2012年4月21日(土)曇り後雨
毎年、4月20日前後、必ず日本ミツバチの分封があります。時の刻み、自然のサイクルの正確さには驚くばかりです。
今年最初の我が家のミツバチの分封は4月13日でした。
ここ数年巣箱はたった2箱までになっていました。あまり世話ができないのと、飼育の最大の目的である蜂蜜の収穫さえ何年もしていません。ミツバチを増やそうという意欲が落ちていました。
ある日、ふと気づくとたくさんのミツバチが出入りしていた巣箱のミツバチの姿がないのです。ミツバチたちは寒い日には働きに出ないので、気づかなかったのです。
巣箱をひっくり返して確認するとやはり空っぽで、巣はスムシが湧いてボロボロになっていました。たくさんのスムシに襲われて巣を食い荒らされミツバチたちは巣を放棄したのでしょう。
掃除をしました。古くてボロボロにされた巣を取り除いているとたくさんのイモムシのようなムシ(ハチノスツヅリガ?の幼虫)がうようよいました。
さて、もう一つの残った巣箱はたくさんの働き蜂が出入りしていました。4月13日、今年初めてタケノコ掘りに行こうと準備をしていました。午前9時40分頃、ブーンというたくさんの羽音が聞こえだし、分封が始まりました。巣箱から飛び出し、近くの木に集まり蜂球をつくるところまで一部始終を観察できました。一回目の分封です。かなりたくさんの蜂群です。
掃除してあった、古い放棄された巣箱に入ってもらうことにしました。
そのときはうまく入ってくれて安心していたのですが、なにか気に入らなかったのでしょう。2日後、逃避されてしまいました。
それから一週間後の4月21日、2度目の分封です。
この日もタケノコ掘りにでかけようと用意をしていて、ふと以前分封の時蜂球をつくっていたアオギの木をみると何と同じ場所に蜂球がぶら下がっていました。午前9時過ぎのことです。きょう分封したのでしょうか?それにしては時間が早すぎる気がします。だいたい分封は10時過ぎ頃がもっとも多いように思います。昨日分封して、ここに付いたのでしょうか?それなら急がないともう少ししたら新しい巣に向かうはずです。
アオギの木に集まった蜂球、ミツバチたちは蜂球をつくるとき手当たり次第にどこにでもとりつくのではありません。とても頑固な選出基準をもっているようです。この時も前回と寸ぷん違わずまったく同じ場所でした。おそらく、近くに幾つかの巣箱をおいていたらほとんどの巣箱の分封にこの場所が蜂球の場所として選ばれるのでしょう。昔、祖父がたくさんのミツバチを飼っていたとき、近くの樫の木の、ある特定の場所がこのように利用されていました。もしかしたら、分封はある時期(当地では4月20日頃を中心に)に集中して行われるので、最初に利用した蜂群の何かの印(ニオイなど)が残っているのかもしれません。
蜂球の様子、蜂の量は普通ぐらいで前回の8割ほどでした。日本ミツバチは新しい住処を見つけてから分封するのではなく、こうして巣別れしてからどこかにとりつき、その蜂球から偵察隊が四方八方に飛び立ち新しい住処の情報を集め、報告された幾つかの情報をもとに複数の偵察隊が確認し、衆議一決、決めた新しい巣に、いっせいに飛び立ち向かうようです。
レジ袋で蜂群を巣箱に移動しようとしている私です。以前は日本手ぬぐいを利用していました。手ぬぐいを半分に折りたたみいっぺんを解放し2辺を縫ってもらって袋をつくりそれで蜂球を掬い取っていたのです。日本ミツバチのことを書いた本にレジ袋でも利用できると書かれていたので、以来もっぱらレジ袋です。昔は盆暮れに、商店からお得意さんにお使い物として日本手ぬぐいがよく配られていて、どこの家庭にもたくさんありました。いまはそんな風習は少なくなり、あっても普通の手ぬぐいで、商店の広告付きの日本手ぬぐいが農家の主婦の頭から消えて久しいですね。
ただレジ袋を使うときは気をつけなくてはならないことがあります。袋の表面はつるつるなのでミツバチたちは足を引っかけることができません。そのため蜂球の量が多いと底の方になったミツバチたちが被害を受けることがあります。全ての蜂がどさっと落ちるため底になったミツバチたちが、重さのため窒息する、あるいは中心部にいる蜂たちが焼け死ぬ(ミツバチたちが集まるとかなりの熱をもちます。蜂球の中に指を入れると熱を感じますので30数度はあります。世界最大のスズメバチで天敵のオオスズメバチと対峙するとき、巣に進入したオオスズメバチをミツバチたちが包み込み、小さな蜂団子になっていっせいに筋肉をふるわせ熱をだして焼き殺すという戦術は有名です)、あるいはそれら全ての原因で沢山のミツバチが死んでしまうことがあります。
こういうことからすると、日本手ぬぐいの袋というのは、とても合理的であるということがわかります。布ですので密封されるということはありません。足がかかりますが洋手ぬぐいほど毛羽立っていないのでふるい落としやすい。まだ母が持っているはずなので、昔ながらの「ミツバチ捕獲用日本手ぬぐい袋」を作ってもらおうと思います。
レジ袋でほとんどのミツバチ(95%以上)をいっぺんで掬い取り、巣箱に移しているところです。レジ袋を逆さにしてそろりと全部の蜂を巣箱の前に落とします。
巣箱は傾けて入り口を大きく開けておきます。ミツバチたちは暗いところを求めて?ぞろぞろと巣箱に入っていきます。
赤丸の少し大きくて黒っぽい蜂は雄蜂です。
ぞろぞろ入っていって残り少なくなりました。
やがて、全ての蜂群が新しい住処に収まりました。めでたしめでたしといいたいところですが、この巣箱は前回逃避された巣箱。その上、懲りずに設置場所も同じ所。はたして、新住居として気に入ってもらえるのか不安です。この日は午後から雨になり、明日も一日雨の天気予報です。答えがでるのはその後。
またも逃避されてしまうと、やはりものぐさはだめだということが証明されます。新生活をはじめてくれたら、今までどおり「ミツバチの気持ちはわからん」ということになります。はたして。
2012年4月27日 後日譚
分封したミツバチを納めた蜜どう(巣箱)のミツバチたちはどうなったでしょうか。
実は本日も元気にたくさんのミツバチが働きにかよっています。「ミツバチの気持ちはわからん」ということでめでたしめでたしでした。
巣別れしたもとの巣箱のミツバチたちは3~4割が後ろ足にたくさんの花粉をつけてもってかえっていますが、新しい巣箱に入ったミツバチたちはまったく花粉をとってきません。せっせと巣を作っているのでしょう。そして蜂蜜をためているのだと思います。もう少しして巣がおおきくなり幼虫を育てる前ぐらいから花粉をとってくるのでしょう。
それにしても、かれらの働きぶりや巣箱への出入りを眺めていると時間の経つのも忘れて見とれてしまいます。
少しは休みもとってゆっくりしておくれ。