駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

混線する糖尿病治療

2014年05月31日 | 医療

                    

 高血圧症と並んで潜在患者の多い糖尿病にどんどん新しい治療薬が加わってきている。つい一ヶ月ほど前に「ほんまか」と思えるような新薬が承認され市場に出現した。それはSGL2阻害剤といって糖尿病で高くなった血糖を小便に出してしまう薬なのだ。不必要に高い血糖は小便の中に捨ててしまおうという、驚くべき考え方の治療法で、この薬を飲むと、砂糖がたっぷり含まれた小便が出るようになる。砂糖は重要なエネルギー源なのでそれを捨てれば、その分痩せられるし、血中の糖分濃度も下がろうというわけだ。未だ使われ始めたばかりで長期投与の効果は不明だし、良いことづくめではないのだが、二十年前の日本の医学部の研究室なら何を阿保なことを事を言われたと思われる薬が出てきた。

 阿保なことのついでに冗談?を書けば、糖尿病患者をブドウ糖製造人間として利用できるかもしれない。この薬を飲ませた糖尿病患者の尿を集めればブドウ糖を生産できるだろう。宇宙飛行士の一人には軽症糖尿病者を連れて行く良い。

 まあこうしてインスリン、SU剤、グリニド系薬、BG剤、アルファGI、チアゾリジン薬、インクレチン関連薬に加えSGL2阻害剤と多彩な治療薬を手に入れ、糖尿病の治療は随分と進歩したのだけれど、肝腎要の食事療法がここに来て少々揺らいでいる。というのは食事療法には十分な科学的データが不足しており、巷の糖質制限ダイエットに対抗するあるいは追認する十分なガイドラインが出ていない。三大栄養素の割合、ビタミンミネラルなどの組み合わせ方には、これが宜しいという確固としたデータがないので、薬物療法に比べるとガイドラインの内容が乏しい。それに食生活には文化や人生観が絡むから、余計に医学的アプローチが難しくなっている。

 いつも糖尿病治療の講演会のあとに、何でこんなに御馳走が出るのといった豪華な立食会が用意され、皿一杯に中華フレンチ和食を盛りつけ、ビールを飲みながら、減量指導の話をしている。何だか変だ。T先生、あなたは糖尿病専門医なのにケーキを三つも食べていますね。「イヤー僕は甘いものが大好きなんですよ」。

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