昭和47年に月刊エコノミストに連載され、翌年に単行本化された、作者が25才の時のデビュー作です。
当時、各界で若手として注目されて人物を12人選んで、それを一ヶ月かけて取材し原稿に書き、それを一年間続けるという、駆け出しルポライター(当時の言葉)としては、破格の扱いでした。
しかも、ベテランの編集者がそのバックについていて、内容も文章も厳しくチェックしてくれるという、まるで有給の養成学校のようなもので、いかに作者が期待されていたかがわかります。
ご存知のように、作者は端正な風貌の持ち主で、若い頃は男女を問わずモテていたようなので、そのこともこの無名の書き手にはプラスに働いたかも知れません。
しかし、そうしたこともルポライターとしての実力のうちで、取材対象と打ち解けられることなどで、より深くその人物を描けたのでしょう。
対象に取り上げられた人物は、以下の通りです。
巨象の復活 尾崎将司
廃墟の錬金術師 唐十郎
疾駆する野牛 河野洋平
過ぎ去った日々でなく 秋田明大
華麗なる独歩行 安達瞳子
面白がる精神 畑正憲(その記事を参照してください)
神童 天才 凡人 中原誠
錨のない船 黒田征太郎
望郷 純情 奮闘 山田洋次
人魚は死んだ 堀江謙一
十二人目の助六 市川海老蔵
沈黙と焔の祭司 小澤征爾
十二人の中には、さらに一段と飛躍した人物(小沢征爾、尾崎将司、中原誠、山田洋次など)もいれば、表舞台からは姿を消した人(秋田明大など)も、亡くなった方(安達瞳子など)もいます。
しかし、取材時からの50年近い歳月は、作者も含めて、誰にも平等に経過したのです。