2016年10月18日、高知大学名誉教授町田吉彦さんから「アカメの国」へ投稿がありました。「アカメの国」の「守れアカメの聖地浦戸湾」に掲載させて頂きました。同じ文章をそのままここにも掲載させて頂きます。
県民、高知市民など有志の長年の活動で新堀川をつぶして道路にするという愚行を途中でくい止めてきました。しかし、公共工事で甘い汁を吸う官民・
御用学者は目論見を捨てていません。新たに動き始めました。
当時、シオマネキ、トビハゼ、コアマ、アカメは絶滅危惧種でしたが、高知県希少野生移動植物保護条例は施行されていませんでした。当時、私たちの抗議に対して、シオマネキは新堀川で捕まえてどこかに移植、コアマモはひっこ抜いてどこかに移植するという廃棄処分(シオマネキもコアマモも幼生や種は浦戸湾をただよい生息可能な環境を見つけて生息しています。湾内にいない、繁茂していない場所は生きていけない環境です。そこへ移植しても死に絶えます)を税金を使って西日本科学研究所にやらせました。この時の専門家の責任者が今回の専門家の責任者だそうです。行政に媚びその都合のよい結論を出す専門家を御用学者といいますがまるで御用学者の鏡です。
現在、高知県希少野生移動植物保護条例は施行されシオマネキ、トビハゼは保護種に指定されています。税金を無駄(悪事)に使い、シオマネキ、トビハゼを廃棄処分させたり生息環境を破壊させてはなりません。
新堀川の怪
高知大学名誉教授 町田吉彦
先日、尾崎(正しい漢字は立つ崎です)知事が新堀川の道路拡幅に関連した協議会を来年度に発足させたいと発言したことをマスコミが伝えた。この拡幅については改めて十分な議論をする必要があるとの橋本前知事の議会での発言が残っており、協議会の発足は結構なことである。ただ、現知事の発言の中に、環境変化も踏まえという内容があったように思う。新堀川に関心を寄せている人々にとって環境変化とは、現時点で新堀川の川面を広く覆っている駐車場のほんの一部の試験的撤去に伴う環境の変化であろうことは疑いない。現知事は交通量の変化にも言及したようだが、これはこれでまた問題がありそうなので今回の小生の指摘では触れず、「環境の変化」について私見を述べ、皆さんの判断を仰ぎたい。その骨子は、2014年9月17日に行われた担当部局である県都市計画課に対しての第1回陳情以来、環境調査の結果の解釈に重大な誤りがあるので、訂正とアンケートの撤回を有志で要求していた事項であり、担当部局にとって寝耳に水の話ではないことをお断りしておく。陳情の最終段階では公開討論会の開催を要求したが、あっさり拒否された。なお、陳情は有志の代表とともに行ってきたが、本稿の内容に関する責任はすべて町田個人にあることをお断りしておく。
まず、陳情の際に用いた全4ページを旧詳細版として以下に掲げる。
これは、2014年2月に高知県土木部高知土木事務所と株式会社西日本科学技術研究所がまとめた高知県高知市はりまや町~桜井町報告書の概要をやや詳しく述べたものである。以下、旧詳細版とするが、その理由はインターネットで新堀川環境調査をキーワードとして検索し、高知県庁のホームページにある「はりまや町一宮線はりまや工区について」にアクセスして(2)の上から3番目にある詳細版をご覧いただくと、これが2016年5月20日に公開された詳細版の新バージョンと理解されるためです。お分かりのように、旧詳細版の3ページ目のみになっています。こんなのあり? 反則でしょう。某氏からの指摘で変更されていることに今日の今日まで気付いてなかったのは誠に迂闊でした。公的な調査結果の概要が入れ替わることは想定外。もっとも、公文書の日付が変わることもあるようですから、奇々怪々ですな。
なお、地理に不案内な方は高知市の地図を拡大し、市内中心部の菜園場(さえんば)町付近をご覧いただきたい。
