以前から思っていたのですが、自治体がもつ公営住宅は効率的なのかという疑問です。昔の時代とは変わってきましたから、住宅供給を公的に行わなければならないほど、住居に困る事はなくなってきているのではないでしょうか。もちろん、過疎地とか地域によっては特別な事情があるとは思うのですが、自治体が大きな不動産を取得して建設・維持をすることは無駄が多くなるし、リスクも当然発生します。これからの時代には、そのような手法はそぐわなくなったと感じます。
民間のマンション等がある程度整備されていたり、充足しているならばそれを活用した方がよいと思います(あまり民間の賃貸マンションとかが無いような地域では、別な考えが必要かもしれません)。
まず自治体に民間業者が所有するマンション等を申請してもらい、基準に適合する物件かどうか判定します(条例等で基準の作成が必要ですね)。自治体側が適合と認めたら、公認住宅(変な名前ですが、仮にこう呼ぶことにします)として登録しておきます。入居希望者は、希望の住所地から探すことができ、選択の自由度が増えます。例えば家賃が7万円としたら、公費で1万円を助成するという具合です。他は通常の賃貸契約と同じようなもので、管理費とか駐車場費とかは入居者が払います。所得水準や家族構成などに応じて助成額を変えることにします(簡単な計算式から算出できるような仕組みでよいでしょう。ほぼ所得比例と考えます)。低所得の人には多く助成するとかですね。この手法は生活保護の人にも使えます。生活保護については別な記事で検討します。
所得が増加して助成が適切でなくなれば、助成額をゼロにするだけで済みます。敢えて転居してもらう必要がありませんね。その分を他の人の助成に回すことができます(新たな入居希望者募集ということですね)。富の社会的再配分には役立つでしょう。今よりも公平性が保たれると思います。現状は抽選に外れると延々と待たねばならなかったり、一度入居してしまうと入居者の所得が上がっても出ていってもらうのは困難ですね。他に低所得で入れない人達がたくさんいるのに、です。
転居については、単にそこの助成を打ち切れば済むのです。空室になることで自治体の不利益はありません。現状回復は入居者と民間業者の間でやって頂きます。
自治体は登録先を確保するようにしておけばよく、どうしてもそれが困難な場合には、公認住宅建設に税制上の優遇措置をつけるとか、建設費用の一部補助をすれば促進効果は期待できるかもしれません。また、民間業者は公認住宅の基準に合格するような住居を建設しようと努力しますから、よい物件が増える効果があると思います。民間業者は、よい物件を多く登録でき希望者が多ければ、不動産業者を通すことなく優先的に入居者が来てくれるのですから、願ったりかなったりでしょう。
それに、物件のバリエーションも豊富になるでしょう。立地とか規模とか、あらゆる面で希望者の選択余地が増えます。空室であっても、自治体にはリスクが発生しません。民間業者は公認住宅としても貸せるし、給与水準の高い人には普通の物件としても貸せるのです。埋まれば登録からはずれるだけで済みます。また公認住宅の適合物件ならば、借り手も安心して借り易くなるでしょう。
自治体は自ら不動産を取得する必要もなく、バカ高い建設費をふっかけられることもなく、談合も発生しないので、非常に有利です。建替え問題もないし(民間業者は競争のために自然と建替えが進んでいますね、ボロければ借り手がつかないので)、維持管理はその民間業者が通常通り行ってくれます。自治体側は単に家賃助成費用だけで済むのですから、楽です。滞納や不払いも生じません。入居者は民間業者との契約になりますから、そんなことは当然出来ませんね。
自治体の公営住宅が営利事業ならばプラスに作用しますが、普通は違うでしょう。続ければ続けるほど負担が多くなるだけだと思います。もしも、公営住宅がなくなれば、不動産業界は活性化へと向かうと思うのですが。自治体所有の広大な土地とたくさんの建物は、売却したり転用したりして、新たな価値を生み出すものへと転換してもらえるかもしれません。結構いい場所に建っている公営住宅はたくさんあると思います。民間に売れたら、固定資産税も増えますね。
ただ、一気に整理はできないでしょうから、古い物件から順次入居者の転居を促進するような政策(例えば土地の転売先を探して、それが見つかれば、公営住宅住民の転居費用を出してあげて他の公認住宅へ移ってもらうとか)を考えてみる必要があるでしょう。
条件のよい土地は、有効活用してもらうように考えて、転売が無理でも借地料を取るとかでもいいですし。うまく考えたら自治体の利益に繋がる可能性があります。複合施設を民間と共同で建設して、営利事業を積極的に行う(合法ならばですが)とか、何か考えた方がいいです。
いずれ建物は必ず老朽化するので、その時に建替え問題が発生するのは目に見えてますから、安易に公金を投入するのではなく、有効な不動産活用を考えるべきですね。旧国鉄用地がいい例です。随分と用地の有効利用が進みましたし、複合施設等の効果がかなりありましたから。
高齢者の増加は、独居老人の増加も考慮する必要がありますが、現在民間業者の高級な高齢者向け物件が多くなっていますが、賃貸物件はそれほど多くはありません。資産のあまり多くない高齢者でも入居できるような、公認住宅を増やす方向で行けば、いずれ公営住宅はなくせると思うのです。
全ての物件が適合住宅として申請してきたらどうするか、という問題があるかもしれませんね。その場合には、別な抽選とかが必要になるかもしれません。例えば「築5年以内」という選考基準で募集し、当選2百戸を登録し、予備登録として2百戸とする、のようなものでしょうか。
公営住宅の空き待ちは減らせるようになるかもしれません。入居者の所得水準によって決まるので、所得の低い人から助成を割り当てていきますから、不公平感は少なくなると思いますし、自治体は予定財源が尽きそうなら新たな入居者募集を停止すれば大幅な赤字はなくせるでしょう。
如何でしょうか?