福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

玉置浩二 ~ KOJI TAMAKI PREMIUM SYMPHONIC CONCERT を聴く

2016-09-22 23:38:47 | コーラス、オーケストラ

KOJI TAMAKI PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 

栁澤寿男(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団

2016年9月22日(祝・木) 17:00開演

みなとみらいホール大ホール

噂の玉置浩二 with オーケストラを聴いた。

玉置浩二の歌声も歌心も天性のもので、それを生で体験できたのは嬉しい体験であった。ただ、期待を上回る感動であったか? と問われると、そこまでには至らなかった。

隣席のご婦人が、開演前からゲホゲホと激しく咳き込んでいたことで精神の集中を乱されたのも一因ではあるが、もっと根本的な問題としてはPAを通したときの玉置浩二の声だ。みなとみらいホールは、クラシック専用のホールのため、生の声でも響くように音響設計されている。そこに、リバーブの掛かった声がスピーカーから流れるとエコー過多となってしまうのだ。もともと美声なのだからリバーブなし、くらいの思い切った判断があっても良かったと思う。実際、マイク無しで歌われたアンコール2曲目の「夏の終わりのハーモニー」が全曲中でもっとも感動的だったのは、電気的な増幅や処理を一切施されない「生の声」だったからだと確信する。

そして、もうひとつの原因は、指揮者の存在。指揮者・柳澤寿男の振り方がボクの趣味にまったく合わず、それが絶えず視界に飛び込んでくるので落ち着かないのである。具体的には、地に足が着かず腰が浮き、肩甲骨が固定されたまま腕だけ振り回し、さらには打点ばかりが強調されて横に流れない棒の振り方によって、オケも鳴らず、歌が溢れてこないのだ。

玉置浩二が天才であり、狂気と正気の紙一重をゆく芸術家だとしたら、柳沢の棒から生まれる音楽はあまりに普通であり、その才能のギャップが見えすぎてしまう。東京フィルも、どれほど主力メンバーが乗っていたのか不明だが、普段聴かせてくれるより弦の音が薄かったような気がする。

「この指揮者でベートーヴェンだけは聴きたくないな」と思っていたところ、なんとアンコール1曲目でそれを聴かされてしまったのには苦笑してしまった。それは交響曲第6番ヘ長調「田園」である。「田園交響曲」の第1楽章がしばらく奏でられたところで、「生きていくんだ それでいいんだ」のフレーズが挟み込まれ、徐々に増幅し、遂にはすっかり玉置浩二の「田園」となる、という趣向は粋であるが、冒頭のベートーヴェンのオリジナルの部分が、これほど情けなく響くのを聴くのははじめてであった。ふだん、クラシックを聴かない客ばかりだろうから、と舐めていたわけではあるまいが・・・。とはいえ、ヴォーカルは絶好調で、客も沸いたしボクも愉しんだ。本編がスロー・バラードばかりだったので、アップテンポの曲で心が解放される感があった。オーケストラが乗りの良い、テンポの速い曲を出来ないわけではないのだから、本編にももっと多彩な曲想の置いてもよいのでは? と思った次第。

ところで、クラシック演奏会のフライングブラヴォーも困りものだが、本日のコンサートの「ボキャ貧掛け声」も考えものだ。隙をみては、「愛してる」「ありがとう」の2つの単語だけを大声で繰り返す男が二階席中央辺りに居たけど、時間の経過とともに、他に日本語を知らないのか? と苛立ちが募る(笑)。極め付きは、上にも述べたアンコール2曲目「夏の終わりのハーモニー」ラストで、ピアニシモからの美しい沈黙に聴衆が固唾を呑んでいるときの、間の抜けた「ありがとう」の叫び声。殺意を覚えたのはワタシだけではあるまい。


宇野功芳先生お別れの会

2016-09-21 16:59:15 | コーラス、オーケストラ


本日午後2時より、飯田橋のホテルグランパレスにて、宇野功芳先生のお別れの回が催されました。

穏やかで良いお写真ですね。

かつて語り合ったり、コーラスをした仲間たちとの再会もあり、さながら同窓会のような趣もありました。これも宇野先生のお導きでしょう。心より感謝したいと思います。



跡見学園大学の教え子2人にも久しぶりの対面。ミルテの花女声合唱団リサイタルに参加してくれた2人でもあります。宇野先生とともに過ごした合宿やコンサートなど、とても懐かしく思い出されました。