調査項目は多岐にわたるが、環境が良くなったと根拠にした底生性微細藻類に関する図9と図10、まとめの表1の底生性微細藻類をご覧いただきたい。この項目以外のほとんどについては明瞭な傾向が認められなかったと自ら記述しているので、言及しても意味がない。もちろん、調査・分析をしたが明瞭な傾向が認められなかったとの結果は、もともと統計学的に耐えられる試料数ではないのだから当然であり、正直な記述であると思う。試料数を増やせば意味のあるデータとして残る可能性はあるのだが、お役所の言う金がない、が殺し文句である。
さて、本稿を理解していただくために以下の事柄を頭に入れていただきたい。また、途中で混乱した場合は見直していただきたい。
1 干潟は移動しやすい基質(礫=一般に石、砂、砂泥、泥)からなり、潮汐の影
響を受けて干出と水没を繰り返す地形である。
2 微細藻類とは肉眼で見えないサイズの単細胞の藻類であり、浮遊性微細藻類
(一般に植物性プランクトン)と底生性微細藻類におおまかに分けられる。
3 干潟の底生性微細藻類は主に砂泥粒子の表面で繁茂するので、それらの砂泥粒
子(基質)とともに移動する。アユなどが餌とする付着性の底生性微細藻類は
通常、基質とともに移動しない。
4 光合成(こうごうせい)をする生物によりそれらが含むクロロフィル(葉緑素)
が異なる。普通の陸上植物(コケ植物、シダ類を含む)はクロロフィルaとb
で藻類では緑藻がこれと同じ。藻類でも珪藻はクロロフィルaとcである。新
堀川の干潟の表層堆積物を分析した結果、クロロフィルa、b、cが検出され
ているので(図9。Chl.はクロロフィルの略)、表層堆積物中の微細藻類は緑藻
と珪藻であったことになる。
5 フェオフィチンとはクロロフィルが変化して光合成活性を失った物質であり、
死んだクロロフィルと考えてよい。
6 干潟の表層に堆積した微細藻類(底生性微細藻類と潮が引いた後に取り残され
た浮遊性微細藻類)は干潟の底生動物(ゴカイ、貝、カニ類など)の主要な餌
である。
7 底生動物に餌として取り込まれた藻類の細胞は消化作用を受けて細胞内のク
ロロフィルがフェオフィチンとなり、糞の一部として排出されて水中に流れ出
る。当然ながらフェオフィチンの粒子もまた水流で移動する。
8 駐車場下では微細藻類の光合成に十分な光がないことが予め確認されている。
前置きが長くなったが、旧詳細版の図9と図10を見ていただこう。駐車場下、公園前、撤去部の棒グラフの凸凹のパターンが驚くほど似ていることにすぐ気付くだろう。実はこれが本稿の結論なのだが、表層堆積物は水流でならされているため新堀川のどこで試料を採取しても似た数値になるのが当たり前である。それぞれの調査ごとの採取地点の数値の差が旧詳細版(報告書)で言う光条件(光環境)の差を反映しているという無茶苦茶な論理はそもそも成り立たない。
旧詳細版を検討しても報告書の実物を検討しても、底生性微細藻類が移動するとはどこにも書いていない。もちろん、報告書の作成者と、報告書をチェックする立場にある委員会の委員は干潟の生物、干潟の環境問題のプロだから、内輪ではそんな常識をわざわざ書く必要はないだろう。ところが報告書の18ページで、光合成に十分な光がない駐車場下で比較的高い値のクロロフィルが検出された要因の一つとして、浮遊性藻類の堆積を挙げている。奇妙なことに、旧詳細版ではこれに言及していない。もし言及すれば、公園前にも撤去部にも浮遊性藻類の堆積があることは誰にでもすぐに分かる。また、駐車場下で検出されたクロロフィルが移動してきた底生性微細藻類と浮遊性微細藻類に由来するとはっきり書いてしまえば、駐車場下も公園前も撤去部も微細藻類が同じように動いているのだから、それぞれのクロロフィルの数値の差を議論することが馬鹿らしいことは誰にも分かる。新堀川を流れる水は、引き潮時には堀川の方向に、満ち潮時には江の口側の方向に流れる。駐車場下では流れているが公園前と撤去部では流れていないとでも言うのだろうか?
