1988年6月、私はアメリカにいた。
まだ37歳、とても若くて元気だった。
長年の夢がかなって、やっと自前の船を作るための調査費がついた年だった。
世界一の観測船を作りたい。
夢だけは大きかった。
アメリカでは、ウッズホール海洋研究所、ワシントン大学海洋学部、スクリップス海洋研究所へ行った。
そしてカナダ内水面研究センターも訪問した。
いずれも、当時から、そして今でも、世界の海洋や湖沼の中心的な研究機関だ。
スクリップス海洋研究所は、カリフォルニア州のサンディエゴにある。
正確に言うと、カリフォルニア大学サンディエゴ校の付属研究所だ。
ノーベル生理学賞をもらった利根川進さんが、この研究所の修士課程に在籍していた、と言ったほうがわかりよいかもしれない。
この研究所には、一風変わった船があった。
名前をフリッパーといった。
Flipperというのはハンバーガーをひっくり返す人のことをさすが、この船はひっくり返るのである。
全長が100mある。
目的地までは、大きな船に曳航されていく。
そこで、中に水を入れて水中に直立する。
90mまで水中に沈むのである。
中に梯子があって、途中で採水もできるし、水中の観察もできる。
こんな船があったら、琵琶湖の一番深いところの調査もできるのに。
面白いのと、羨ましいのとで、とてもうれしくなってしまった。
こんなバカげた船を、わずか数年のプロジェクトのために作ってしまうアメリカという国が、格好よかった。
日本ではできないだろうな。
帰国した私は、実験調査船はっけん号の建造に取り組んだ。
誰も気がつかない工夫をいくつもした。
だからはっけん号にはとても思い入れがある。
まだ37歳、とても若くて元気だった。
長年の夢がかなって、やっと自前の船を作るための調査費がついた年だった。
世界一の観測船を作りたい。
夢だけは大きかった。
アメリカでは、ウッズホール海洋研究所、ワシントン大学海洋学部、スクリップス海洋研究所へ行った。
そしてカナダ内水面研究センターも訪問した。
いずれも、当時から、そして今でも、世界の海洋や湖沼の中心的な研究機関だ。
スクリップス海洋研究所は、カリフォルニア州のサンディエゴにある。
正確に言うと、カリフォルニア大学サンディエゴ校の付属研究所だ。
ノーベル生理学賞をもらった利根川進さんが、この研究所の修士課程に在籍していた、と言ったほうがわかりよいかもしれない。
この研究所には、一風変わった船があった。
名前をフリッパーといった。
Flipperというのはハンバーガーをひっくり返す人のことをさすが、この船はひっくり返るのである。
全長が100mある。
目的地までは、大きな船に曳航されていく。
そこで、中に水を入れて水中に直立する。
90mまで水中に沈むのである。
中に梯子があって、途中で採水もできるし、水中の観察もできる。
こんな船があったら、琵琶湖の一番深いところの調査もできるのに。
面白いのと、羨ましいのとで、とてもうれしくなってしまった。
こんなバカげた船を、わずか数年のプロジェクトのために作ってしまうアメリカという国が、格好よかった。
日本ではできないだろうな。
帰国した私は、実験調査船はっけん号の建造に取り組んだ。
誰も気がつかない工夫をいくつもした。
だからはっけん号にはとても思い入れがある。
年をとると、否が応でも諦める場面が多くなる。
集中力はなくなるし、
執着心もなくなる。
のんびりとしているのが一番だ。
でも自分がやりたいことは、諦めないで続けたいと思っている。
昔からそうだったように、これからも同じだ。
人間は、急にジャンプすることは出来ない。
これまで培ってきた経験や思考の上に、一つずつ知識の枝を付け加えるしかない。
ちょうど、谷を削る水のように、急がず、慌てず、一歩ずつ確かめながら前進したい。
諦めないこと。
それが一番大事だ。
そう自分に言い聞かせながら、今日も一日を暮らしている。
日々之好日。
集中力はなくなるし、
執着心もなくなる。
のんびりとしているのが一番だ。
でも自分がやりたいことは、諦めないで続けたいと思っている。
昔からそうだったように、これからも同じだ。
人間は、急にジャンプすることは出来ない。
これまで培ってきた経験や思考の上に、一つずつ知識の枝を付け加えるしかない。
ちょうど、谷を削る水のように、急がず、慌てず、一歩ずつ確かめながら前進したい。
諦めないこと。
それが一番大事だ。
そう自分に言い聞かせながら、今日も一日を暮らしている。
日々之好日。
2008年11月20日、自律型潜水ロボット淡探で湖底を調べているときだった。
水深57mの場所で断層を発見した。
これだけでは活断層かどうかは不明だが、きれいな地層構造が見られる。
問題は、なぜ埋まっていないのか、という疑問だ。
ひょとしたら底引き網によって表面の泥が取りのけられたのかもしれない。
琵琶湖の湖底には、このような面白い地形が多く残っている。
琵琶湖の過去を探るという意味で、重要なヒントを与えてくれるのだろう。
未来の湖沼研究者が、このような探索を継続してくれるかもしれない。
参考のために場所の地図を添付しておこう。
