上げた。それ以後も水害に遭っては備え、数々の地震や津波から立ち上がってきた先人がいるということは、これから益々地球的規模の災害に遭うかもしれない現代の我々にどれほど力を与えてくれることか。
歴史ある国でありそれを伝える文化があることは本当に有難い。
科学的には個々に優れた研究や(災害の)生々しい映像や画像もあるが、それらの理解を深めるために、過去の軍記物や随筆や徴税帳など様々な分野の資料をもちより、総合的な災害心得を編纂され国内外に発信される
皇太子様。

伝承が神の教えだとすれば、その伝承に新たなページを加えられるのは、神の教えを継いでいかれる方の使命かもしれない。

「死都日本」より
「鏡と勾玉には暗黒化現象に伴う社会不安を解決するヒントが隠されており、それを実行する者こそが天皇にふさわしい」

昨年は皇室と出雲に特別な御縁が誕生し、皇太子ご夫妻は出雲に嫁がれたお姫様のご家族を非常に大切に思われているという。
古事記も伝えるように、出雲をはじめ皆と力をあわせ困難を乗り越え、より良いものを伝えていくためには、
神の教えである知恵を継いでいかれる方こそ天皇にふさわしい。

先人の足跡を勇気に変えるため、新たな智慧の書を編纂されている皇太子様を、心から信頼申し上げている。