バージョンアップは、ソフトメーカーとユーザーの戦いである。
メーカーは新しい機能を次々に考え出し、その機能にあった使い方をユーザーに要求する。
革新に筋道はないから、もし付加する機能が革新的なものであった場合には、名前の主要部分は変わらなくても、全然違うものが現れることになる。
リニューアルという言葉がある。変えてしまったことを嫌われずにすませる巧みな宣伝用語だ。
この前触れのついたバージョンアップに出会ったらそれこそ悲劇である。
新しく使う人は、何かややこしいなと思いながらも、こんなものかと覚えこめばよいのだが、前のバージョンに慣れてやっと使いこなせるようになった人には、そこで頭の切り替えを強要され、迷惑この上ない。
講習会などで、使うソフトのバージョンがばらばらの場合、サポーターには和洋中混合レストランの料理人のような頭の切り替えが要求される。
およそ機能追加のバージョンアップで操作が単純になることはない。
「これでいいですか」などと聞かれても、操作途中の状態を一目見て、何をしているかがわかるものではない。「続けてください」という返事かできない。
星の数ほどもあるアプリケーションソフトのすべてを、初見で使いこなす人などいないから、スーパー料理人の巡回をじっと待つか、見当違いのことをやってみながらいじりまわす時間のほうが多くなる。
バージョンアップは、ソフトメーカーとユーザーの戦いと言ったが、ユーザーとサポーターの泥試合にならぬよう、何か巧い方法はないものだろうか。