紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

朋有り、

2007-05-16 23:36:58 | 読書
 『芋たこなんきん』もとうに終了したのに、書き落としていたことがあったので、遅ればせながら。

 ドラマの最初に町子が文学賞を受賞し、文壇デビューを果たした頃、関西の現役作家が友情出演?されていた。役柄は文壇の重鎮で、町子の才能を高く評価し、陰日向にフォローしあたたかく見守る、というGOODなナイスガイなのである。演じたのは筒井康隆さん。わずかな出番しかなかったが、ふたりの絆の強さを物語るような好演であった。

 実際に田辺聖子さんと筒井康隆さんは、長年に渡る親交があるらしい。いくつかお互いのことを書かれたものを読んだが、深い文学的な尊敬と、人間的な親しみが交錯した、得難い友情であった。

 田辺さんは筒井さんの短編集『わが良き狼(ウルフ)』の解説を書かれていて、その洞察力に満ちた慧眼にノックアウトされてしまった。彼女の解説があるからという理由もあり、『わが良き狼(ウルフ)』は好きな、しかも忘れがたい短編集なのだ。筒井さんのリリカルでロマンチックな面、前人未到の荒野を一人行くような筒井さんの寂しさを小説の中に見い出した人、ということで一挙に田辺さんに興味を持ったような記憶がある。

 一方、あの田辺聖子さんがSFを書いていた!タイトルは『お聖どんアドベンチャー』。いうまでもなく映画『ャZイドン・アドベンチャー』を下敷きにしたタイトルだ。

 しかも実名モデルSF小説! 国家の言論統制により自由に物が書けなくなってしまい失業した作家たち、田辺聖子、小松左京、筒井康隆の放浪のあれこれを連作短編にしている。

 もちろん田辺さんが主人公。小松&筒井さん以外にも、田辺さんと親交のある作家さん、当時の流行作家さんたちが次々と実名で登場し、田辺さんの無類の観察眼と、作品や文章の特徴を掬い上げる鮮やかさを見せつけられ大笑いしてしまう。田辺ワールド全開に田辺テイストを効かせて、でもSFという不思議な作品。

 なかでも五木寛之の入れ知恵で「あひる教」という新興宗教をでっち上げ、田辺さんが教祖様に祭り上げられる「あひるのあんたはん」という短編がいっとう好きだった。

 この本の解説を書いているのが、たしか全編に登場する筒井康隆さんなのである。
 異性間の友情を思うとき、真っ先に思い浮かぶのが、田辺&筒井という最強の二人なのだ。