選手の育成にあたって考慮していることは、将来を見すえた指導をすることです。
高校時代で競泳生活を終わらせるわけではなく、その後の成長を考えて練習を計画するということです。
特に男子選手の場合、競泳選手として成熟するのは大学から社会人にかけてです。
高校時代に完成させてしまうような練習計画を立ててしまうと、大学へ進学してからの伸びが期待できなくなります。
そのため、高校時代には基本的な事柄をしっかりと身につけることを第一優先として練習を計画しています。
私たちの直接的な指導は高校時代で一区切りしますが、競泳を続けている以上、その後も大会などで会うとその時の状況をよく確認します。
大学での成長はその時の練習が最も影響していることは当然ですが、その土台には高校時代までの基礎があることは事実です。
大学や社会人として競泳を続け、国際大会や日本選手権、インターカレッジで活躍することが競泳選手としての花であると考えています。
逆に高校時代までは今一つの成績であっても、大学で伸びれば競泳選手として成功したといえるでしょう。
高校時代で成長が止まってしまうような無理のある練習計画は戒めなくてはなりません。
指導者としては目先の結果を求めるあまり、選手に厳しすぎる練習を課してしまうということがよくあるものです。
大会で結果を出すために厳しい練習を課すことは必要なことですが、将来の成長を奪ってしまうような無理な計画はあってはならないことだと考えています。
高校時代に良い成績を残していても、大学でさらなる伸びがないのは高校時代の指導の問題であるともいえます。
まずは正しいフォームと基本的な持久力を身につけることです。
そして何よりも競泳選手としての本当の勝負は、大学以降にあることを認識することが大切です。
そのことは近年のオリンピック代表選手の平均年齢を考えれば理解できます。
最近の課題ともいえますが、どこに行っても誰の指導を受けても、極端な場合、指導者が誰もいなくても自分で成長できる選手を育成したいと考えています。
そのコーチがいなければ何もできない選手は、本当に強い選手とはいえません。
そのためにはまず選手自身が、自分をよく知ることが必要になります。
近年、練習やフォーム、レース展開など自分のことをよくわかっていない選手が多いようです。
何でもコーチの言いなりになり、自分で思考する力がなければ大学では伸びません。
自ら考え、自らを伸ばすことができる選手の育成が当面の課題です。
大学時代に花開く選手の育成を心掛けていきます。
竹村知洋