現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

筒井康隆「地獄図日本海因果」わが良き狼(ウルフ)所収

2020-03-17 18:27:43 | 参考文献
 1970年ごろに書かれた作者得意のハチャメチャSFです。
 当時はまだベトナム戦争が行われていて、アメリカの太平洋艦隊がベトナムに向かって日本近海から出払ったすきをついて、北朝鮮の艦隊が日本に向かって攻めてきます。
 海上自衛隊の艦隊が対峙しますが、専守防衛のために先攻されて防戦一方に立たされます。
 北朝鮮軍が使った核兵器がオンボロ(当時は核開発能力がなかったので中共(当時はまだ中国と国交が結ばれていなかったので、中国は中華人民共和国を略してそのように呼ばれていました)から中古の欠陥品を買ったことになっています)だったために、核爆発は空間ではなく時間を破壊してしまいます。
 タイムスリップした海上自衛隊の艦隊は、有名な日本海海戦へ紛れ込んでしまい、東郷平八郎司令長官が率いる大日本帝国海軍連合艦隊に遭遇し、あっさりと殲滅されてしまいます(これが、海戦上有名な「敵前大回頭」という作戦ということにしています)。
 一方、北朝鮮の艦隊は、日本海海戦のもう一方の艦隊であるロシアのバルチック艦隊と遭遇し、またオンボロ核兵器を使用したために時間はさらにグチャグチャになってしまい、日本と朝鮮半島が地続きだったころのナウマンゾウの群れや大津波や大嵐(その一つが元寇を防いだいわゆる「神風」)を引き起こします。
 さらに空間的にもおかしくなったらしく、タイタニック号(北大西洋で氷山に衝突して沈没)や「杉野はいづこ、杉野はいづや」で有名な日露戦争の軍神広瀬中佐(場所は旅順港なので日本海ではありません)まで登場して、ハチャメチャになります。
 こうした作品は、現在の若い読者には、ほとんど読解不能でしょう。
 作者は、読者がある程度の社会情勢や歴史の知識(当時では常識程度ですが)を持っていることを前提に書いているからです。
 他の記事に書きましたが、当時はまだ教養主義のしっぽが残っていて、一般読者でもこれらの知識は共有していました。



わが良き狼(ウルフ) (角川文庫 緑 305-4)
クリエーター情報なし
KADOKAWA
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アンタッチャブル

2020-03-17 18:24:57 | 映画
 ケビン・コスナーの出世作となった1987年のアメリカ映画です。
 禁酒法時代のシカゴのギャングの帝王だったアル・カポネを逮捕(意外にも脱税容疑です)したエリオット・ネスのチーム(当時警察内で横行していた脅迫や買収に応じないのでアンタッチャブルと呼ばれていた)を描いた作品です。
 この話は1960年ごろにテレビドラマ化されて日本でも放映されていたので、私が子どもだったころはアル・カポネもエリオット・ネスも超有名人でした。
 誠実なアメリカ人を演じるのにぴったりな主役のケビン・コスナーの魅力だけでなく、ベテラン警官役で重厚な演技を見せた(アカデミー初助演男優賞を受賞しています)ショーン・コネリー(かつてのジェームス・ボンド俳優ですね)、射撃の名手の警官を演じたアンディ・ガルシアの若々しい演技、チャールズ・マーティン・スミス(アメリカン・グラフィティでお馴染みです)が演じた小柄で風采の上がらない経理マン、憎々しい悪役を演じたら右に出る物ないロバート・デ・ニーロといった芸達者たちの競演が最大の見どころでしょう。

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ヘビさん

2020-03-17 11:01:11 | 作品


 むかしむかし あるところに ヘビさんが いました。



 あるひ ヘビさんは グニョグニョと あるいていました。
 むこうから カエルが ピョコンピョコンと やってきます。
 ヘビさんは、カエルを パクッと のみこんでしまいました。



 また ヘビさんが あるいていくと むこうに おおきなかわが ありました。
 かわには たくさんのサケが およいでいます。
 ヘビさんは パクパクパックンと サケを いっぱいのみこんでいきます。
 サケは どんどん ながれてくるので たべほうだいです。
 ヘビさんは サケを いちまん さんぜん ろっぴゃく にじゅう ななひき たべました。



 なんで そんなに たべられたかって?
 だって ヘビさんは、とってもおおきな ヘビだったからです。
 ながさは 10メートルいじょうも あります。
 からだの ちょっけいも 1メートルいじょうも あります。
 くちをあけると まるで トンネルのようです。



 また ヘビさんが あるいていくと むこうから キリンがやってきました。
 ヘビさんは パクッと のみこもうとしましたが のどのところで キリンのくびが つっかえてしまいました。



 また ヘビさんが あるいていくと むこうから アリが やってきました。
 ヘビさんは パクッと のみこもうとしましたが あんまりちいさいので やめました。
 アリを ふみつぶそうとしましたが できません。
 だって ヘビさんには あしが なかったからです。



 また ヘビさんが あるいていくと むこうから ライオンが やってきました。
 ヘビさんは パクッと のみこもうとすると ぎゃくに ガブッと ライオンに かみつかれてしまいました。



 けがをした ヘビさんが あるいていくと むこうから カンゴシさんが やってきました。
 カンゴシさんは ヘビさんに おおきなばんそうこうを はってくれました。



 ばんそうこうをはった ヘビさんが あるいていくと むこうから ペンギンが ヒョウザンにのって やってきました。
 ヘビさんは パクッと のみこもうとしましたが ヒョウザンが すごくつめたかったので ヘビさんは カチンカチンに こおってしまいました。

10

 カチンカチンの ヘビさんが あるいていくと むこうから ゾウがやってきました。
 ヘビさんが パクッと のみこもうとすると ドシンドシンと ゾウに ふみつぶされてしまいました。

11

 ペッタンコになった ヘビさんが ヒラヒラと あるいていくと むこうから ジテンシャヤさんが やってきました。
 ジテンシャヤさんは ヘビさんに じてんしゃのポンプで くうきをいれて もとどおりに ふくらませてくれました。

     12

 ヘビさんが あるいていくと むこうから ゴリラが やってきました。
 ヘビさんが パクッと のみこもうとすると ゴリラは ヘビさんの あたまと しっぽを つかんで こしのまわりにまいて ベルトに してしまいました。

13

 ベルトになった ヘビさんが あるいていくと むこうから カブトムシと カンガルーと キリギリスと ダンゴムシが やってきました。
 ヘビさんは パクッパクッと どんどん みこんでいきます。

14

 でも、まだ タヌキや ドクアリや ラクダや おサルや ミノムシが どんどん やってきます。

15

「わーっ もう おなかが いっぱいだ」

16

 ヘビさんは あわてて いえへかえると ニョロニョロと ヘビのかたちをした おおきなウンチをして ねました。

 

ヘビさん
平野 厚
メーカー情報なし


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