私の住む集落は小字名が「奥の谷」といいます。いかにも山奥という感じがにじみ出しているでしょう。ですので好きです。
いつからなのかはっきりとは覚えていないのですが、我が家の周辺に4羽の雄鶏がいます。それがなんと自由鶏なのです。天気のよい日にはいつも早朝から所かまわず、こけこっこー ゴケゴッゴーゴケッ などと合唱したり輪唱したりでなんとも賑やかなことです。
鶏ですので、もともと自由鶏だったわけではありません。元の飼い主もわかっています。はじめは鶏小屋にいたのです。いたというよりは当然、鶏小屋に入れられて飼育されていたのです。そのころは雌鶏もいました。むしろ雌鶏が主体で卵の生産を期待されて飼われていたのです。鶏小屋に近づいて数を数えるなどしたことはありませんが、小屋の規模や鳴き声などから10羽以上の鶏がいたとおもいます。
両親が健在だった昔は、我が家にもいつも鶏がいました。卵を生産してもらっていたのです。ときどき鶏小屋から母の悲鳴があがっていました。卵を食べにきたネズミトリ(あおだいしょう)という大きな蛇を卵を掴むつもりでつかみあげて上げる悲鳴でした。卵を産む箱の中に卵を平らげたネズミトリがとぐろを巻いて休憩していることがよくあったのです。
小夏(日向夏)のしたの自由鶏
90歳を越し今は寝たきりになったおばさんが世話をしていました。雌鳥は数年卵を毎日のように産むと段々産む数がへりやがて産めなくなります。おばさんが寝たきりになり、鶏の世話が思うようにならなくなったのでしょう。雌鳥は食べてしまったのか、勝手に生きていけと放り出されたのは雄鶏だけです。
我が家の庭に来ては玄関にうんこをひりだし、あちこちを足でひっかきながら何かをついばんでいます。収穫してきた葉野菜などをつっついたりするので少し迷惑な気もするのですが、ウグイスの鳴き声と浪曲師のうなる浪花節の趣もあるごけごっごーの合唱も、のんびりと平和だなあと少しはのどかな気分にしてくれもするので「まあ いいか」とも思うのであります。