新堀川を流れる水の速度は常に一定ではないし、底質の表面に凹凸があり、また、大きなゴミもあるためどこでも完全に同じ流速ではない。したがって、表層堆積物も完全に一様ではないのだから、そこから得られた試料中のクロロフィル量に差があっておかしくない。また、フェオフィチンも底生微細藻類と同様に動いており、駐車場下、撤去部、公園前ごとのそれぞれに固有の値はない。
ところが、旧詳細版(報告書)は素晴らしいアイデアを披露した。撤去部はかつて駐車場の下で十分な光がなかったが、天井部の撤去で光が当たるようになり、以前から光があった公園前と同等か同等に近いクロロフィル値となった、すなわち、光環境(光条件)が改善されたという「工事の成果」が得られた=撤去の工事は無駄ではなかった=今後も撤去により同様の成果が得られるだろう、ということを何が何でも言いたいのである。そのアイデアが「調査地点のクロロフィルaは光条件が値を左右しているものと考えられる」である。手抜きの難解な文章であるが、日射量に応じて光合成が起こるのは自明のことだから、言いたいことは「調査地点の光条件が調査地点のクロロフィル量を左右しているものと考えらえる」である。そうしないと、撤去部の光条件が良くなってクロロフィルが増えたという「想定された結論」が導けないのである。
いくら何でもこんな無茶な理屈が一般社会で通用するはずはない。撤去部と公園前の距離は30メートルもない。たったこれだけの距離の、しかもともにオープンな環境でクロロフィル量が異なったのは日射量が異なったからという出鱈目な説明を誰が納得するというのか。陳情の際、担当部局から「効果があったはず」と再三にわたる発言があった。効果はあったはずだが、微細藻類でそれを証明するのはほぼ不可能ということが分かっていない。すなわち、評価項目の設定ミスであり、光環境(光条件)が異なる3地点(光が以前から当たっている、以前は光がなかったが現在は当たっている、以前から光がない)で各1試料を採取したつもりなのだが、じつは表層堆積物が水流でならされた同一条件下で3試料を採取しただけというじつにハッピーな話なのである。
こんな陳腐な結論に待ったをかけるのが委員会の任務のはずである。ノーチェックだったのかチェックしたが内部で議論の結果意見が一致したのかは分からない。業者のいいなりだった可能性もまた否定し難い。委員は研究者・学識経験者であり、調査と報告書の作成に従事した業者も「科学的」調査を売りにしているはずである。白を黒、黒を白と言うのは科学ではない。たまたま旧詳細版がホームページにアップされていたので気付いたのだが、この有り様ではどんな調査結果も信用しろというのが無理である。よく耳にする「専門家の言うことを信用してはいけない」、まさにこれである。誰が調査項目を設定したのか、調査の途中で科学的な判定が困難であるということになぜ気付かなかったか、分かっていながら契約だからとずるずると調査を継続していた可能性もある。実に不思議である。生卵をかき混ぜ、同じ太さの棒を3本差し込んで引き上げた時、どの棒に黄身が多くついていたかについて屁理屈をならべたような報告書(詳細版)であっても業者と委員の諸氏は大丈夫である。慈悲深いお上は次のチャンスにもきちんと仕事を回してくれるだろう。被害者は納税者であり、また、今後選ばれる環境問題に詳しい協議会のメンバーである。
付録
1 現地に不案内な方々がいるだろう。構想では、新堀川の右岸に接する道路の幅を広げて新堀川の水面を広く覆ってしまう。これを桟橋方式というらしい。そうなると、新堀川におけるシオマネキ(高知県希少野生動植物)の生息地が失われ、コアマモが生育する場所も失われることになる。
2 駐車場の一部撤去はおそらく、上記1で失われる環境の代替え環境と想定されていると考えられる。しかし、そもそもシオマネキとトビハゼ(同様に高知県希少野生動植物)は公園前の対岸側(新堀川の右岸)に圧倒的に多く、左岸(公園前および撤去部側)には少ない。
3 2013年8月に、撤去部でコアマモの生育が確認されたと旧詳細版は喜んでいるが、コアマモの定着、生育、繁茂のチェックは当初の調査項目にない。「自然に生えてきてくれた」のである。もちろん、繁茂状況は私もチェックしたが、まだまだこれからという状況である。ついでながら、コアマモ群落は貴重な環境要素であるが、その群落の中にシオマネキの巣穴は形成されない。
