駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

掛かりつけ医の仕事

2022年01月09日 | 診療
           

 暮れに総合病院にMさんを紹介した。二ヶ月ほど前から食欲が減って少し痩せられたので採血検査をしたら軽度の貧血を認めた。八十を過ぎておられるが殆ど認知もなく自力で通院され老化の進行ではなさそうだ、何か胃腸に病気が隠れていると判断したからだ。
 正月明けに受診され、話を聞いて欲しいと言われる。最初の超音波検査で何か異常があったらしく複数の医師で話をしていた。心配になりどうですかと聞いたら後から来た医師に大したことはないと言われたが、次いでCT、カメラ、大腸カメラと立て続けに検査された。暮れだったせいか殆ど連日で毎回朝の九時から夕方の五時までかかった。食事を抜いたり長く待たされたので付き添いの妻共々へとへとになってしまった。大したことないのに何でこんなに検査するんだ。おまけに結果は息子に説明するという、どういうことかとかなりご立腹の様子だった。まだ、精査しますという返事しか貰っておらず、病気のことは説明できなかったが病院でも遠慮しないで納得できないことはちゃんと聞くように、聞けば説明してくれますよとお話ししたことだ。
 十五分ばかりあれこれ繰り返し言いたいことを私に話せたせいか、だいぶん気持ちが落ち着いたようでほっとした顔でお帰りになった。
 こうしたすれ違いは時々ある。患者さんは総合病院だと気後れがするし、見知らぬ医師なので余計にあれこれ聞きにくいのだ。医師の方は患者さんよりも病気に眼が行っているし、多くの場合型どおりの説明で済むので、高齢患者さんの立場心境まで気が回らなかったのだろう。それに医師が三十代と若いということもある。

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