精神分析医による、精神病理を描いた人気シリーズの第三弾です。
1990年の「豊かさの精神病理」(その記事を参照してください)、1995年の「やさしさの精神病理」(その記事を参照してください)に続いて、今回は「愛」をテーマにして、2000年に出版されました。
しかし、回を追うごとに、精神病理的な内容は薄れ、取り扱っている症例も、第一作の22に対して、第二作は7に激減し、今回はさらに減ってわずかに以下の6例です。
第三世界の若者と結婚寸前までいったものの、ささいなことで破綻した女性会社員。
パソコン通信(時代が感じられますね)で知り合った人妻との純愛が、いつしか不倫に置き換わってしまった大学生。
お客の会社員との純愛が、ささいな行き違いで破綻した女子大生風俗嬢。
クレイマークレイマーもどきの父子家庭が、別れた妻に親権を奪われることで破綻したが、娘の担任の保育士に救われたゲームデザイナー。
交際雑誌で知り合った大学生の過去の恋愛にショックを受け、さらに初恋相手に再会したショックも加わって、記憶を失った22歳の女性。
バツ2で二人の父親の違う子供を持つ女性と結婚し、転職先の会社が倒産したショックで不眠症になった34歳のセールスマン。
また、これらの症例に対する社会学的な考察も、あとがきでお茶を濁しているだけです。
しかし、それぞれの症例は、へたな短編小説よりもおもしろく描かれ、ストーリーテラーとしての作者の腕前は上がっているようです。