超人日記・作文

俳句を中心に、短歌や随筆も登場します。

#俳句・川柳ブログ 

内面短歌・金木犀

2024-10-21 00:03:19 | 自作短歌
青葉木兎棚で挨拶薄ら寒街角はもう冬隣りかな
地虫鳴く夜半に思うあれやこれ命運なのか今の居場所は
スパゲティ唐揚げ入りの秋弁当買いてスマホのつぶやきを見る

切願のお礼参りの秋薬師諸事祈願して鐘の音深く
町の寺本堂横で運動会秋の命が躍り飛び跳ね
芳しき秋を運びて金木犀忘れられないルーブルのシャツ

花の径原色の夢百日草西日背にして逆光の笑み
手渡したフィルムに誰か踊る秋戦前の冴え映る前衛
秋巡る季節に何処で食事会次々に皿平らげる顔

中庭の素足の動き目の前にそよぐ白蝶草の揺らめき
前面にたまには出でて大人舞秋の例祭駆ける一幕
芸術の秋に向かいて列車窓時計を見つつ揺れに誘われ



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内面短歌・回顧展

2024-10-20 00:03:14 | 自作短歌
共に行く秋の道草雲高し宙舞う紙片行く宛てもなく
合唱歌燃やし始める秋の町悲しみさえも何も残らず
指一つ触れることなし今の秋命あるうち血潮高鳴る

曇天に秋雨の降る薄ら寒胸に飾らむ銀のブローチ
本の秋世人の群れの丈高し一行の詩を書いて終わらむ
ボンジュルネ秋の珈琲暖かしパリのパン屋の渡すつり銭

かしこまるマスター淹れる秋焙煎懐中時計取りに帰らむ
秋の棚今は眠れる道化像ピントのボケた父の映写機
中庭の白装束で秋を踏む一つひとつの所作のひらめき

秋の胸英雄駆ける秘仙境画家の絵筆が探る原郷
シベリウス秋の山荘止まる筆交響詩ならまだ行けるはず
秋の午後帽子屋さんのお茶の会意味の分からぬ森を脱け出て


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内面短歌・脳の密林

2024-10-19 00:03:04 | 自作短歌
留守番は肉とお稲荷秋の宵どんな秘密を夢に見ようか
幼年の悲しき玩具秋寒し小さな巨人ミクロマンかな
脳細胞密林化して秋の筆哲学的な茂みに入る

狐面被りて消える秋祭り神隠しなら天狗の仕業
寝惚け出て朝目が覚める台所菓子のお陰で甘い夢見る
後半生日々を彩る虫の声先の行方を明日は知らない

割りてみて薩摩芋ぱん黄金色半解剖のモナリザの秋
衣料品ネットスーパー明日届く店では買えぬ洋服の奥
お目ん玉団子を配る秋薬師近くの歯科が手招きをする

前日の予報で中止秋登山いつものように食べてまた寝る
それぞれに刻を重ねて機が熟すそろそろ山が動き出す頃
また会えば稲妻走る秋深し話せばわかる日々の脈動
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内面短歌・エデンの東

2024-09-09 15:27:17 | 自作短歌
仕事場が閉鎖してから約二年合わせて書いた本は八冊

勤め人時代に四冊と浪人時代に四冊に達す

飛ぶように売れる本とは程遠く八冊辺りがいい所かも

筆を折る後半生を思う時生き甲斐のないヤドカリの浜

遠方に白蝶草を夢見ては空を見上げるエデンの東

音楽や学芸、芸術に深く親しみ風に吹かれる

天女草その面影に恥じぬよう気を取り直しまた夢を追う

目も振らず走り続けて真っ白な灰の心地を抜ける道程




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内面短歌・鉱石標本

2024-08-08 19:32:00 | 自作短歌
暦では秋に入るが真夏日に町を歩いて蝉の只中

長いこと音信不通の待ち人と連絡が取れ胸は満ち潮

毎日は書けないけれど原稿を数枚書いて一歩進める

作文がいつ世に出るか分らない情報不足は身も細る程

いつまでも貫禄のある身にならぬ吾は鉱石標本を買う

年齢と共に手放すこと多く身軽になって前を向くだけ

一行を生きた詩情と見定めて書き進めても砂の一粒

存在が割り当てて来る命運を引き受けて聞く瀧の轟音

野の花を目にするたびに瞳には命の咲かす永遠の今



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