水深57mの場所で断層を発見した。
これだけでは活断層かどうかは不明だが、きれいな地層構造が見られる。
問題は、なぜ埋まっていないのか、という疑問だ。
ひょとしたら底引き網によって表面の泥が取りのけられたのかもしれない。
琵琶湖の湖底には、このような面白い地形が多く残っている。
琵琶湖の過去を探るという意味で、重要なヒントを与えてくれるのだろう。
未来の湖沼研究者が、このような探索を継続してくれるかもしれない。
参考のために場所の地図を添付しておこう。
1976年に初めて海外に出かけた。
しかも南アメリカだ。
ペルーに着いたとき、最初言われた言葉を今でも鮮明に覚えている。
「あなたは、人生の最後に来る場所に、最初に来た。」
当時、あまり意味が分からなかった。
「アスタ マニャーニャ(明日またね)」
どこの官庁に行っても、そう言われた。
一つの書類の作成に一週間かかるのが普通だった。
みんな決して急がない。
日本人は、急ぐ割に、決断が遅い。
今は心から思っている。
無理はしない。
今日出来ることは、明日やればいいじゃないか。
よく考えたら、そんなに急ぐ仕事をやっているわけではない。
その代わり、よい仕事を、確実にやり遂げる。
ちょうど、ピラミッドの石を積み上げるように。
今は、そんな時代なのだと思う。
人生を楽しむことを学んだ気がする。
面白い論文を見つけた。
気温の変化と琵琶湖の地震との関係を示している。
2005年に出版されたGotoらの論文だ。
琵琶湖博物館の地下に掘られた1000mのボーリングコアから過去の気温を再現している。
こういう方法があるらしい。
その上で、1185年の文治地震(M7.4)と1162年の寛文地震(M.7.6)について記述している。
気温が大きく変化するところ(変曲点)で地震が起こっている。
偶然なのかもしれないが、面白い話だ。
琵琶湖ではこれ以外にも地震が起こっている(例えば姉川地震1909年M6.8)という指摘もある。
地中の熱伝導度ではせいぜい100mくらいまでしか影響が届かないという説もある。
どうもこの辺の研究はあまりなされていないらしい。
気温の変化と琵琶湖の地震との関係を示している。
2005年に出版されたGotoらの論文だ。
琵琶湖博物館の地下に掘られた1000mのボーリングコアから過去の気温を再現している。
こういう方法があるらしい。
その上で、1185年の文治地震(M7.4)と1162年の寛文地震(M.7.6)について記述している。
気温が大きく変化するところ(変曲点)で地震が起こっている。
偶然なのかもしれないが、面白い話だ。
琵琶湖ではこれ以外にも地震が起こっている(例えば姉川地震1909年M6.8)という指摘もある。
地中の熱伝導度ではせいぜい100mくらいまでしか影響が届かないという説もある。
どうもこの辺の研究はあまりなされていないらしい。
泥の中にどのくらい酸素があるのか。
NHK大津が取材にやってきた。
2011年11月22日のことだ。
すでに寒くなっていたので、南湖では酸素は回復しているのだろうと思っていた。
はっけん号に、酸素を計るための湖底プラットフォームを積んで出発。
実際に測定するのは、水と泥の境界面の上下20mmという微小な領域だが、用いる装置は大がかりである。
空中での重さは200kgに達する。
この装置に、マイクロセンサーを取り付けて、少しずつ泥に突き刺していく。
1回計るのに1時間くらいかかる大仕事だ。
というのは1mmずつセンサを降ろすからだ。
この図からわかるように、琵琶湖の北湖の泥が最も酸素が少ない。
次に南湖の水深7mのところ。
その次が南湖の水深5mの所だった。
こんな風に泥の中の酸素はなかなか回復しない。
それは、泥の中では酸素を運ぶ方法がないからだ。
少しずつ上から拡散するしかない。
時には泥の中の生物がかきまぜてくれる。
これをバイオターベーションと呼んでいる。
でも酸素がなくなると、そんな生物も少なくなる。
あの番組、どうなったのだろうか?
私は見ていないのでは?
NHK大津が取材にやってきた。
2011年11月22日のことだ。
すでに寒くなっていたので、南湖では酸素は回復しているのだろうと思っていた。
はっけん号に、酸素を計るための湖底プラットフォームを積んで出発。
実際に測定するのは、水と泥の境界面の上下20mmという微小な領域だが、用いる装置は大がかりである。
空中での重さは200kgに達する。
この装置に、マイクロセンサーを取り付けて、少しずつ泥に突き刺していく。
1回計るのに1時間くらいかかる大仕事だ。
というのは1mmずつセンサを降ろすからだ。
この図からわかるように、琵琶湖の北湖の泥が最も酸素が少ない。
次に南湖の水深7mのところ。
その次が南湖の水深5mの所だった。
こんな風に泥の中の酸素はなかなか回復しない。
それは、泥の中では酸素を運ぶ方法がないからだ。
少しずつ上から拡散するしかない。
時には泥の中の生物がかきまぜてくれる。
これをバイオターベーションと呼んでいる。
でも酸素がなくなると、そんな生物も少なくなる。
あの番組、どうなったのだろうか?
