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ボーイング787は「夢の旅客機」?

2013年04月30日 | 日記


米連邦航空局(FAA)は4月25日、ボーイング787型機に搭載されるリチウムイオンバッテリーについての新たな耐空指針を発表し、同機の運航再開を許可しました。しかし肝心のバッテリー火災の事故原因は未解明のままで、対症療法に過ぎないボーイング社の「改修計画」を丸呑みにして、運航再開を許可する決定を下したのです。

拙速だったFAAの型式証明のための安全審査
今回の事故の背景には、もともとFAAが、相次ぐ開発遅れで航空会社への納入遅延を引き起こして損害賠償請求されていたボーイング社の「事情」に過度に配慮して、ろくに機体の安全審査もせず早々と型式証明(TC=Type Certification)を交付していたことが指摘されています。
このため、今回のバッテリー火災事故については、FAAも汚名返上のため、慎重かつ徹底的に原因究明に取り組むことが期待されていました。したがって運航再開には1年以上かかるとみなされていました。私もそう思っていました。でも甘かったですね。
FAAはまたしても原因究明しないままに、ボーイング社の対症療法だけの「安全対策」を鵜呑みにして、早々と運航再開にOKを出しました。

リチウムイオンバッテリー発火の原因は未解明
787は、充電式の主バッテリーを2基搭載しています。メインバッテリーとAPU用のバッテリーです。同じタイプですが、それぞれ別の目的で使用されています。

APU(補助動力装置:航空機の尾部に搭載されている小型エンジン)はエンジンを起動する発電機を起動する他、地上作業用に電気を供給します。
またこのAPUバッテリーは、飛行中エンジンが停止して主電源が失われた場合の緊急用にも使用され、機体右側主翼の後方下部に設置されています。

メインバッテリーは、地上では主エンジンの起動前に、飛行システムの電源に使用されるほか(プリウスの補機バッテリーと同じですね)、給油などの地上作業用の電源としても使用されます。
エンジン始動後は、各システムの電気はエンジンから供給されるためこのバッテリーは使われません。ただしAPUバッテリーと同様に、飛行中電力が失われるなどの緊急時のバックアップ電源として使用されます。このメインバッテリーは、航空機前方の下部の電気室に設置されています。

しかし飛行中は出番がないとはいえ、2つのエンジンが停止する緊急時はハドソン川への着水事件でもわかるようにそれほどまれな事ではありません。その時バッテリーが破損していたら、飛行システムの電源喪失となり、墜落するしかないわけです。
この点からみると、今回のように原因を解明せず、バッテリーが再度高熱になって破損しても、機体に延焼しないようにするだけではまったく不十分ですね。
高熱が出た病人に、病因は不明ですが、氷枕で熱を下げるので安心ですといっているようなものです。


バッテリー発火事故より怖い炭素繊維強化素材の機体構造
しかし、このバッテリー発火事故も問題ですが、私はボーイング787の機体構造自体がもっと問題があると思っています。

ボーイング社は787を「ドリームライナー・夢の旅客機」と呼んでいます。
実際従来の同クラスの旅客機では不可能な、日本から南アフリカ・ヨハネスブルグまでノンストップで飛べる大航続距離が売り物なので、あながちそれも誇大広告ではないでしょう。
それを実現したのは最初に書いたように、従来の旅客機と違ってエアコンや主翼の防氷装置、発電機などの駆動にジェットエンジンからの高圧空気の抽気をやめてエンジン出力の低下を防止し、高圧空気のダクトや弁なども廃止したので軽量化できたということもあります。
従来の旅客機↓ エンジンの圧縮空気をエアコンや防氷装置、APUや発電機の動力源としている

ボーイング社のホームページより

787はエンジンの起動用モーターを発電機として、電気でエアコンや防氷装置、APUを起動している

ボーイング社のホームページより

しかし最も大きく性能アップに寄与したのは機体構造の軽量化でしょう。
その切り札が、胴体や翼などの構造材料として炭素繊維強化材料(CFRP)を多用したことです。
ほぼ全面的にCFRPを使用しています。↓

ボーイング社のホームページより

機体が軽量になれば燃費は向上しますし,旅客数も増えるでしょう。金属材料と異なり錆びないので、これまでできなかった客室内の加湿も可能となります。飛行機に乗ると肌がカサカサになるといったこともなくなります。
これらの787の「先進性」については、ボーイング社をはじめインターネット上を賑わしている提灯持ちの記事でよくわかります。