本当なら二次会に繰り出し、宇野先生の思い出話などに耽りたいところですが、長岡でのモツレク稽古が待っているため、お開きとともに退散しました。後ろ髪引かれる思いでありました。





追記
このような美しい会を企画、運営してくださった音楽之友社さまに、心より感謝致します。有り難うございました。

改めて残念

2016-09-21 01:30:23 | コーラス、オーケストラ
台風の去った夜中。
ひとりクラシック音楽館の録画を観る。

井上先生の指揮もインタビューももちろん素晴らしかったし、オーケストラ、コーラスも良いパフォーマンスだったと思う。

ただやはり・・。
話には聞いていたが、合唱指揮者であるボクの存在が無に等しいという扱い。完全無視といういじめにも似た合唱指揮者の抹殺。それをこの目で確認するのは辛いものがあった。本来はソリストと同等(否、それ以上)にこの演奏に貢献したという自負があるだけに無念でならない。

志ん生の動く「替り目」に感動 ~ 映画「銀座カンカン娘」より

2016-09-20 23:19:57 | コーラス、オーケストラ

鹿児島の父より電話が入ったので、何かと思ったら、

「テレビで高峯秀子と笠置シヅ子の映画『銀座カンカン娘』を観ていたら志ん生が出てきた。録画したのでダビングして送ろうか?」

と言う。

父は、わたしが、五代目古今亭志ん生の録音をよく聴いていたことを憶えていたのだ。

(志ん生を聞き始めたのは、宇野功芳先生のご著書「名曲とともに」に落語のコーナーがあったことがきっかけ)

そんな他愛のない用件で、80を過ぎた親爺が50を過ぎた息子に電話をかける、というのも滑稽だが、なんとも有り難いことである。

わたしはわたしで、早く動く志ん生が観たくなって、動画を検索したところ、某サイトにて発見。

十八番の「替り目」を演じている場面が切り取られていた。

この映画、1949年(昭和24年)封切りというから戦後4年目。

志ん生が命からがら満州から引き上げてから僅か2年後、59歳の姿が拝めるということになる。

後年に比べずいぶん痩せているが、話す声や仕草だけで可笑しいという芸は流石。

ありがたや、ありがたや。

ちなみに、志ん生が脳溢血で倒れたのはこの12年後、1961年(昭和36年)の巨人軍の優勝祝賀会にてのこと。

志ん生の噺に選手たちがまったく耳を傾けず、飲んで騒いでいるという状況の中、頭に血が上ってしまい、倒れてしまったのだ。

このエピソードを結城昌治の「志ん生一代」で読んで知ったのは音大生時代であったが、そのとき、わが巨人嫌いに益々拍車のかかったのは述べるまでもない。

まあ、本当をいうと、選手たちに罪ははない。

落語に興味もない人々の集う宴席に、気を利かせたつもりで、志ん生を呼んだ贔屓の人物がよろしくなかったのだろう。

 

 

   

 


団員とともに歩む

2016-09-19 10:33:12 | コーラス、オーケストラ


お前はそんなにテレビに映りたかったのか?

昨夜のわが憤りをみて、そう思われた方もあったかもしれない。もちろん、それは個人的に残念なことに違いないけれど、そればかりではない。

ミサ曲に於ける合唱団は、ソリストと対等であり、同等の扱いを受けるべきなのだ。まして、大阪フィル500回定期を記念する放映であれば、朝比奈先生によって創設された40年の歴史を誇る合唱団にも光をあてる配慮が欲しかった。その売り込みを怠ったことが大失態なのである。

大阪フィルの演奏会が、日曜日のゴールデンタイムに、全国区のテレビに放映される機会、次はいつだろう(600回定期)? まして、合唱付きのプログラムで。

福島章恭がシェフに就任し、大阪フィル合唱団に、何やら新しい息吹が感じられる、大阪フィル合唱団ここにあり、というアピールを全国的におこなう機会の奪われたことが、とても悔やまれるのだ。

とはいえ、過ぎたことは仕方ない。
これから、その歌声の圧倒的な力で、全国に自ずと名の轟く存在となるよう、団員とともに歩んでゆくほかない。

さあ、今日も「海道東征」の4時間レッスン、張り切っていこう!

