現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

村上龍「空を飛ぶ夢をもう一度」55歳からのハローライフ所収

2018-02-17 08:34:45 | 参考文献
 この作品でも恵まれない初老の人物を描いています。
 主人公は、小さな出版社をリストラされて、アルバイトの交通誘導員の仕事も腰痛で休みがちのため、派遣紹介会社を転々としています。
 妻もパート先のスーパーをリストラされ、家賃や大学生の息子の学費のために、なけなしの貯金や退職金も底をつきそうです。
 主人公は、自分がホームレスに転落するのではないかとおびえています。
 そんな時、本当のホームレスになった旧友と再会し、彼が死ぬ前に、苦労して母親のもとに届けてあげます。
 そして、それをきっかけに主人公は立ち直ろうとします。
 すじだけ見ると、すごくいいお話なのですが、なぜか素直に感動できません。
 題材をよく調べてはあるのですが、村上の書き方がどこかよそ事なのです。
 いくら主人公と同世代でも、若いころから成功をおさめ、お金に困ったことのないであろう村上にとっては、別世界の事なのでしょう。
 対象に対しての作者の深い共感がないと、読者が作品世界にシンパシーを持てないのは当然のことです。

55歳からのハローライフ
クリエーター情報なし
幻冬舎
コメント
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