7月22日、新宿区戸山サンライズで開かれた人骨の会(軍医学校跡地から発見された人骨問題を究明する会)http://www.geocities.co.jp/Technopolis/9073/が主催した「人骨発見18周年集会」の記念講演は一橋大学吉田裕教授の「医学史から見た戦争と軍隊」でした。吉田教授は戦場における戦死者の死因の多くが餓死であり、拒食症や自傷などの神経症が多発していたことをあきらかにしました。
吉田教授によると、これまでの軍事史学が作戦や戦闘に関する研究に偏しており、戦場の実態に関しては資料も少なく研究の対象にされてこなかったが、戦後生まれの研究者が多くなり、新たな視点から軍事史が研究されだしたという。
第二次大戦下で戦場から還送されてきた戦病者のうち精神疾患は1942年には約1割(9.89%)に達していた。食料が欠乏していないのに栄養失調になる兵隊が続出し、調べてみたら拒食症になっていたこと。左手を負傷した兵を調べると煙硝反応があり、自分で腕を撃ち抜く自傷であったことなどが明らかにされた。さらに戦闘機パイロットには出撃前に覚せい剤が使用されていたことやノモンハン事件を境に傷病兵が処分されるようになったことなど明らかにされた。
戦争神経症に関する研究では早尾乕雄軍医の「戦場神経症並ニ犯罪ニ就テ」があり、戦場における異常心理を研究したことで注目され、NHK特集「日中戦争-兵士は戦場で何を見たのか-」で取り上げられています。
私個人としては吉田教授が藤原彰教授の「南京の日本軍隊」のなかで第二次上海事変で出征した兵士は年齢が高い召集兵で優秀な国民党軍に打ちのめされたので大本営は慌てて若い召集兵を送り出したという話を紹介したことに興味を惹きました。それは私の父が30才で召集され、正にその兵士のひとりだったのです。
参加者は閉会後、隣接する国立感染症研究所内にある「人骨保管施設」と陸軍防疫研究所跡の人骨埋蔵地を見学しました。
閉会の挨拶をする「人骨の会」代表の神奈川大学教授常石敬一さん