空を見上げて、ふぅっと息を吐く。
この季節の空の青さが好きだ。
そう思い始めたのは最近のことだ。
幼少の頃、あるひとに空の写真ばかりを見せられた。
記憶が正確ならば、そのあるひとは母の友人だった。
あるひとが亡くなったことを聞かされた。
何を思ったのか、そのひとの住所を訪ねた。
けれど、対応に出てくれた女性はそっけなく、
それ以上留まることはできなかった。
落胆して歩いていると背後から声をかけられた。
辺りを見回すと、わたし以外に誰もいなかったので振り返る。
「もしかして、ササクラカコさんですか?」
わたしはきょとんとしてしまったのだ。
「あっ、勘違いでしたか、すみません」
追いかけてきたのだろう。
その男性が落胆しているのがわかった。
「初めまして、笹倉華子と申します」
男性の反応は驚きに変わった。
★原稿用紙一枚の物語★