20年くらい通っている散髪屋。
開店の9時半ごろ入ると、
いつものように先客が数人
ソファーでくつろぎながら本を読んでいる。
私の番が回ってくるのは11時過ぎだろう。
私も持参した雑誌を出し読み始めた。
ここでゆっくりと本を読むのも、いい時間なのだ。
この散髪屋はおばちゃんが一人でやっている。
だが今日を最後にしばらく休業する。
もともとおばちゃんは体の具合が悪く
医者からは休業しろと言われていたが、
おばちゃんは散髪が好きだから・・
と無理をしてきた。
それもついに限界に来たので、
入院することになったのだ。
常連の客がほとんどなので、
そのことは皆知っている。
おばちゃんによると、
1週間前から休業前の駆け込み?!で
昼食もろくにとらず散髪をしているという・・
そりゃ、体に良くないよ・・
と皆が言うが、
おばちゃんはうれしそうだった。
11時ごろ入ってきた客に対して、
通常なら、2時頃来て・・
というのだが、
「あんたまでやるで・・すわっとき!」
と受け入れてしまった。
客も慣れたもんで・・
これ入口につけとくよ!と言って
「2時まで休憩」というA4横サイズの貼り紙を
入口に掲示した。
別の青年は、おばちゃんに頼まれ
隣のスーパーにおにぎりを買いに行った。
おばちゃんの昼食だ。
いつもは弁当を食べ休息をとるが、
その時間ももったいないという気概だ。
その青年は今年社会人になったが、
物心ついたころからここで散髪をしていたそうだ。
小学生の頃は、家に帰る前に散髪屋に顔を出し
ただいま!と言っていたという。
家族のようなもんだな。
入院は2カ月の予定だ。
コロナ対策で面会はできないようだ。
心ばかりのお見舞いを渡し、
ゆっくり休んでくださいと言って店を後にした。
私にとってもこの店(おばちゃん)は身内のような感覚だ。
お互いがお互いを思いやる。
ここに来ると自然にそんな気持ちにつつまれる。
おばちゃんの人徳だな。
とにかく、お大事に。
そして、元気になったらまた散髪をお願いします!