駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

秋風が立つ

2008年08月19日 | 身辺記
 出がけに、犬の散歩のご近所の奥さんから、「今朝は涼しいですね」。と声をかけられた。「ほんとですねえ」。と相槌を打ったのだが、確かに空気の肌触りが違う。秋がそこまで来ている。
 休み中に寝たきり患者さんの急変もなく、のんびりできたので、気持ちよく医院を開けたのだが、僅か数日遠ざかっただけなのに診察の勘が鈍っているようで、いつもより手間取ってしまった。
 我々の仕事には定年がないので、辞める時期を自分で決めなければならない。秋風を感ずるように、そろそろ辞め時という風の気配をうまく捉えなければと思っているのだが、自分のことがよくわかるかどうか不安である。
 92歳で亡くなった医師会の大先輩は88歳まで診察をされていた。ある会合で最高齢なので乾杯の挨拶をお願いしたのだが、いつまでたっても乾杯にたどり着けない堂々巡りの挨拶でやきもきしたことがあった。事故が起きないうちに閉院されて良かったと密かに思った会員も多かったようだ。ご近所だったK先生は仕事を辞めたらあれもこれもと楽しみにされていたが、ちょっと長く頑張られ過ぎ、楽しむ間もなく古希を過ぎて亡くなられた。65歳で自分の医院を閉院し、老人病院勤務に変わったS先生は「おい、却って大変だわ」。と勤め始めた先から辞める算段をしておられる。
 禍福はあざなえる縄のごとしで、先のことを計画し過ぎるのは鬼の笑いを誘う気もするが、迷惑をかけては困るので退場の仕方を視野に入れておかねばと思っている。記憶力の衰えは隠しようもない。どうも新しいことを始めるのが億劫になってきた。研修や勉強会にはまだ行けている。遊びたい気持ちと勉強する気持ちがあるうちは、大丈夫かな?と自己判断しているが、いかがなものか。
 
 
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