この教えは、組織の中で立場を上とする人にあてはまるものです。
最初は誰もが一番下の立場で入るわけですが、いずれ上の立場になります。
その時に上の立場から下の立場の人に仕事をどのように任せるか、ということです。
「人に任せる」ということは、基本的に一度仕事をお願いしたら最後まで見届けるという姿勢でいる、ということです。
基本的な方針だけしっかりと伝え、はじまってしまえばあとは原則として最後までその人に任せるのです。
たいてい上の立場の人は色々と思うことがあり、口を挟みたくなるものです。
しかし、その人に任せた以上、途中であれこれと注文をつけることはその人のためにもならないことが多いように思います。
あまりにもうまくいっていないようであればアドバイスする必要があるかもしれませんが、相談があれば聞くというぐらいの方がいいです。
これは、どちらかというと上の立場の人が忍耐強く、我慢をしなければならないところであると思います。
しかしこの方法は上の立場の人にも学ぶことが多いものです。
上の立場の人は自分のやり方というものがあって、一度その方法が固まっているとなかなか異なる方法を受け入れがたいものです。
成功した時の方法を人にも押し付けがちになります。
しかし、若い感性から生まれる自分とは異なるやり方から学ぶことも多いことを忘れてはならないと思います。
「人に任せる」ということは、上の立場の人にとっては度胸がいるものです。
自分でやってしまった方がよほど気が楽なものであると思います。
もちろん失敗はつきものですが、そこからさらに学びを得るわけです。
そして、上の立場の人は下の立場の人が失敗した場合に「責任をとる」覚悟が必要であることはいうまでもありません。
実際、私は大学卒業後すぐにすべての練習メニューを担当させていただきました。
すべてを任せていただいたという責任感とともに多くの学びがあったことは、自分が上の立場に立った時のチーム作りに大いに役立っています。
これはチームの上下関係にもいえることですが、例えば3年生が2年生に指導し、2年生が1年生を指導するということも必要です。
3年生が直接1年生を指導するだけでなく、2年生に対して1年生の指導の仕方を教える必要があります。
1年生はそれをみて上下関係を学ぶことができます。
このような経験は社会人として働き始めたときに大いに役に立つことでしょう。
自分がいなければだめだというような組織作りはいずれ衰退します。
後継者の育成ということも組織の長きにわたる繁栄のためには不可欠です。
幸いにも豊山水泳部には、将来は指導者になりたいという夢を持つ生徒が多いです。
強い水泳部を保ったまま、次世代へ引き継いでいくことはこれからも永遠の課題です。
竹村知洋