南米ベネズエラの奥地にテーブルマウンテンという熱帯の秘境がある。千メートルを超す切り立った垂直の岸壁に囲まれた台地は他の地域と隔絶され、そこにしか居ない奇妙な昆虫、両生類や爬虫類が蠢いているという。四半世紀前に高温多湿の毒蜘蛛毒蛇巨大ムカデの棲息するジャングルを遡り、台地の一つロライマ山2810mの崖に辿り着き、よじ登った探検家(ヘイミシュ・マニキス)が居たらしい。何でも蹴飛ばすイヤハヤ隊長の椎名さんがその手記を読んで怖気を震っている。高さ八百メートルの崖にロープ一本でハンモックを支え宙づりで眠っているとハンモックの網の上を巨大な毒蜘蛛が降りてくるなど、想像するだけで胃が痛くなる。探検家は一体どういう神経の持ち主なのだろう。
雲丹や海鼠を最初に食った奴は偉いと言うが、私には未開のジャングルに分け入り、絶壁をロープ一本を頼りに登った奴の方が偉い気がする。人には得意不得意があるとは言うが、こういう命知らずの冒険家達が居たおかげで、われわれは随分恩恵に預かっているのだろうと思う。
不思議なことだがこうした探検や冒険に血湧き肉躍る人達は平凡な人生は苦手な人が多い。だんだん未開の地はなくなり、冒険家や探検家の征服対象は減ってきたのだが、冒険家体質探検家体質の人は何に活路を見出しているのだろうか。余計なお世話かも知らんが、彼らの就活が心配になる。