4 報告書も旧詳細版もクロロフィルの活性が高ければクロロフィル値が高いとしている。活性は時間の概念を含み、反応速度である。また、クロロフィル値はある時間での瞬間的な値であり、時間の概念は含まず、生物量(バイオマス)と呼ばれる。干潟の表面では、底生性微細藻類が増殖し、浮遊性微細藻類が堆積すると同時に底生動物によりこれらの微細藻類が消費される。したがって、ある一定の期間内において微細藻類の光合成活性が高くてどんどん増殖したとしても、底生動物による摂餌行動も活発になって微細藻類が大量に消費されるため、ある時点での微細藻類の量(瞬間的な値。報告書と旧詳細版のクロロフィル量)がきわめて小さいことがよくある。これは干潟の生態系の特徴でもあるのだが、報告書作成担当者と委員がこのことを理解しているとは思えない。要するに、干潟の表層堆積物においてクロロフィルの活性が高いことはある時点でのクロロフィル量が多いことを必ずしも意味せず、むしろクロロフィル量が少ないというのが干潟の特徴である。
5 報告書と旧詳細版ではフェオフィチン率を藻類のクロロフィルの活性状態のもうひとつの指標として「売り」にしている。すでに指摘したように、フェオフィチンも移動し、試料採取地点に固有の値はないので、フェオフィチン率もまた今回の調査における地点間の比較には使えない。
なお、フェオフィチン率=(死んだクロロフィルの量)÷(死んだクロロフィルの量+生きているクロロフィルの量)×100としている。海水中にフェオフィチンとクロロフィルしかない状態で光を照射すると一定時間後にはクロロフィルの量が増加するので(フェオフィチンは死んだクロロフィルなので増加しない)この率が下がることになる。すでにお分かりのように、これは瞬間の値であり、クロロフィルの活性(時間の概念を含む)の指標にはならない。微細藻類の光合成活性を測定する場合、フェオフィチンは死んでいて増殖しないのだから、その存在を無視して微細藻類に一定時間光を照射し、光合成産物の量を測定して何ら問題がない。
6 微細藻類は水温が突然50℃に上昇しても、あるいは0℃に下降しても生理活性は変化するが死なない。すなわち、クロロフィルがすぐにフェオフィチンになるのではない。日射量が増加すると光合成が活発化し、微細藻類は増加するが、一方で水温の上昇にともない底生動物の摂餌活動が活発になるため、微細藻類が消費されると同時にフェオフィチンの量が増加する(この点も報告書作成者と委員が理解しているとは思えない)。したがって、野外のフェオフィチン量の変化(新堀川も該当する)はきわめて厄介な問題を含み、旧詳細版(報告書)にあるような単純なものではない。もちろん、報告書(旧詳細版)は移動するフェオフィチンの粒子を移動しないとみなした時点で誤りであることを念のため、再度記しておく。
7 2013年にクロロフィル量の大きな値が記録されているが、その説明がどこにもない。この値は試料採取日以前の高知市の天気で説明できる。例えば、試料採取の前日までの2週間で見てみると、2013年は晴れの日の確率が100%、最高気温の平均値が34.9℃、2012年は71%と31.8℃、2011年は64%と31.9℃であり、2013年の天気が抜群に良かったのが明らかである。瞬間的な値だけではクロロフィル量の説明はできないし、天気の影響が撤去部と公園前で異なるという馬鹿なケースはあり得ない。
8 旧詳細版(報告書)は冒頭に「干潟環境の創出過程の追跡を目的とした」と述べている。壮大なテーマである。残念ながら「干潟の環境」と「干潟環境」は違う概念である。後者は1996年のWWF Japan のサイエンス・レポート(通称、干潟のレッドデータブック)でcoastal wetlandsの訳語であると示されており、干潟、藻場、造礁サンゴ域、塩性湿地、マングローブなどを一括して指す術語である。レポートの内容は古くなったが、術語は古くなっていない.
9 新堀川のシオマネキの移植(拉致)にゴーサインを出した委員会の代表と今回の委員会の代表は同一人物である。新堀川のシオマネキは間違いなく深浦神社横に強制的に移植され、県は大はしゃぎでカラー写真入りのビラを作成して配布した。環境調査担当は言わずもがなである。成功! 成功! と宣伝したが、当地のシオマネキはとっくに姿を消しており、移植は明らかに失敗である。
2016年10月18日
付記1
筆者の不注意により「江ノ口川」を「江の口川」としてしまった。正しくは「江ノ口川」なので、ここにお詫びして訂正します。なお、付録2に示した2013年8月のコアマモの確認は調査項目に予定されておらず、業務に該当しないのだから報告書(詳細版)に掲載することが不自然であることは誰もが理解できよう。 2016年10月24日
