現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

児童文学で今日的テーマを取り上げる意義

2018-11-27 09:04:12 | 考察
 児童文学の世界が商業主義に席巻されてしまったのはバブル崩壊後ですから、もう二十年以上がたちます。
 それ以前の児童文学、いわゆる「現代児童文学」(スタートは1950年代で、1990年代に終焉したと、私は考えています。詳しくはそれに関連した他の記事を参照してください)では、その時代時代における子どもたちを取り巻く今日的問題が描かれました。
 1950年代から1960年代には、いわゆる近代的不幸(戦争、飢餓、貧困)を取り上げた作品がたくさん出版されていました(例えば、いぬいとみこ「木かげの家の小人たち」、山中恒「赤毛のポチ」、松谷みよ子「龍の子太郎」など)。
 1970年代から1980年代には、いわゆる現代的不幸(アイデンティティの喪失、生きていることのリアリティの希薄さなど)が子どもたちにとって問題になると、それに対応する作品群(岩瀬成子「朝はだんだん見えてくる」、那須正幹「ぼくらは海へ」、森忠明「きみはサヨナラ族か」など)が多く生み出されました。
 そして、現在の子どもたちは、ひとまわりして再び、戦争(テロや原子力発電所の事故なども含めて)、貧困(六人に一人の子どもたちが貧困状態です。さらに1950年代と違って格差社会といった問題もあります)、飢餓(給食や子ども食堂が生命線になっている子どもたちが急増しています)といった「不幸」に直面しています。
 それらに対応した児童文学を生み出しえない現状に、絶望感を禁じえません。

現代児童文学の語るもの (NHKブックス)
クリエーター情報なし
日本放送出版協会
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