二〇二四年十一月二十六日(火)。
早朝(午前五時)。ピュリナワン(成猫用)とヒルズ(腸内バイオーム)の混合適量。
朝食(午前八時)。ピュリナワン(成猫用)とヒルズ(腸内バイオーム)の混合適量。
昼食(午後一時)。ピュリナワン(成猫用)とヒルズ(腸内バイオーム)の混合適量。
夕食(午後六時)。ピュリナワン(成猫用)とヒルズ(腸内バイオーム)の混合適量。
飼い主さあ、活字だらけのその書籍だけど知事がどうしたこうしたって書いてある。
お、タマさんか。いつの間に入ってきたの?
ドアを開けてくれたんだ、飼い主の妻が。飼い主が二階の自室に上がっていったんで追いかけていこうとしたら二階まで連れてきてくれた。テレビで人気の兵庫県のこと?
んなわけない。これはアメリカの州知事のことでね、日本の全国知事会なんて桁外れに下の下。
そんなこと言っちゃっていいの?
言っていいとかよくないってレベルじゃない大真面目な話。おさらい程度だけど。
でもなんでアメリカなの?
アメリカの一九二〇年代。いわゆるジャズ・エイジって言うんだけど空前のバブル景気に湧きかえってた。それは一九二九年のウォール街大暴落で終わる。ヘミングウェイとかフィッツジェラルドが活躍した時代でもある。でもフィッツジェルド作品で最も心に沁みる小説は大暴落後の一九三〇年代に発表された晩年の短編群さ。日本で超有名な小説家の何人もが不思議なことに何ともメロドラマ仕立てでヒットした一九二五年発表のグレート・ギャツビーを除けばほとんどが晩年の短編群の通奏低音として流れてる仄暗い抒情というかペシミスティックな雰囲気を吸収してる。日本の一九八〇年代バブル期にめちゃめちゃ売れた。無頓着な人もいたけど意識的に外国文学に関心のある読者なら手に取るようによくわかるさ。
そんなによくわかっちゃうの?
そりゃわかるよ、フィッツジェラルドと言えば二〇年代に乱発的に発表された短編群と作品グレート・ギャツビーってことになってて八〇年代バブル期の日本ではどこの書店でもそればかり。逆にうんざりした読者は晩年の三〇年代の短編群に目を付けて読んでみた。するとフィッツジェラルド独特のしみじみ沁み込んでくるペシミズムは全然晩年のほうじゃんって気づいた。でも重要なのは本家アメリカで起きた空前のバブルと空前の大暴落の時点に合わせたかのようにジャストで発表されたハメットの”Red Harvest”ってハードボイルドの傑作でね、日本では血の収穫とか赤い収穫とかのタイトルで出てる。
タマにはよくわかんないけど、なんでそれが重要なの?
うん。中規模の地方都市で何だか胡散臭い暴力支配が続いてるから調査してほしいという依頼。探偵は定石通り街の外部から送り込まれる設定を踏んでいて調査を進めるうちにわかってきたのは地方都市ぐるみの恐怖政治体制なんだよ。町の行政のトップ、警察のトップ、銃武装したギャングの三者が牛耳ってる。そこで探偵は上手い仕組みを考える。この三者の利害関係が衝突して大型トラックで銃撃戦になるような展開へ持ち込む。依頼の件が明るみに出て片付いたところで本社へ連絡を入れて今度は街の外部へ立ち去る。探偵ってのは沖縄や南西諸島で昔から語り継がれきた”まれびと”の役割を果たすのさ。
そうなんだ。でもそれがなんで今のアメリカ州知事とどう関係あんの?大統領の返り咲きとの関係とかかな。アメリカ第一主義ってやつ?
主張したければやりたい放題すればいいという思いはするさ。けどあれはだな、ぶっちゃけた話自分たちの手で打ち固めた武器庫の中に立て籠もって世界の全方向へ向けて自分たちの手でせっせと銃眼を増やしていくようなもんでね、数年もすれば落城するのがわかりきってるようにしか思えないんだよね。だからイギリスやフランスはちょっとしたきっかけのあるごとにすかさずアメリカと距離を取れるような関係へささっと持ち込んで徐々にすっきりさせてきた。頭がいい。けど日本政府と日本の巨大企業は釘付けにされててそのツケがこれまたうちのような底辺階級に回されてくる。さらにどん底を見せつけられることになる。
そんなの、でも、タマはどん底なんてまっぴら。今のタマのマイブームはテクノなんだ。邪魔されたくないよ。
しかしだな、今度はこれまでの低所得者層がほとんど底辺階級として公然登場するほかなくなってきてる。ネットの普及で世界中の底辺階級が意義あるオルタナティヴな公共空間の新しい創設に乗り出しててね、その意味では面白いのさ。
黒猫繋がりの楽曲はノン・ジャンルな世界へ。ロイ・ハーグローヴ。”Habana”と同時期に録音された未発表アルバムらしい。”Habana”は出世作になったわけだが当時のジャズのお手本的な感じで持ち上げられた印象。しかし今回発表の未発表アルバムはより一層カリビアンな風味。ラテン・ジャズというひと言では括りきれないファンク系やちょっと懐かしめのアフロ・キューバン系も含め広く味わい深い。
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