付記2
やや難しいという感想が町田宛に寄せられたので、改めて補足します。撤去部に再度、天井を張った場合、そこの表層堆積物に含まれるクロロフィルの量はどうなるでしょうか? 答えは小学生でも分かると思います。新たに天井を張った時のクロロフィル量は公園前と駐車場下とそれぞれほぼ同じです。理由はクロロフィルが動いているからです。
撤去部の光条件が良くなって光合成が活性化してクロロフィル量が公園前とほぼ同等になった、撤去の効果があった、というのは大嘘です。最初の時点で駐車場下において無視できないほどの量のクロロフィルが定量された、すなわち、クロロフィルが動いている事を自ら検証しておきながら、なぜこんな無茶苦茶な結論を導いたのか私にはさっぱり理解できません。
委員会が調査項目を審議・決定したとあります(実際は業者と事務局が提案したのでしょうが)。すなわち、底生微細藻類を調査項目に設定した委員会のミスは明らかです。まさか委員会を救うための方便ではないでしょうが、委員会にチェック機能が無かったことを駄目押ししたようなものです。新たに設置される協議会の面々にこのままの報告書を提供し、審議の材料とするなら、目玉である光条件に関する結論が正しいかどうかをテストの問題として提出するようなもので、またまた新たな時間と金の無駄遣いになるでしょう。しっかりと予習していただきたいものです。
2016年11月6日
県民、高知市民など有志の長年の活動で新堀川をつぶして道路にするという愚行を途中でくい止めてきました。しかし、公共工事で甘い汁を吸う官民・
御用学者は目論見を捨てていません。新たに動き始めました。
当時、シオマネキ、トビハゼ、コアマ、アカメは絶滅危惧種でしたが、高知県希少野生移動植物保護条例は施行されていませんでした。当時、私たちの抗議に対して、シオマネキは新堀川で捕まえてどこかに移植、コアマモはひっこ抜いてどこかに移植するという廃棄処分(シオマネキもコアマモも幼生や種は浦戸湾をただよい生息可能な環境を見つけて生息しています。湾内にいない、繁茂していない場所は生きていけない環境です。そこへ移植しても死に絶えます)を税金を使って西日本科学研究所にやらせました。この時の専門家の責任者が今回の専門家の責任者だそうです。行政に媚びその都合のよい結論を出す専門家を御用学者といいますがまるで御用学者の鏡です。
現在、高知県希少野生移動植物保護条例は施行されシオマネキ、トビハゼは保護種に指定されています。税金を無駄(悪事)に使い、シオマネキ、トビハゼを廃棄処分させたり生息環境を破壊させてはなりません。
新堀川の怪
高知大学名誉教授 町田吉彦
先日、尾崎(正しい漢字は立つ崎です)知事が新堀川の道路拡幅に関連した協議会を来年度に発足させたいと発言したことをマスコミが伝えた。この拡幅については改めて十分な議論をする必要があるとの橋本前知事の議会での発言が残っており、協議会の発足は結構なことである。ただ、現知事の発言の中に、環境変化も踏まえという内容があったように思う。新堀川に関心を寄せている人々にとって環境変化とは、現時点で新堀川の川面を広く覆っている駐車場のほんの一部の試験的撤去に伴う環境の変化であろうことは疑いない。現知事は交通量の変化にも言及したようだが、これはこれでまた問題がありそうなので今回の小生の指摘では触れず、「環境の変化」について私見を述べ、皆さんの判断を仰ぎたい。その骨子は、2014年9月17日に行われた担当部局である県都市計画課に対しての第1回陳情以来、環境調査の結果の解釈に重大な誤りがあるので、訂正とアンケートの撤回を有志で要求していた事項であり、担当部局にとって寝耳に水の話ではないことをお断りしておく。陳情の最終段階では公開討論会の開催を要求したが、あっさり拒否された。なお、陳情は有志の代表とともに行ってきたが、本稿の内容に関する責任はすべて町田個人にあることをお断りしておく。
まず、陳情の際に用いた全4ページを旧詳細版として以下に掲げる。
これは、2014年2月に高知県土木部高知土木事務所と株式会社西日本科学技術研究所がまとめた高知県高知市はりまや町~桜井町報告書の概要をやや詳しく述べたものである。以下、旧詳細版とするが、その理由はインターネットで新堀川環境調査をキーワードとして検索し、高知県庁のホームページにある「はりまや町一宮線はりまや工区について」にアクセスして(2)の上から3番目にある詳細版をご覧いただくと、これが2016年5月20日に公開された詳細版の新バージョンと理解されるためです。お分かりのように、旧詳細版の3ページ目のみになっています。こんなのあり? 反則でしょう。某氏からの指摘で変更されていることに今日の今日まで気付いてなかったのは誠に迂闊でした。公的な調査結果の概要が入れ替わることは想定外。もっとも、公文書の日付が変わることもあるようですから、奇々怪々ですな。
