現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

津村記久子「みはりのしごと」この世にたやすい仕事はない所収

2017-02-14 15:22:53 | 参考文献
 不審な人物を、隠しカメラの映像を二十四時間モニターして、見張る仕事についたばかりの女性の話です。
 前職はやりがいのある仕事だったけれど、そのため打ち込みすぎて消耗して退職せざるを得なかった主人公は、単純な仕事を希望してこの仕事を選んだのですが、長時間ずっとモニター画面を見続けるだけの仕事もまた「たやすい仕事」ではないことを思い知らされます。
 不審者の事件自体はたわいのないものなのですが、この仕事に携わる同僚や上司などの人間関係や会話などは面白く描かれています。
 これもまた、作者得意のワーキング小説の新形態なのでしょう。

この世にたやすい仕事はない
クリエーター情報なし
日本経済新聞出版社
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村上龍「結婚相談所」55歳からのハローライフ所収

2017-02-14 08:30:29 | 参考文献
 熟年離婚した女性が、生活の不安から結婚相談所に登録して、再婚相手を捜す話です。
 作品の出来不出来を述べるのではなく、読んでいてある感慨を持ったので書いてみます。
 この作品は、良くも悪くも「小さな物語」です。
 三十年以上前に、村上の「コインロッカー・ベイビーズ」などの「大きな物語」に熱狂した時とは、隔世の感がありました。
 村上春樹とともに「ダブル村上」と呼ばれていた村上龍は、デビュー作の「限りなく透明に近いブルー」以来ずっと気になる同世代の作家でした。
 その村上龍がこのような「小さな物語」を書くようになったことに、四十年の月日を感じさせます。
 ある意味通俗的になった村上春樹にも違った感慨を持っていますが、今回の衝撃の方が大きかった感じがします。

 
55歳からのハローライフ
クリエーター情報なし
幻冬舎
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