明鏡   

鏡のごとく

左右の腕時計

2014-02-04 21:31:49 | 
左右の腕時計をしている男がおりました。
ひとつは太陽の力で動き、もうひとつはねじ巻きで動きました。
太陽は日が差さないと動かず、ねじ巻きはまき忘れたら動かないのでした。
一日の終りに
男は右腕の時計と左腕の時計の時間差が
三分だということに気づきました。
いつもきまって太陽が三分だけ遅れて一日を終えるのです。
きのう足並みをそろえた時計の針は
きょうには三分だけ遅れてやってくるのです。
ひとつの歌を終わらせるまでの隙間をつくるように
一日三分だけ遅れてやってくるのです。
あなたの人生の終わりを三分だけ先延ばしにしているかのように。

わたしには一つも時計がありません。
ただ時間だけが通りすぎてゆくばかりなのです。