私が20代の頃、練習をつくるときの一番大切な原則として伝えられてきた教えです。
自信は、力がついていることを実感できた時に生まれるものです。
その実感を得るためには、自分の限界に挑戦し、それを乗り越えることが必要です。
つらいことから目を背けることなく、自分自身と向き合うこと。
前提としてコーチのつくる練習メニューが選手の自信につながるものでなければなりません。
よく言われたことは苦しさをごまかす練習であってはならないということです。
また、練習メニューがコーチの自己満足にならないようにしなさいとも言われました。
その結果、練習メニューは大会を想定した実践的なものとなり、精神的にも厳しいものとなります。
その厳しさを乗り越えることができれば、スタート台に立った時に不安に陥ることなく、自信を持ってレースの望むことができるのです。
厳しい練習を課したあとのミーティングでよく選手に尋ねることは、今日の練習で自信をつけることができたか、ということです。
練習の取り組みとしてよくみられることですが、最後の一本だけ速いタイムで泳いで満足している選手がいますが、それは自己満足にすぎません。
本当に自信がつく練習というのは、最後の一本だけ速いとか、平均的な頑張りをしたとかいうものではなく、最初から積極的に攻め続け、多少タイムが落ちたとしても粘り続けることができたか、ということで、誰がみても充実した練習をしていることがわかります。
レースでは前半から積極的に攻めていかに粘れるか、ということが大切になりますので、その意識を練習から持つ必要があります。
練習の取り組みが消極的な選手は、やはりレースでも消極的になりがちです。
限界というのは通常、精神的な限界であって肉体的な限界はまだまだ先にあります。
レースのつらい場面では、練習で一番苦しかった時のことを思い出せ、とも言われました。選手は思い出したくもないと言っていましたが…。
それは練習でレース以上の苦しいことを乗り越えているからこそ言える言葉です。
私が自信をつける練習としてよく行うのは、大会種目の2倍の距離をHARDするというものです。
例えば、100m・200mの選手であれば、400mのHARDを行います。
これは単純に大会で泳ぐ距離の2倍の距離を頑張ることができれば、自信も体力もつけることができるからです。
大変苦しいものですが、何度も繰り返して行っていると慣れてくるものです。
自信がつく練習をするというこの教えは、水泳のみならず色々な場面で応用できるのではないでしょうか。
自分自身と向き合うことはつらいことですが、成果を出すためにはそのつらさから逃げていてはならないということです。
竹村知洋