現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

フォレスト・ガンプ 一期一会

2019-03-28 14:39:59 | 映画
 1994年公開のアメリカ映画で、アカデミー賞で作品賞/監督賞/脚色賞/主演男優賞/編集賞/視覚効果賞を受賞しました。
 特に、主演のトム・ハンクスは、前年の「フィラデルフィア」に続いての二年連続受賞で、アメリカの代表的な俳優に上り詰めました。
 IQは劣るものの、ピュアな心と人並みはずれた身体能力で、周囲の人たち(母親、幼なじみの女の子(後に結婚して子どもをもうけます)、軍隊での同僚や上官など)を幸福に導きます。
 演出上も非常に工夫されていて、主人公の成長とアメリカの現代史(主な物を上げると、公民権運動、ベトナム戦争、反戦運動、ヒッピー・ムーブメント、ブラックパンサー、ピンポン外交、月着陸、ウォーターゲート事件、レーガン大統領暗殺未遂事件など)をからめることによって、主人公とその周辺だけでなく、アメリカ全体の歴史としてとらえることができます。
 ニュース映画に加工して主人公を写しこむなどのアイデアで、アメリカ社会の有名人(主な人を上げると、エルヴィス・プレスリー、ウォレスアラバマ州知事(後に保守派の大統領候補)、ケネディ大統領、ジョンソン大統領、ジョン・レノン、ニクソン大統領など)と共演させています。
 また、それぞれの時代の社会問題(主な物を上げると、人種差別、ベトナム帰還兵問題、障碍者問題、麻薬など)も簡潔ながら取り上げています。
 個人的には、バックに流れ続けている音楽が、それぞれの時代を代表するアメリカのヒット曲(主な物を上げると、ハウンド・ドッグ(エルヴィス・プレスリー)、風に吹かれて (ボブ・ディラン)、夢のカリフォルニア(ママス&パパス)、ミセス・ロビンソン(サイモンとガーファンクル)、花のサンフランシスコ(スコット・マッケンジー)、輝く星座~レット・ザ・サンシャイン (フィフス・ディメンション)、うわさの男(二ルソン)、喜びの世界(スリー・ドッグ・ナイト)、スウィート・ホーム・アラバマ(レーナード・スキナード)など)ばかりなので、とても懐かしかったです。
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マージョリー・フラック さく・え「アンガスとあひる」

2019-03-28 08:36:49 | 作品論
 八十年以上前に作られた絵本の古典です。
 アンガスはスコッチ・テリアの子犬で、好奇心いっぱいです。
 生垣にさえぎられて見られなかった、隣の家のアヒルたちを見にいって、とんでもない目にあいます。
 横長の紙面が、作品世界と登場者たちの動きをよく生かしています。
 児童文学者の瀬田貞二は「幼い子の文学」(その記事を参照してください)において、この絵本を幼年童話や絵本の基本的な構造である「行きて帰りし物語」の典型例として紹介しています。
 アンガス(好奇心いっぱいの子どもたちを象徴していると思われます)が、生垣をくぐって隣の家の庭へ「行きて」アヒルたちに挑みますが、逆にひどい目にあわされて、安全なうちの中のソファーの下へ「帰りし」物語なのです。
 この構造は、もっと複雑なファンタジーなどでも、「日常」から「非日常」に「行きて」、また、「日常」に「帰りし」物語として使われています。
 瀬田が「幼い子の文学」の中で述べているように、有名なトールキンの「ホビットの冒険」の副題(最初の訳者は瀬田自身です)にもなっています。
 
アンガスとあひる (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)
クリエーター情報なし
福音館書店
 
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