1993年から1996年にかけて、新聞や雑誌に連載していたエッセイをまとめて、1997年に表題で出版されました。
当時、作者は43才から47才だったのですが、そのころではまだ四十代の独身者は少数派でした(ただし、作者は、25才ごろに短期間結婚していました)が、今ではありふれた存在になっています。
それに、作者やその友人達はいわゆる知識層で、そのころの中年独身者の多くはそうだったかも知れませんが、今ではあらゆる階層にまで広がっています。
そのため、作品に漂う教養主義は、今の読者には鼻につくことでしょう。
また、作者が好んで取り上げている近代文学者たちは、それぞれ時代を切り取った作品(例えば、永井荷風の「濹東綺譚」など)を残していますが、作者の作品は言ってみれば二次創作のようなもので、九十年代の空気さえ描けていません。