紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

千の風になって

2007-05-19 23:44:05 | 音楽
 今日は学校関係の式典にでかけた。

 第2部は演奏やコーラスなどが繰り広げられ、老年といっていい年齢の方達のOBグリークラブの、永年の経験による磨かれたテクニックと素晴らしい歌声に驚く。

 第2部のラストで歌われた「千の風になって」を聴き、しみじみする。

 私のお墓の前で泣かないでください
そこに私はいません
眠ってなんかいません
千の風に
千の風になって
あの大きな空を
吹きわたっています


 という新井満の日本語の歌詞で、ヒットしていた曲である。

 3年前の夏だったろうか、イシオカ書店の店長のお葬式に参列させていただいた。最後のご挨拶で柩の中の彼の亡骸をみて、彼はもうこの身体の中にはいないんだな、と理解した。じゃ、いまはどこにいるんだろう?

 その後、柩が運び出され、教会の外に出た。
 大変に美しく晴れ渡った、暑いのに爽やかですらあるような素晴らしい真夏のお昼前だった。青色がやけに抜けるように澄み渡り、誘われるように空を見上げた。

 教会の前には、立派な大王松がそびえており、その高い梢で風が旋回しているのを感じた。不自由だった肉体から解き放たれて、せいせいしたとでも云いたげな気配? ・・・ああ、そこにいるんですね? モーツアルトのモテットのようだった。『踊れ、喜べ、幸いなる魂よ』。そのあまりに透明な明るさに、「そんなに悲しまなくてもいいのに」という空耳が聴こえたような気さえした。

 『千の風になって』のヒットの裏には、同様の体験をお持ちの方がいらっしゃるのかもしれない。運ばれる柩より、大王松の梢の方が、気になってしょうがなかった。

 本屋のオヤジを自称していたときには「転がる石のように」だった奥村店長は、すっかり明るい風になって、自由きままに旅をしているのかもしれない。