坂本九の『上を向いて歩こう』がヒットした年に生まれた私であるが、上を向いて歩かないようにしようと決意した本日。
おりしも総合病院の車の詰まった駐車場である。実家の母が検査入院しているので、明日の退院の時間などを聞いておこうと思い、車を停めて病院の大きな窓を見上げながら歩き出した。
窓際にはパジャマ姿の老婦人が、椅子にゆったりと座って眼下に広がる絶景をながめていた。そして私はいつものように、彼女の境遇や心理状態をいろいろと空想し、歩を進めた。そのとき、何の前触れもなく、いきなり私は宙を飛び、目前に地面が近づいた。
賢明な読者はもうおわかりであろう。車止めのコンクリートにけつまずいて、コケたのだ。
私も子どもの頃は、始終コケて、あちこちを擦りむいたものである。それがオトナになるに従って、けつまずいてもコケなくなった。バランス感覚がついたのであろうか。
それが久方の光のどけき春の日に、しづこころなくコケてしまった。久方なのだ、当然のように、コケ方なんぞ忘れ去っており、最低にへたくそなコケ方をしてしまった。大失態である。
最初、目前は病院なのだ、救急車を!と、切望した。あまりの激痛に、しばらくは車につぶされたカエルのような格好で唐黷トいたが、ともかく病院に来た当初の目的を果たすべく起き上がる。なんとか病室にたどり着き目的を果たした後、母は言った。
「すぐ病院に行き!」
顔から血を出して、手を腫らして、ぎこちなく動いては「いたた」と言う娘にかける言葉としては順当だが、ほとんどギャグである。
なんとか自力で車を運転し、地元の整骨院に駆け込んだ。幸いホネに異常はなかったので、ほっとする。しかし、握力とスナップは能力ゼロとなり、重いものも持てなくなった。いきなり両手が不自由なひとと化す。
ということで、今後は年齢を考慮の上、上を向いて歩かない事を決意した次第である。とほほ。
おりしも総合病院の車の詰まった駐車場である。実家の母が検査入院しているので、明日の退院の時間などを聞いておこうと思い、車を停めて病院の大きな窓を見上げながら歩き出した。
窓際にはパジャマ姿の老婦人が、椅子にゆったりと座って眼下に広がる絶景をながめていた。そして私はいつものように、彼女の境遇や心理状態をいろいろと空想し、歩を進めた。そのとき、何の前触れもなく、いきなり私は宙を飛び、目前に地面が近づいた。
賢明な読者はもうおわかりであろう。車止めのコンクリートにけつまずいて、コケたのだ。
私も子どもの頃は、始終コケて、あちこちを擦りむいたものである。それがオトナになるに従って、けつまずいてもコケなくなった。バランス感覚がついたのであろうか。
それが久方の光のどけき春の日に、しづこころなくコケてしまった。久方なのだ、当然のように、コケ方なんぞ忘れ去っており、最低にへたくそなコケ方をしてしまった。大失態である。
最初、目前は病院なのだ、救急車を!と、切望した。あまりの激痛に、しばらくは車につぶされたカエルのような格好で唐黷トいたが、ともかく病院に来た当初の目的を果たすべく起き上がる。なんとか病室にたどり着き目的を果たした後、母は言った。
「すぐ病院に行き!」
顔から血を出して、手を腫らして、ぎこちなく動いては「いたた」と言う娘にかける言葉としては順当だが、ほとんどギャグである。
なんとか自力で車を運転し、地元の整骨院に駆け込んだ。幸いホネに異常はなかったので、ほっとする。しかし、握力とスナップは能力ゼロとなり、重いものも持てなくなった。いきなり両手が不自由なひとと化す。
ということで、今後は年齢を考慮の上、上を向いて歩かない事を決意した次第である。とほほ。