今年の11月には、中国共産党大会が開かれ、習近平体制が期限の10年を超えて、第3期目に入ることになります。
それにしても、いわゆる独裁主義体制で、非民主的な監視社会の中国がなぜ、崩壊しないどころか、むしろ安定度を増しているように見えるのでしょうか? このあたりの原因を、中国政治体制研究の第一人者である慶應義塾大学の加茂具樹教授(総合政策学部 学部長)は、以下のように分析されています。
まず、独裁者が、中国のような権威主義体制の中で、その地位を維持するためには、以下の2つのゲームに勝ち続けなければならないとのこと。2つのゲームとは、
①体制内コントロール(独裁者とエリート、すなわち共産党幹部たちとの権力共有のゲーム)
②体制外コントロール(独裁者が一般市民をどう監視監督するか、という社会統制ゲーム)
特に独裁者が、その地位から転げ落ちるケースは、圧倒的に①の体制内の権力共有ゲームに敗れた時。ちなみに、②の体制外コントロール=社会統制に失敗して権力の座から転げ落ちるケースは、50年に1回とか100年に1回とかで、頻度は小さいそうです。
中国の場合、①の共産党幹部たちとの権力共有の仕組みが、非常に高度化・緻密化して出来上がっており、共産党幹部たちから見て、独裁者が自分たちを勝手に粛清したりせず、頑張りさえすれば将来の登用を保証してくれると思えるような、そんな仕組みを整えているとのこと。
また、ここ20年、中国は高度成長時代を続けており、一般市民にとっても、今日よりも明日の豊かさを実感できる時代が続いているため、②の社会統制がやりやすい環境であったことも、この体制が安定した原因だったようです。
加茂教授の理論通りだとすると、上記①の体制内コントロールは、習近平総書記がこの10年でさらに高度化を実現しているため、次の5年も揺るがない気がいたします。この観点からは、習近平総書記の権力基盤は万全と言えます。
しかし、問題は②の社会統制の方。中国の高度成長時代も終わりに近づいており、一般市民から見て、今日よりも明日の豊かさを感じられる時代が終わりつつあります。そうなると、共産党幹部たちによる豊かさの独占に対して、不平不満が溜まっていくリスクは大きくなるはず。
先般、習近平体制の異例の3期目突入の正当性として「台湾統一」を掲げるのでは? というお話を致しましたが、もしそうだとすると、「台湾統一の遅延」と「高度成長時代の終焉」の2つの理由で、3期目途中での独裁体制崩壊という事態があり得るかもしれません。
次の5年は、中国起点のアジア動乱の時代が始まる予感がいたします。