私は見ていないのでは?
4月から私が事務局長をしています特定非営利活動法人びわ湖トラストでは、公開の講演会を行います。
興味のある方でお時間にゆとりがある方は、ぜひご参加ください。
交流会にも参加される方は、事前に連絡ください。
たぶん、飲食代が1000円のはずですが。。。
何と私に会えるチャンスです。
熊谷 拝
****************
5月11日(土)
場所:琵琶湖大津館(滋賀県大津市柳が崎)
駐車場もあります。チケットを大津館までご持参ください。
無料になります。
14時 受付・開場
14時10分~16時15分 公開講演会
(1)テーマ 『水中ロボット技術の現状と今後の予想』
講 師 川村 貞夫(かわむら さだお)氏 立命館大学教授
立命館大学先端ロボティクス研究センター長、前日本ロボット学会会長、日本学術会議連携会員、NPO法人びわ湖トラスト顧問。日本最大の湖「琵琶湖」の環境調査や保全を目的とした水中ロボットの開発を続けている。本講演では、現在の水中ロボット技術を概観し、琵琶湖で我々が利用しているロボットについて解説する。特に、水中での観察に加えてハンドリングを研究目的としてロボットを開発している。講演では、双腕搭載型、高機能グリッパ型、採泥回収型のロボットについて説明する。
(2)テーマ 『びわ湖におもうこと』
講 師 川端 達夫(かわばた たつお)氏 元総務大臣
1945年1月24日 近江八幡市生、1970年京都大学大学院工学研究科修士卒、同年東レ入社環境関連の研究開発に従事。NPO法人びわ湖トラスト会員。 1986年衆議院議員初当選以来8期で民主党幹事長(第6代)、文部科学大臣、総務大臣などを歴任した。「仕事に、家庭に、地域に普通に暮らす人が一生懸命やれば、豊かさを感じられる、そんな世の中をつくり、守っていくこと」を原点としている。
16時20分~17時20分 交流懇談会
連絡先
特定非営利活動法人びわ湖トラスト(大津市浜大津浜大津5-1-1)
電話077-522-7255, ファックス077-572-7265
電子メールbiwako-trust@road.ocn.ne.jp
以上、ご多用とは思いますがよろしくお願いします。
松任さんのリクエストにお応えしました。
2003年と2013年の比較です。
野洲を基準にしています。
琵琶湖から大阪を中心に回転しているのがよくわかります。
なお、ご自分でいろいろ試したい場合は
http://mekira.gsi.go.jp/project/f3_10_5/ja/index.html
の国土地理院のHPにアクセスしてください。
参考になれば幸甚です。
何か面白い発見をされたら教えてください。
さて、七不思議に関する最後の話である。
最大の関心事は、琵琶湖の移動である。
420万年とも言われる歴史の中で、琵琶湖はどのようにして移動してきたのだろうか。
また、湖にすむ生物は、どのようにして移ってきたのだろうか。
歴史を俯瞰する眼があれば、とても興味深い現象を観察することができるのだろう。
陥没と隆起を繰り返す地形に、水が流れ、溜まり、生物が繁殖する。
日本列島の中でもっとも大きな歪を受けてきた場所の一つでもある。
この図は、西日本の相対的な移動を示している。
琵琶湖の北と南では逆向きに動いていることがわかるだろう。
ちょうど回転の軸に琵琶湖が位置しているようだ。
過去10年間におけるGPS大津基準点での変動を示す。
大きな地震があると、地殻がスリップするようだ。
今も南東に向かって滑っている。
その速度が、速まっているのが気になる。
最大の関心事は、琵琶湖の移動である。
420万年とも言われる歴史の中で、琵琶湖はどのようにして移動してきたのだろうか。
また、湖にすむ生物は、どのようにして移ってきたのだろうか。
歴史を俯瞰する眼があれば、とても興味深い現象を観察することができるのだろう。
陥没と隆起を繰り返す地形に、水が流れ、溜まり、生物が繁殖する。
日本列島の中でもっとも大きな歪を受けてきた場所の一つでもある。
この図は、西日本の相対的な移動を示している。
琵琶湖の北と南では逆向きに動いていることがわかるだろう。
ちょうど回転の軸に琵琶湖が位置しているようだ。
過去10年間におけるGPS大津基準点での変動を示す。
大きな地震があると、地殻がスリップするようだ。
今も南東に向かって滑っている。
その速度が、速まっているのが気になる。