今日の午後、インバル&大阪フィルのリハーサルを見学させていただいた。同オーケストラの合唱指揮者という役得である。
演目は、マーラー「5番」とモーツァルトの小ト短調、すなわち「25番」というど真ん中の直球勝負だ。
インバルのマーラーは、「8番」「9番」を都響との実演で聴いており、特に後者の感動は忘れがたいものがあるが、大阪フィルを振ったらどんな音になるのか? というのが最大の関心事。この想いわたしだけのものではなかろう。
そして、今日、大阪フィルハーモニー会館に鳴り響いたのは、古の響き。そう、朝比奈先生時代の大フィルを想起させる音だったのである。もちろん、インバルと朝比奈先生では、テンポや音楽の組み立て方はまったく異なるのだけれど、ズシンと腹の底に響く重厚な音は、大フィルのDNAの為せる業、ほかのオーケストラからは聴くことのできない音なのである。団員の多くが入れ替わり、朝比奈時代を知らない割合が高くなっているというのに、オーケストラ固有の音が受け継がれていることはまこと摩訶不思議。
それにしても、どこまでも格調高く、本物感に貫かれたマーラーだ。都響との実演や録音に触れたことのある方にも、大阪フィルならではの新鮮な感動の得られる演奏となることは請け合いである。
モーツァルトの小ト短調にも唸った。
80歳という高齢を思わせない小気味よいテンポと強靱なエネルギー。拍と拍の間に無限の行間があり、駆け抜けるフレーズに陰影があり、そして、炎のような情熱の嵐が吹き荒れる。聴きながらワルターの録音を思い出したほど、というから相当にすばらしいモーツァルトである。
当ブログを読んで、大阪フィルの関係者が誇大な宣伝をしている、と思ったら大間違い。素直に受け止めた方が得だ。
もし、今からでも都合のつく方がいらしたなら、インバルに関心を抱きマーラーとモーツァルトを愛するなら27日(火)、28日(水)の19時、フェスティバルホールに駆けつけることだ。
追記
インバルにサインをして貰うために厳選したフランクフルト放送響とのレコードは二種。
ひとつは、この度の演目であるマーラー「5番」、もう一点は、インバルの最大の業績でもあるブルックナーの初稿録音の三点セット。これ以外の組み合わせなど考えられるだろうか?