22日に起きた地震は,直下型の地震だったために,多くの建物が倒壊し,たくさんの犠牲者が出たようです。今のところ死者が75名,行方不明者が約300人と言われています。そのうち,日本人の行方不明者は,24名いるとのことです。語学研修や留学で滞在している若い学生の方が中心ということで,一日も早い安否の確認と無事を祈りたいと思います。異国の地に送りだした家族の方にとっては,そばで救出を見守ることも出来ず,ひたすら無事を祈る気持ちでいっぱいなのではないかと思います。
新聞の写真に,ビルの倒壊現場で母親の生存が絶望的だと言われて泣き崩れる二人の子どもとその二人を両腕で抱きながら下を向いて慟哭する父親の写真がありました。
余りにも突然のことで,余りにも悲しいことで,余りにも信じられないことだったのでしょう。
母親がいるはずの倒壊した建物を見ながら,この親子は何と辛い時を生きているのだろうと思いました。母親との大切でかけがえのない絆を一瞬にして破壊してしまった地震。涙する親子の姿に,これまで起きた地震の被害者として亡くなった多くの方々のことや遺族の方の悲しみを重ねて思いました。
天声人語に,去年亡くなった歌人の竹山広さんの,阪神大震災を詠んだ一首が紹介されていました。
居合はせし居合はせざりしことつひに天運にして居合はせし人よ
そのときそこに「居合わせた人」よ……。
この鎮魂の調べは,長崎での被爆体験が根にあるということです。そこに居合わせたが故に原爆で亡くなり,地震で亡くなった人。そこに居合わせないことで生きている人。人間の生死は天運によって定められているのかもしれません。
しかしそうであったとしても,今その生死と向かい合っている人々にとっては,いち早く救いの手が届くこと,さらには無事であることが,心からの願いなのではないかと思います。
中東では,民主化運動の波が広がり,リビアやバーレーンでは多くの市民が犠牲となっています。こちらでは,人間の持つ銃器が市民の命を奪っています。その銃器を使うか使わないかは人間の判断ででき,人間の手で命を守ることもできます。天運ではありませんので,賢明な人間の判断による,平和的な民主化への道が切り開かれることを強く願います。
世界のどこでも,命あるものが大切にされる人間としての日々の営みでありたいものです。
犠牲になった多くの方の安らかなるご冥福を心より祈ります。