日本の児童文学研究の歩みについて、江戸期、明治期、大正期に分けて、豊富な引用とともに詳細に紹介しています。
しかし、昭和期においては、戦前についてはほとんど記述がなく、戦後に関しては門外漢の私でも知っているような有名な児童文学史の本(例えば、鳥越信「日本児童文学史研究」や藤田圭雄「日本童謡史」など)の名前を「優れた研究書」として列挙してあるだけです。
おそらく、著者の研究分野や興味範囲によるものでしょうが、児童文学研究者向けの手引き書である本書にはふさわしくない、バランスの悪い論文になっています。
また、文章も平易でなく、古い文献の引用を解説抜きに多用しているので、特に初学者には非常に読みづらい物になっています。