マエストロ井上道義より

2016-09-18 22:34:30 | コンサート


クラシック音楽館は、反省会のため、観られていませんが、井上道義先生より次のメッセージが届いたところをみると、悪い出来ではなかったようです。

録画を観るのが楽しみ。

追伸
放映を観た人によると、カーテンコールでのボクの登場はカットされていたとか。合唱指揮者への評価の低さの表れだ。番組制作者にその程度にしか認識されていない。合唱指揮は下請けでもないし、縁の下の力持ちではない。
合唱指揮者の地位の向上、それもこれからの闘いだ。
とともに、オーケストラ事務局のプロデュース力も問われるところ。こんど会ったら文句言うぞ。

まさかの空中分解

2016-09-18 19:18:53 | コーラス、オーケストラ
本日の合唱コンクール。
三曲中、二曲目までは、(KIBIの実力としては)神懸かり的なパフォーマンスでしたが、三曲目半ばでまさかの大崩壊。空中分解と呼べるほどのトラブルでした。一同意気消沈。苦労を重ねてきた団員にはショックだったことでしょう。

しかし、振り返れば、その可能性はありました。不安の芽を摘めなかった甘さが悔やまれます。
つまり、ボクの指導力不足と判断ミスが原因。本当に団員に申し訳ない。この歳になってもまだまだ勉強することはある。出直して頑張ります。

さて、これから打ち上げ=慰労会のため、クラシック音楽館=大阪フィル500回定期の放映を観るのは帰宅するまでのお預け。とっても気になるけど。

コンクールの日、原点に立ち返る

2016-09-18 10:08:50 | コーラス、オーケストラ


いよいよです。
今宵、大阪フィル500回定期演奏会の放映も楽しみですが、その前に合唱コンクール中国大会に於ける女声合唱団 KIBIのステージがあります。

会場は地元、岡山シンフォニーホール。

合唱指揮の仕事をはじめて四半世紀以上、コンクールというものに背を向けて生きてきたわたしですが、一度は真剣に向き合おうとのことで、女声合唱団 KIBIとともに挑戦をはじめて二年目。昨年はコテンパンの結果に、コンクールに対する認識と取り組みの甘さを思い知らされました。

課題曲+自由曲の9分未満という極めて限定された時間にすべてを賭けるという音楽づくりは、通常のコンサート、90分から100分を構成し仕上げる、というのとは全く別の作業が必要となり、大いに戸惑ったものですが、こうした新しい試みというのは、良い刺激となります。

顕微鏡で眺めるようにスコアに向かい、完璧を目指していちいち微調整する、という作業が、たとえば、大阪フィル合唱団でブルックナーのミサ曲のレッスンをするときにも生かされていたと思うのです。まことに得難く、有り難い機会でありました。

女声合唱団 KIBIもまた、昨年、そして、今夏の岡山県大会での苦しみや挫折を経て、大きく成長しました。まだまだ、コンクール常連団体のような力はありませんが、本日は点数にこだわらず、歌う歓びを見つめ直すステージにして欲しいと思います。



さて、新兵器の衣類スチーマーにて、スーツとシャツの皺のばしも完了。こんなもの持ち歩くから、読むか読まないか分からない本を絶えず3~4冊抱え、ただでさえ重たい鞄が益々重たくなるのですが(笑)。

あとは、心静かにリハーサルの時間を待つのみです。

録画予約完了! 大阪フィル500回定期 Eテレクラシック音楽館

2016-09-16 14:05:58 | コーラス、オーケストラ


放映当日には岡山に滞在予定のため、いまのうちに忘れず予約。

18日(日)21:00よりNHK Eテレ「クラシック音楽」は、大阪フィルハーモニー交響楽団の第500回定期演奏会の模様を全曲放映。

前半は、我が大阪フィルハーモニー合唱団も参加してのバカロフ「ミサ・タンゴ」。後半はマエストロ道義渾身のベートーヴェン「エロイカ」。ほかに、井上道義先生へのインタビューもあるとのことで、これはもう見逃せません。