なお、地理に不案内な方は高知市の地図を拡大し、市内中心部の菜園場(さえんば)町付近をご覧いただきたい。
調査項目は多岐にわたるが、環境が良くなったと根拠にした底生性微細藻類に関する図9と図10、まとめの表1の底生性微細藻類をご覧いただきたい。この項目以外のほとんどについては明瞭な傾向が認められなかったと自ら記述しているので、言及しても意味がない。もちろん、調査・分析をしたが明瞭な傾向が認められなかったとの結果は、もともと統計学的に耐えられる試料数ではないのだから当然であり、正直な記述であると思う。試料数を増やせば意味のあるデータとして残る可能性はあるのだが、お役所の言う金がない、が殺し文句である。
さて、本稿を理解していただくために以下の事柄を頭に入れていただきたい。また、途中で混乱した場合は見直していただきたい。
1 干潟は移動しやすい基質(礫=一般に石、砂、砂泥、泥)からなり、潮汐の影
響を受けて干出と水没を繰り返す地形である。
2 微細藻類とは肉眼で見えないサイズの単細胞の藻類であり、浮遊性微細藻類
(一般に植物性プランクトン)と底生性微細藻類におおまかに分けられる。
3 干潟の底生性微細藻類は主に砂泥粒子の表面で繁茂するので、それらの砂泥粒
子(基質)とともに移動する。アユなどが餌とする付着性の底生性微細藻類は
通常、基質とともに移動しない。
4 光合成(こうごうせい)をする生物によりそれらが含むクロロフィル(葉緑素)
が異なる。普通の陸上植物(コケ植物、シダ類を含む)はクロロフィルaとb
で藻類では緑藻がこれと同じ。藻類でも珪藻はクロロフィルaとcである。新
堀川の干潟の表層堆積物を分析した結果、クロロフィルa、b、cが検出され
ているので(図9。Chl.はクロロフィルの略)、表層堆積物中の微細藻類は緑藻
と珪藻であったことになる。
5 フェオフィチンとはクロロフィルが変化して光合成活性を失った物質であり、
死んだクロロフィルと考えてよい。
6 干潟の表層に堆積した微細藻類(底生性微細藻類と潮が引いた後に取り残され
た浮遊性微細藻類)は干潟の底生動物(ゴカイ、貝、カニ類など)の主要な餌
である。
7 底生動物に餌として取り込まれた藻類の細胞は消化作用を受けて細胞内のク
ロロフィルがフェオフィチンとなり、糞の一部として排出されて水中に流れ出
る。当然ながらフェオフィチンの粒子もまた水流で移動する。
8 駐車場下では微細藻類の光合成に十分な光がないことが予め確認されている。
前置きが長くなったが、旧詳細版の図9と図10を見ていただこう。駐車場下、公園前、撤去部の棒グラフの凸凹のパターンが驚くほど似ていることにすぐ気付くだろう。実はこれが本稿の結論なのだが、表層堆積物は水流でならされているため新堀川のどこで試料を採取しても似た数値になるのが当たり前である。それぞれの調査ごとの採取地点の数値の差が旧詳細版(報告書)で言う光条件(光環境)の差を反映しているという無茶苦茶な論理はそもそも成り立たない。
旧詳細版を検討しても報告書の実物を検討しても、底生性微細藻類が移動するとはどこにも書いていない。もちろん、報告書の作成者と、報告書をチェックする立場にある委員会の委員は干潟の生物、干潟の環境問題のプロだから、内輪ではそんな常識をわざわざ書く必要はないだろう。ところが報告書の18ページで、光合成に十分な光がない駐車場下で比較的高い値のクロロフィルが検出された要因の一つとして、浮遊性藻類の堆積を挙げている。奇妙なことに、旧詳細版ではこれに言及していない。もし言及すれば、公園前にも撤去部にも浮遊性藻類の堆積があることは誰にでもすぐに分かる。また、駐車場下で検出されたクロロフィルが移動してきた底生性微細藻類と浮遊性微細藻類に由来するとはっきり書いてしまえば、駐車場下も公園前も撤去部も微細藻類が同じように動いているのだから、それぞれのクロロフィルの数値の差を議論することが馬鹿らしいことは誰にも分かる。新堀川を流れる水は、引き潮時には堀川の方向に、満ち潮時には江の口側の方向に流れる。駐車場下では流れているが公園前と撤去部では流れていないとでも言うのだろうか?
