恋

年金を頂く　ほどの年齢になると　
心のほうも　硬く　柔軟性がなくなってきた
ように思います。

美味しいものを　食べても　美しいものを　見ても
喜びはありますが　感動は　少ないようです。
これまで生きてきて　色々な喜びや　悲しみ　怒り
に　比べてしまうからでしょうか ?

近頃では　めったに　胸がときめくことなど　ありません。
いけめんの男性に　低音で声　掛けられても
五十肩で　振り向くことも　無理ですし　道端に　
福沢諭吉さんから　何枚も手招きされても　足腰に自信の
ない私には　お近ずきになることも　無理でしょう。

ても　趣味で始めた　パッチワークで出会った　古布は
違ったのです。
いっぺんで　胸がときめき　恋してしまったのです。

娘の　結婚が決まり　まず布団を準備した母親。
機織機で　夜なべに　娘の幸せを祈りつつ　棹を
動かした母。
そんな　古布は　色あせて藍の色を　いっそう味のある
色にしています。防虫効果もあるという　ジャパンブルーです。

そんな　布たちを眺めていると　心安らぎ　胸がときめきます。
金さえ出せば　なんでも買うことが出来る　といわせる
世の中に　なってしまったけれど　一昔前の日本は　何もかも
自分のことは　自分でしていたのです。

古い布団生地の　染みは　嫁入り先で姑にいじめられ
流した　お嫁さんの涙かもしれないし　やさしく抱きしめてくれた
婿殿に　感謝してながした涙かもーーと
私が　お気に入りの古布を手に　友人に言えば　笑って見ています。

もうすぐ　近くの綾町で　大きな骨董市が開かれます。
古布がたくさんやってきます。
臍繰りもって　友達と　出かけるつもりです。
恋人に　久しぶりに会えるような　そんな胸のときめきを
感じています。