合唱団の歌声がマイクにどう捉えられているか? などの心配もありますが、概ね大丈夫でしょう。

番組表に名前は載せて貰えておりませんが、大阪フィル合唱団の指揮者に正式就任してちょうど1年目のパフォーマンス。達成しつつあること、まだまだのところが混在しておりますが、音楽的な感動はお伝えできるものと、確信しております。

多くの方にご覧頂ければ幸いです。

インバル&都響 バルトークのオケコンを聴く

2016-09-16 00:03:59 | コンサート

今宵は、インバル指揮東京都交響楽団のA定期を聴いた。

第814回 定期演奏会Aシリーズ 
インバル80歳記念/都響デビュー25周年記念

指揮/エリアフ・インバル
ピアノ/アンナ・ヴィニツカヤ

グリンカ:歌劇『ルスランとリュドミラ』序曲
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲 第2番 ト短調 op.16
バルトーク:管弦楽のための協奏曲 Sz.116

元々は、今日がパーヴォ・ヤルヴィ&N響のマーラー3番の日だと勘違いしていて、数日前に手元のチケットを見て間違いに気付いた次第。
サントリーホールでは同じコンビによるムソルグスキー(ラヴェル編曲)「展覧会の絵」や武満徹作品のコンサートがあったのだが、チケットが完売していたこともあり、東京文化会館のインバル&都響のコンサートに向かうことにした。
都響を選んだもうひとつの理由は、今月の27日(火)、28日(水)に行われる、インバル&大阪フィルのコンサートが聴けないこと。富士、長岡のコーラス指導と重なって聴けないことの埋め合わせだ。
大阪フィル定期ではせっかく、モーツァルトの小ト短調とマーラー「5番」という魅惑のプログラムでありながら、その場に居合わせられないのはまことに残念。
今宵のメインであるバルトークのオケコンについては、ボクの感性にはブルックナーやブラームスのようには響かないところがあって、正直、大感激というわけにはいかなかったものの、80歳とは思えないインバルのエネルギーとオーケストラの能力を引き出す技を堪能できたのはよかった。インバルには、ぜひ、大阪フィルとのご縁を深めて頂き、いずれ、マーラー「復活」「千人」、ブルックナー「テ・デウム」などで共演させて頂きたいものだ、否、必ずその日が来ると確信しつつ会場を後にした。
というわけで、関西方面の音楽愛好家の方には、是非ともフェスティバルホールに足を運んで頂き、ボクの分までインバルのモーツァルト&マーラーを堪能して頂きたい。

http://www.osaka-phil.com/schedule/detail.php?d=20160927

大阪フィルハーモニー交響楽団第502回定期演奏会

9月27日(火)、28日(水)

19:00開演(18:00開場)


[拡大]

フェスティバルホール

<指揮>エリアフ・インバル
<曲目>
モーツァルト/交響曲第25番 ト短調 K.183
マーラー/交響曲第5番 嬰ハ短調

<料金>(全席指定・税込)
A席:6,000円(4,800円)
B席:5,000円(4,000円)
C席:4,000円(3,200円)
学生席(3階席):1,000円(割引なし)
BOX席:7,000円(6,000円)

※未就学のお子さまのご入場はお断りさせていただきます。
※連続券の販売は大阪フィル・チケットセンターのみの取扱いとなります。
※(  )内の料金は大阪フィル・会員価格でございます。

・チケット販売所
大阪フィル・チケットセンター 06-6656-4890
フェスティバルホール チケットセンター 06-6231-2221
チケットぴあ 0570-02-9999【Pコード:302-165】
イープラス

・お問合せ
大阪フィル・チケットセンター 06-6656-4890
(営業時間:平日10:00~18:00 土曜10:00~13:00 日・祝・年末年始は休業)

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