中国共産党の第20回党大会が10月16日にスタートいたしました。
これに先立って、中国政治の専門家である慶應義塾大学法学部政治学科の小嶋華津子教授のお話を聞く機会がありました。小嶋教授によると、習近平政権の3期目突入は、すでに5年前からの既定路線であり、しかも、これだけ強い権限・権威を与えられることは、10年前の政権スタート時からの共産党指導部内の合意事項だったそうであります。
というのは、習近平政権発足前の、胡錦涛政権時代に起きた、さまざまな不祥事件が原因だったとのこと。詳細は省きますが、『薄熙来事件』『周永康事件』といった中国官僚組織、および将来の共産党指導者候補が引き起こした私欲を肥やす大規模なスキャンダル事件を一掃するために、胡錦涛時代のような集団指導体制ではなく、強力な独裁政権を作り出して、腐った根を絶やすこと。これが習近平政権の使命だそうであります。
しかし、10年という期間では実現が厳しいため、5年前の第19回党大会において、習近平氏の後継者候補を置かない人事案が示され了承された時点で、この3期目は既定路線になったとのこと。
一方で、10年前の共産党指導部内での合意は、今でも生きているのか? すなわち、あの時の思惑通りに指導部内で長老たちによるガバナンスが効いているのか? それとも、習近平政権が強くなり過ぎて、現政権が暴走気味になっている恐れはないのか?
こうした疑問については、小嶋教授曰く「誰も正しい答えを回答できる専門家はいない」そうです。
以下は、ワタクシの妄言を含めた全くの私見とご理解下さい。
せっかく10年の月日を費やして、強い政権を作ったのに、目的が果たせないまま習近平政権を交替させてしまうと、胡錦涛時代のように時間を無駄にする可能性が高いと、共産党指導部内の保守層は考えるかもしれません。一方で、これ以上、習近平政権が強くなり過ぎると、毛沢東時代のような個人崇拝まで起きかねず、終身の独裁政権という最悪の事態を招くかもしれません。
このあたり、今の共産党指導部内での合意形成がどこにあるかは、現在7名いる政治局常務委員の人事案を見るとはっきりしてくると考えています。すなわち、習近平氏の後継者候補を、常務委員を数名増やしてでも指名する人事案が出てきた場合、これは「習近平政権の終わりの始まり」を示す兆候となります。これは、共産党指導部内にて、まだ習近平以外の長老のガバナンスが活きている証明でもあります。
一方、異例の3期目に入っても、習近平氏の後継者候補の指名すら行われないとなると、これはもう、毛沢東と同じレベルに入る兆候と見るべきと考えます。ただし、その際は、異例の3期目の理由として「台湾統一」という課題を『交換条件』として長老たちから突きつけられるはず。すなわち、次の5年で台湾統一の道筋を付けられなければ、習近平政権は5年で終了を余儀なくされるということ。
この時が、最も台湾有事の危機がピークになる瞬間と、世界中で騒ぎになると思います。がしかし、その実態は、習近平自身が後継者指名を拒絶して、自らの出口を塞いでしまうような選択をしてしまった・・ということ。
それだけ、中国共産党指導部の長老たちは老獪で狡猾であります。もし、長老たちの意向を無視して、後継者候補の指名を拒絶するならば、台湾問題と一緒に習近平政権をあと5年で葬ろうという目論み。こうした状況へ習近平を追い込む算段なのだと思います。
世界中を敵に回して、中国国内でも支持を失って、習近平が失脚の道へ進むのか? それとも、後継者指名を行って、習近平政権の終わりの始まりを世に示すことになるのか?
今回の第20回党大会において、習近平の後継者候補の指名があるのか否か? 自分はそこに注目しております。