誰も言わない炭素繊維強化材料(CFRP)の脆弱さ
しか~し、ボーイング787に採用されたCFRPについては、その利点は挙げられていても、その基本となる炭素繊維自体がもっている本質的な欠陥や、マトリックス(母材)となるエポキシ樹脂の持つ問題点に触れた記事はほとんど見られません。
東レが開発し、機体構造の製造に三菱をはじめ多くのメーカーが参加していることもあって、賛美する報道記事ばかりです。

しかし炭素繊維自体、基本的な脆弱性の問題があります。
以下、この点について、<コチラのブログ>で詳しく取り上げられている内容に従って書いています。もっと正確に知りたい方はぜひ直接ご覧になってください。

さて、そのブログでは、炭素繊維の欠陥として圧縮方向の脆さについてとくに警鐘を鳴らしています。
炭素繊維は引っ張り強度や弾性ではすぐれた性能を示すが、圧縮方向にはきわめてもろく簡単に破断するというのです。
確かに掲載されている電子顕微鏡の写真では、わずかな(1%程度)軸方向への圧縮変形で繊維は破断しています。そして、飛行機には、飛行に伴って絶えず機体構造を変形させる力が働いています。
たとえば駐機中に暖められて膨張した機体は上昇するにつれて冷やされて収縮するし、高度を取るにしたがって機体内の与圧によって内外の気圧差が大きくなって膨張しようとし、着陸時は逆に収縮します。離着陸時の衝撃も細長い機体構造を変形させようとします。
機体を支える主翼は、駐機時は直線に近くても、飛行時は上方に大きくたわみます。とくに787はこの撓み代が大きいと思います。撓みは一方では引っ張り方向に、他方では圧縮方向に主翼を変形させる力が加わります。さらに捻れ方向の力も働きます。
地上では主翼は直線で撓んでいないが↓

ボーイング社のホームページより

空中では大きくたわんでいる↓

ボーイング社のホームページより

このように、787自慢の軽量の炭素繊維を使用した複合素材の機体構造に対して、各種の変形が繰り返されることで構造部材の疲労が進行します。
飛行の度に繰り返されるCFRPの疲労が限界点に達したら、突然機体が大規模に破壊される最悪の結果となる可能性も否定できません。

また、自慢の「一体構造」は軽微な接触事故等でも修繕は難しいと思います。

ボーイング社のホームページより

従来の軽金属のセミモノコック構造だと可能な修理が、1枚パネルの胴体構造では不可能です。簡単な凹みでも炭素繊維材料の座屈とマトリックスとの剥離を起こし、パッチを当てて修理するのは強度維持上極めて難しいと思います。
あとで触れますが、同じ機体構造のオスプレイが簡単な事故で破損して修理不能となり、多数の機体が在地処分になっている事実が報じられています。一体構造のプラスチックのデッキチェアにひびが入ったら元通りに修理するのが困難なのと同じです。
修理不能で廃棄されたオスプレイ↓

[2012 www.G2mil.com]

母材(マトリックス)であるエポキシ樹脂は危険な可燃物
温度・熱・紫外線などに対する耐久性も問題ですが、もっと深刻なのはエポキシ樹脂はよく燃えるということです。
旅客機の主翼は、膨大な燃料を搭載するタンクになっていますが、それが可燃物で出来ているというのは重大な問題です。さらにエポキシ樹脂は燃焼時に猛毒のダイオキシンを発生します。
ということは、離着陸時に横風等を受けて飛行機が姿勢を乱し、主翼端が滑走路に触れたりすると摩擦熱で発火、瞬く間に機体に燃え広がります。
運よく乗客が客室から脱出できたとしても、猛毒ガスの煙で中毒死といった最悪の事態が容易に想定できます。
実際同じボーイング社が作ったB2爆撃機が、グアム島で上記の事態となって機体を全焼してしまった例があります。

[2012 www.G2mil.com]

そして、今沖縄に配備が強行されてしまっているオスプレイも同社製。機体構造も全く同じ炭素繊維強化材料(CFRP)でできています。オスプレイの構造的欠陥を紹介しているココで、その危険性が詳しく指摘されています。

オスプレイはそもそもの設計が極めて危険(同機の翼面荷重とローター翼面荷重を調べるだけで一目瞭然です)なものですが、機体構造が787やB2同様に燃えやすいのも深刻な問題です。
過大な翼面荷重のため、たった一基のエンジントラブルでも水平飛行の維持は難しい(実際の事故はコレ)と思います。そして墜落して発火しても、防毒ガスマスクなしには消火活動もできません。

787もオスプレイも、ボーイング社にとっては極めて危険な博打だと思います。
そしてその危険な博打に、私たちが無理やりつき合わされ、巻き込まれかねないということに強い危惧を感じます。

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