この前に読んでた「ある奴隷少女の~」を通して、知った本です。
この本の作者は、アメリカ北部のミシガン出身の台湾系アメリカ人(作者は中国系ではなくあえて台湾系と述べているところも注目)。
両親は台湾からの移民ですが、作者はアメリカ生まれのアメリカ育ち。
英語の発音ももちろん完璧で両親の期待通り、頭がよくハーバード大学へ入学するいわゆるエリート。
ハーバード大学法学部で学んだ後、ほとんどの同級生が有名法律事務所へ就職する中、
自ら志願してアメリカでも貧しいと言われる南部のミシシッピデルタ地区へ教師として赴きます。
南部は黒人が多く、この本の作者が教える学校の生徒ともほとんどが黒人。
黒人と白人の貧富の差、人種差別など歴史を通して紹介されていたり。
作者自身がアメリカ社会ではあまり注目されないアジア系ということも、きっかけとしてあるんでしょうか。
黒人差別はとにかく根強くて、最近でも黒人が銃で撃たれる事件が毎年報道されるなど、
私たちもよく目にしますが、アジア人はどちらかというと注目されません。
でも黄色人種に対する差別ももちろんあって、でも公に取り扱われなかったりまた黒人ほどなぜか注目もされない。
最近になってやっとアジア系(韓国や中国や)アメリカ人の俳優さんがドラマに出たり、
インド系アフリカ系アメリカ人の女性が副大統領になるなど注目され始めましたが。
マイノリティだからこそ、差別される側の生徒になんとかいい教育を与えたいと思うのか。
授業に本を読むことなど取り入れたりとても頑張るのですが、
やはり荒廃した地域だからか次第に言葉が粗野になったりと疲れていく。
ついにデルタを離れる決心をし、ハーバードのロースクールへと進学します。
ところがロースクールを卒業し就職が決まったころ、自分の教え子パトリックが殺人を犯し刑務所へ入ることを知ります。
とても気にかけていた生徒だったので、この作者は就職の時期を何とかずらしてしまい再びデルタへ戻ってきます。
そこから毎週のように刑務所へ通い、罪を犯した教え子を救うべく、文章を書かせたり本を読ませたり。
正直、元教え子に対してここまで元先生が出来るのかって思います。
日本にはこんな風に生徒を気にかけてやる先生って存在していますかね。
アメリカ、特にデルタでは稀有な存在の生徒だったかと思います。
週を重ねるごとにパトリックは文章を書くのがうまくなり、本もどんどん読めるようになる。
またパトリックの各文章がロマンチックでいいのです。
もちろんパトリックは人を殺した罪があるということは忘れてはいけませんが、
この著者のこのパトリックに対する行為が素晴らしい。
先生にとって生徒はいつまでも生徒なんですね。
また生徒も自分のことを少しでも「気にかけて」もらえるのが嬉しいのです。
今の日本は子供の自殺が多くて、いじめも多くて、とても生きにくい世の中です。
でも14.15歳の子供が自殺するなんてことがあってはいけない社会だと思うのです。
ちょっと本の内容とはずれてしまいましたが、この作者とパトリックの関係は素晴らしい。
これは絶対映画になりそうです。