かつて裕福な育ちだった女性が、現在の貧困状態の生活の中でも、日々の幸せを求めていく姿を描いています。
ただ働くだけで何の楽しみも持たないパン職人の夫、かつて主人公の女性と不倫関係にあったパン工場の主人、彼らの不倫に少しも気づかずに主人公に親切にしてくれるその妻、かわいい二人の子どもといった魅力的な登場人物がたくさん出てきますが、なんといっても一番魅力的なのは主人公の女性でしょう。
過去の不倫が夫にばれてもあっけらかんとしていて、一見人生に流されているようで、常に自分がその時に求めているものに執着していく姿は、一種のたくましさを感じさせられます。
この短編は1962年に発表されたものですが、このころまでの作者は、「プールサイド小景」(芥川賞受賞作)や「静物」などの彼の代表作で、日常の中に潜む不安を描いた傑作を次々に発表していました。
この路線はやがて行き詰まり(彼自身の生活とだんだんかい離していったものと思われます)、しだいに家庭の中の小さな幸福を描いた作品(「ザボンの花」、「夕べの雲」など)へ転換していきます。
ただ働くだけで何の楽しみも持たないパン職人の夫、かつて主人公の女性と不倫関係にあったパン工場の主人、彼らの不倫に少しも気づかずに主人公に親切にしてくれるその妻、かわいい二人の子どもといった魅力的な登場人物がたくさん出てきますが、なんといっても一番魅力的なのは主人公の女性でしょう。
過去の不倫が夫にばれてもあっけらかんとしていて、一見人生に流されているようで、常に自分がその時に求めているものに執着していく姿は、一種のたくましさを感じさせられます。
この短編は1962年に発表されたものですが、このころまでの作者は、「プールサイド小景」(芥川賞受賞作)や「静物」などの彼の代表作で、日常の中に潜む不安を描いた傑作を次々に発表していました。
この路線はやがて行き詰まり(彼自身の生活とだんだんかい離していったものと思われます)、しだいに家庭の中の小さな幸福を描いた作品(「ザボンの花」、「夕べの雲」など)へ転換していきます。
庄野潤三全集〈第4巻〉 (1973年) | |
クリエーター情報なし | |
講談社 |