紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

オール美意識

2007-04-25 23:52:51 | 読書
 『件p新潮 2007年4月号』に密かに?4ページをも割かれての紹介に魅せられ、『へうげもの』第1巻(山田芳裕/作 講談社モーニングKC)を買ってしまった。

 群雄割拠した戦国時代が舞台であるが、この時代は文化のカンブリア期のように、ユニークな安土桃山文化が花開いた時代でもあるのだ。茶の湯も武士の間で大人気なのである。戦で功名を成すことの裏で、名物(茶の湯の道具の名品のあれこれ)の争奪に明け暮れる時代でもあった、という着眼点がめっぽう面白い。

 『へうげもの』とは「ひょうきんもの」という意味らしいが、第1巻を読む限り、主人公の古田左介(後の織部)以上に真の『へうげもの』は織田信長の弟、織田長益(ながます)では??・・・とも思ったりして。ほとんどアラビア人のコスプレしたイケメンのイタリア人だもん、織田長益。

 古田左介は美意識の塊で、ホネの髄まで数寄者&茶道具マニアであるが、その美意識は茶道具のみならず、彼の人格、生活、人間関係全てに関わっていてオソロシイ程調和がとれている。
 その筋金入りなマニア度と真摯で率直な人柄の良さで、信長にも利休にも一目置かれているのだ。度を超したマニアは超絶的なレベルになると、必然的にそれゆえの孤独に陥る。だからこそ話の分かる人間を、こんなにも必要としているのだ、ということがしみじみと解る。

 ふと晩年の白洲正子さんは、とても孤独だったのではと、このマンガを読んで少し胸が疼いた。どんなに目利きと持ち上げられ、あがめられても、それを対等に、しかも最小限の言葉でも解り合え語らう人がいなければ、大変に寂しい。

 マンガの1巻目の前半はたいてい、まだキャラクターも定まっていなくて、絵柄も不安定で、そこを我慢して読むものだ、とハナから諦めているのだが、どっこい今回はラッキーな誤算だった。

 最初の信長を中心とする安土での軍議の場面で、古田左介の心のモノローグが続くのだが、これでいきなり「掴まれて」しまった。古田の背骨の通った美意識、信長の突出したかっこよさ、それにひきかえ並みいる家臣たちのつまらなさ。自分が家臣たちに嘲笑されているときすら、古田は冷静に彼らをジャッジする。
「う~ん いかにも武人らしい もっさりした笑いだ・・・けなす笑いは 本人の得意げが後に残って キレが悪い・・・俺も気をつけよう」
 勝負あり!(笑) 

 海千山千から名づけたのではないかと思われるほどに老獪な千宗易(利休)のキャラと、彼と古田左介の出会いも、なんとも濃い。邂逅という難しい漢字を想い出してしまった。

 とにかく、どのキャラもこのキャラも、最初からすっくと立ち上がっているのが水際だっているのだ。・・・ああ、早く2巻が読みたい! 現在4巻まで刊行。以下続刊です。週刊『モーニング』にて隔週にて連載中。