1985年に書かれた、小学六年生(はっきりとは書かれていませんが、時間関係からするとそのくらい年齢だと思われます)の男の子を主人公にした作品です。
少年は、秘密の隠れ家にしていた古い空家に放火して、愛知県の救護院に収容されていました。
ある日、そこを脱走した少年は、四年前までの約一年間、離婚した母と二人で暮らしていた長野県茅野市へ向かいます。
そこには、「あんちゃん」がいるからです。
あんちゃんは、母親の若い彼氏(当時二十二、三歳)で、少年をすごくかわいがってくれていました。
彼は不良あがり(彼も救護院にいたことがあるようです。少年と出会ったころは牛乳配達をしていました)なので、遊び(つり、きのことり、手作りのコマ遊び、そり遊びなど)だけでなく、悪いこと(すり、万引き、輪ゴムで蝶を殺す方法、カエルのはりつけなど)も教えてくれました。
そのころ(小学校に上がったばかり)の少年にとっては、あんちゃんは世界のすべてでした。
しかし、あんちゃんに新しい若い恋人ができ、母親は少年を連れて茅野を去って、愛知県の春日井市へ引っ越します。
そのあんちゃんに、四年ぶりに会いに行くのです。
電車とバスを乗り継いで、やっとあんちゃんが働いていた商店にたどり着きます。
しかし、あんちゃんは三年前に交通事故で死んでいました。
少年は、あんちゃんとの秘密の場所で、スリーピングバッグの中で一夜を明かします。
その晩見た夢には、あんちゃんとの想い出だけでなく、今の絶望的な暮らし(母親のネグレクト、母親の今の彼氏の中年男、万引き、放火、救護院など)も出てきます。
しかし、夢の中で少年は、あんちゃんに「もうぬすまない」「もうころさない」と誓うのでした。
そして、夜中に目を覚ました時に、明日救護院へ帰ることを決意して、今度はかすかにほほえみながら夢ひとつない安らかな眠りにつきます。
いい意味でも、悪い意味でも非常に文学的な作品です。
小説的な手法で、子どもの内面を描こうとした当時の作品の傾向を示す典型的な作品です。
前述したあらすじは、時系列に整理したものですが、実際の作品は、実時間と回想と夢が入り混じっていて、時間もかなり前後しますので、子ども読者には読みにくかったかもしれません。
ストーリーらしいストーリーがないので、今だったらとても児童書にはならなかったでしょう。
しかし、この作品の魅力はストーリーとは違ったところにあります。
圧倒的に美しい情景描写、繊細な少年の心の動きを浮かび上がらせる内面描写、あんちゃんの魅力(悪いところまで含めて少年の憧れの存在なのです)、そういったものをないまぜにしたがら、八方ふさがりの少年が変わる瞬間が鮮やかにとらえられています。
そう意味では、一見すごく変種に見えますが、「現代児童文学」の一つの典型である成長物語なのです。
あんちゃんを訪ねての少年の旅は、彼にとってはイニシエーション(通過儀礼)(あんちゃんと過ごした夢のような少年時代と決別する)だったのです。
少年は、秘密の隠れ家にしていた古い空家に放火して、愛知県の救護院に収容されていました。
ある日、そこを脱走した少年は、四年前までの約一年間、離婚した母と二人で暮らしていた長野県茅野市へ向かいます。
そこには、「あんちゃん」がいるからです。
あんちゃんは、母親の若い彼氏(当時二十二、三歳)で、少年をすごくかわいがってくれていました。
彼は不良あがり(彼も救護院にいたことがあるようです。少年と出会ったころは牛乳配達をしていました)なので、遊び(つり、きのことり、手作りのコマ遊び、そり遊びなど)だけでなく、悪いこと(すり、万引き、輪ゴムで蝶を殺す方法、カエルのはりつけなど)も教えてくれました。
そのころ(小学校に上がったばかり)の少年にとっては、あんちゃんは世界のすべてでした。
しかし、あんちゃんに新しい若い恋人ができ、母親は少年を連れて茅野を去って、愛知県の春日井市へ引っ越します。
そのあんちゃんに、四年ぶりに会いに行くのです。
電車とバスを乗り継いで、やっとあんちゃんが働いていた商店にたどり着きます。
しかし、あんちゃんは三年前に交通事故で死んでいました。
少年は、あんちゃんとの秘密の場所で、スリーピングバッグの中で一夜を明かします。
その晩見た夢には、あんちゃんとの想い出だけでなく、今の絶望的な暮らし(母親のネグレクト、母親の今の彼氏の中年男、万引き、放火、救護院など)も出てきます。
しかし、夢の中で少年は、あんちゃんに「もうぬすまない」「もうころさない」と誓うのでした。
そして、夜中に目を覚ました時に、明日救護院へ帰ることを決意して、今度はかすかにほほえみながら夢ひとつない安らかな眠りにつきます。
いい意味でも、悪い意味でも非常に文学的な作品です。
小説的な手法で、子どもの内面を描こうとした当時の作品の傾向を示す典型的な作品です。
前述したあらすじは、時系列に整理したものですが、実際の作品は、実時間と回想と夢が入り混じっていて、時間もかなり前後しますので、子ども読者には読みにくかったかもしれません。
ストーリーらしいストーリーがないので、今だったらとても児童書にはならなかったでしょう。
しかし、この作品の魅力はストーリーとは違ったところにあります。
圧倒的に美しい情景描写、繊細な少年の心の動きを浮かび上がらせる内面描写、あんちゃんの魅力(悪いところまで含めて少年の憧れの存在なのです)、そういったものをないまぜにしたがら、八方ふさがりの少年が変わる瞬間が鮮やかにとらえられています。
そう意味では、一見すごく変種に見えますが、「現代児童文学」の一つの典型である成長物語なのです。
あんちゃんを訪ねての少年の旅は、彼にとってはイニシエーション(通過儀礼)(あんちゃんと過ごした夢のような少年時代と決別する)だったのです。
あんちゃん (こども童話館 (12)) | |
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