新堀川を流れる水の速度は常に一定ではないし、底質の表面に凹凸があり、また、大きなゴミもあるためどこでも完全に同じ流速ではない。したがって、表層堆積物も完全に一様ではないのだから、そこから得られた試料中のクロロフィル量に差があっておかしくない。また、フェオフィチンも底生微細藻類と同様に動いており、駐車場下、撤去部、公園前ごとのそれぞれに固有の値はない。
ところが、旧詳細版(報告書)は素晴らしいアイデアを披露した。撤去部はかつて駐車場の下で十分な光がなかったが、天井部の撤去で光が当たるようになり、以前から光があった公園前と同等か同等に近いクロロフィル値となった、すなわち、光環境(光条件)が改善されたという「工事の成果」が得られた=撤去の工事は無駄ではなかった=今後も撤去により同様の成果が得られるだろう、ということを何が何でも言いたいのである。そのアイデアが「調査地点のクロロフィルaは光条件が値を左右しているものと考えられる」である。手抜きの難解な文章であるが、日射量に応じて光合成が起こるのは自明のことだから、言いたいことは「調査地点の光条件が調査地点のクロロフィル量を左右しているものと考えらえる」である。そうしないと、撤去部の光条件が良くなってクロロフィルが増えたという「想定された結論」が導けないのである。
いくら何でもこんな無茶な理屈が一般社会で通用するはずはない。撤去部と公園前の距離は30メートルもない。たったこれだけの距離の、しかもともにオープンな環境でクロロフィル量が異なったのは日射量が異なったからという出鱈目な説明を誰が納得するというのか。陳情の際、担当部局から「効果があったはず」と再三にわたる発言があった。効果はあったはずだが、微細藻類でそれを証明するのはほぼ不可能ということが分かっていない。すなわち、評価項目の設定ミスであり、光環境(光条件)が異なる3地点(光が以前から当たっている、以前は光がなかったが現在は当たっている、以前から光がない)で各1試料を採取したつもりなのだが、じつは表層堆積物が水流でならされた同一条件下で3試料を採取しただけというじつにハッピーな話なのである。
こんな陳腐な結論に待ったをかけるのが委員会の任務のはずである。ノーチェックだったのかチェックしたが内部で議論の結果意見が一致したのかは分からない。業者のいいなりだった可能性もまた否定し難い。委員は研究者・学識経験者であり、調査と報告書の作成に従事した業者も「科学的」調査を売りにしているはずである。白を黒、黒を白と言うのは科学ではない。たまたま旧詳細版がホームページにアップされていたので気付いたのだが、この有り様ではどんな調査結果も信用しろというのが無理である。よく耳にする「専門家の言うことを信用してはいけない」、まさにこれである。誰が調査項目を設定したのか、調査の途中で科学的な判定が困難であるということになぜ気付かなかったか、分かっていながら契約だからとずるずると調査を継続していた可能性もある。実に不思議である。生卵をかき混ぜ、同じ太さの棒を3本差し込んで引き上げた時、どの棒に黄身が多くついていたかについて屁理屈をならべたような報告書(詳細版)であっても業者と委員の諸氏は大丈夫である。慈悲深いお上は次のチャンスにもきちんと仕事を回してくれるだろう。被害者は納税者であり、また、今後選ばれる環境問題に詳しい協議会のメンバーである。
付録
1 現地に不案内な方々がいるだろう。構想では、新堀川の右岸に接する道路の幅を広げて新堀川の水面を広く覆ってしまう。これを桟橋方式というらしい。そうなると、新堀川におけるシオマネキ(高知県希少野生動植物)の生息地が失われ、コアマモが生育する場所も失われることになる。
2 駐車場の一部撤去はおそらく、上記1で失われる環境の代替え環境と想定されていると考えられる。しかし、そもそもシオマネキとトビハゼ(同様に高知県希少野生動植物)は公園前の対岸側(新堀川の右岸)に圧倒的に多く、左岸(公園前および撤去部側)には少ない。
3 2013年8月に、撤去部でコアマモの生育が確認されたと旧詳細版は喜んでいるが、コアマモの定着、生育、繁茂のチェックは当初の調査項目にない。「自然に生えてきてくれた」のである。もちろん、繁茂状況は私もチェックしたが、まだまだこれからという状況である。ついでながら、コアマモ群落は貴重な環境要素であるが、その群落の中にシオマネキの巣穴は形成されない。
4 報告書も旧詳細版もクロロフィルの活性が高ければクロロフィル値が高いとしている。活性は時間の概念を含み、反応速度である。また、クロロフィル値はある時間での瞬間的な値であり、時間の概念は含まず、生物量(バイオマス)と呼ばれる。干潟の表面では、底生性微細藻類が増殖し、浮遊性微細藻類が堆積すると同時に底生動物によりこれらの微細藻類が消費される。したがって、ある一定の期間内において微細藻類の光合成活性が高くてどんどん増殖したとしても、底生動物による摂餌行動も活発になって微細藻類が大量に消費されるため、ある時点での微細藻類の量(瞬間的な値。報告書と旧詳細版のクロロフィル量)がきわめて小さいことがよくある。これは干潟の生態系の特徴でもあるのだが、報告書作成担当者と委員がこのことを理解しているとは思えない。要するに、干潟の表層堆積物においてクロロフィルの活性が高いことはある時点でのクロロフィル量が多いことを必ずしも意味せず、むしろクロロフィル量が少ないというのが干潟の特徴である。
