和歌山城望む

　短い夏休みを利用して和歌山城を訪ねた。隣の岩出市にあるイタリアンレストラン「アイーダ」で夕食を食べるのも目的の一つであった。
　今は二、三泊の小旅行でも新幹線や飛行機があるので、国内であればたいていの所に行ける。私は田舎自然志向なのだが、妻は都会便利志向なので、多少不本意でも、札幌東京大阪京都神戸福岡を一カ所入れる羽目になる。以前から紀伊半島をいつか巡ってみたいと思っていたので、まずとっかかりに和歌山市はどうかという、さしたる動機もない、私家版ダーツの旅だ。
　阪和線は大阪環状線と和歌山市を結ぶＪＲだが、どことなく小田急名鉄近鉄に似ており私鉄の雰囲気がある。関空への分岐点、日根野を過ぎると車窓の景色も乗客もローカルになり、関西弁も歯切れはよいが心なし優しい感じになる。
　和歌山城は駅の南西２ｋｍばかりに位置する立派な城で、実に上手く設えてある。天守閣からは海に注ぐ紀ノ川の向こうに、淡路島から四国まで望め、すばらしい眺望を堪能した。今ではやや中央を外れた感じがあるが１６００年頃には風光と海と山の幸に恵まれた要衝の地として、徳川が領地としたのも宜なるかなと思えた。
　鄙には稀なレストラン「アイーダ」は今まで食べたイタリアンのベストスリーに入る美味しさで、なぜ田んぼの中のこの店が全国的に評判なのかがよくわかった。前菜からデザートまで全部おいしい店はなかなかないものだ。お値段も高くない。
　シェフはお若いようだが東京大阪に進出しようなどと妙な気を起こさないように。