自分が初めて、童謡「森のくまさん」を知ったのは、小学校2年生の遠足で、バスのガイドさんから教えてもらった時でした。その時は、何だか楽しくて面白い歌だなぁって感じただけでしたが、それが音楽の教科書に載って、あらためて歌の全容を見た時、確か、小学6年か中学1年くらいの時でしたっけ、その不条理さに愕然としたものでした。
まず1番で「くまさんに出会った」のは良いとして、2番でくまさんから「お逃げなさい」と促されるところ。この意味するところは「自分は猛獣のクマなので、ヒョンなことから貴方のことを襲って食べてしまうかもしれないから、危ないからお逃げなさい」ということ。ここが第1の不条理。
それでも12歳の私は、いろいろ考えた挙句、「これは超人ハルクが、ヒロインに対して、変身する前に『オレの近くに寄るな。危険だから遠くへ逃げろ』と警告するのと同じなんだ、つまり、自分自身の中で2つの人格が葛藤しているところを表現しているのだ!」と納得して、次へ進むと、4番で、「ところが、くまさんは、あとからついてくる」だと‼
そうか、ついに超人ハルクに変身してしまったのだ! あるいは、ジキル博士が隠れて、ハイド氏が表に出てきてしまったのだ! 大変なことになってしまった。危ない、と思ったら「お嬢さん、お待ちなさい。ちょっと落とし物。白い貝殻の小さなイヤリング」だと! まだ、超人ハルクやハイド氏には変身する前だったのだ。驚かせないでほしい。
すると、呑気なお嬢さんは「あら、くまさん。ありがとう。お礼に歌いましょう。ラララ・・」。歌はここで終わるのだが、12歳の私は、お嬢さんが歌を歌っている間に、くまさんが野生に還って、お嬢さんを襲って食べてしまうのではないかと心配で、心配で、仕方ありませんでした。