5 報告書と旧詳細版ではフェオフィチン率を藻類のクロロフィルの活性状態のもうひとつの指標として「売り」にしている。すでに指摘したように、フェオフィチンも移動し、試料採取地点に固有の値はないので、フェオフィチン率もまた今回の調査における地点間の比較には使えない。
なお、フェオフィチン率=(死んだクロロフィルの量)÷(死んだクロロフィルの量+生きているクロロフィルの量)×100としている。海水中にフェオフィチンとクロロフィルしかない状態で光を照射すると一定時間後にはクロロフィルの量が増加するので(フェオフィチンは死んだクロロフィルなので増加しない)この率が下がることになる。すでにお分かりのように、これは瞬間の値であり、クロロフィルの活性(時間の概念を含む)の指標にはならない。微細藻類の光合成活性を測定する場合、フェオフィチンは死んでいて増殖しないのだから、その存在を無視して微細藻類に一定時間光を照射し、光合成産物の量を測定して何ら問題がない。
6 微細藻類は水温が突然50℃に上昇しても、あるいは0℃に下降しても生理活性は変化するが死なない。すなわち、クロロフィルがすぐにフェオフィチンになるのではない。日射量が増加すると光合成が活発化し、微細藻類は増加するが、一方で水温の上昇にともない底生動物の摂餌活動が活発になるため、微細藻類が消費されると同時にフェオフィチンの量が増加する(この点も報告書作成者と委員が理解しているとは思えない)。したがって、野外のフェオフィチン量の変化(新堀川も該当する)はきわめて厄介な問題を含み、旧詳細版(報告書)にあるような単純なものではない。もちろん、報告書(旧詳細版)は移動するフェオフィチンの粒子を移動しないとみなした時点で誤りであることを念のため、再度記しておく。
7 2013年にクロロフィル量の大きな値が記録されているが、その説明がどこにもない。この値は試料採取日以前の高知市の天気で説明できる。例えば、試料採取の前日までの2週間で見てみると、2013年は晴れの日の確率が100%、最高気温の平均値が34.9℃、2012年は71%と31.8℃、2011年は64%と31.9℃であり、2013年の天気が抜群に良かったのが明らかである。瞬間的な値だけではクロロフィル量の説明はできないし、天気の影響が撤去部と公園前で異なるという馬鹿なケースはあり得ない。
8 旧詳細版(報告書)は冒頭に「干潟環境の創出過程の追跡を目的とした」と述べている。壮大なテーマである。残念ながら「干潟の環境」と「干潟環境」は違う概念である。後者は1996年のWWF Japan のサイエンス・レポート(通称、干潟のレッドデータブック)でcoastal wetlandsの訳語であると示されており、干潟、藻場、造礁サンゴ域、塩性湿地、マングローブなどを一括して指す術語である。レポートの内容は古くなったが、術語は古くなっていない.
9 新堀川のシオマネキの移植(拉致)にゴーサインを出した委員会の代表と今回の委員会の代表は同一人物である。新堀川のシオマネキは間違いなく深浦神社横に強制的に移植され、県は大はしゃぎでカラー写真入りのビラを作成して配布した。環境調査担当は言わずもがなである。成功! 成功! と宣伝したが、当地のシオマネキはとっくに姿を消しており、移植は明らかに失敗である。
2016年10月18日
付記1
筆者の不注意により「江ノ口川」を「江の口川」としてしまった。正しくは「江ノ口川」なので、ここにお詫びして訂正します。なお、付録2に示した2013年8月のコアマモの確認は調査項目に予定されておらず、業務に該当しないのだから報告書(詳細版)に掲載することが不自然であることは誰もが理解できよう。 2016年10月24日
付記2
やや難しいという感想が町田宛に寄せられたので、改めて補足します。撤去部に再度、天井を張った場合、そこの表層堆積物に含まれるクロロフィルの量はどうなるでしょうか? 答えは小学生でも分かると思います。新たに天井を張った時のクロロフィル量は公園前と駐車場下とそれぞれほぼ同じです。理由はクロロフィルが動いているからです。
撤去部の光条件が良くなって光合成が活性化してクロロフィル量が公園前とほぼ同等になった、撤去の効果があった、というのは大嘘です。最初の時点で駐車場下において無視できないほどの量のクロロフィルが定量された、すなわち、クロロフィルが動いている事を自ら検証しておきながら、なぜこんな無茶苦茶な結論を導いたのか私にはさっぱり理解できません。
委員会が調査項目を審議・決定したとあります(実際は業者と事務局が提案したのでしょうが)。すなわち、底生微細藻類を調査項目に設定した委員会のミスは明らかです。まさか委員会を救うための方便ではないでしょうが、委員会にチェック機能が無かったことを駄目押ししたようなものです。新たに設置される協議会の面々にこのままの報告書を提供し、審議の材料とするなら、目玉である光条件に関する結論が正しいかどうかをテストの問題として提出するようなもので、またまた新たな時間と金の無駄遣いになるでしょう。しっかりと予習していただきたいものです。
2016年11月6日